- 著者
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梅川 由紀
Umekawa Yuki
ウメカワ ユキ
- 出版者
- 大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
- 雑誌
- 年報人間科学 (ISSN:02865149)
- 巻号頁・発行日
- no.42, pp.31-45, 2021-03-31
社会学 : 論文本稿の目的は、高度経済成長期に掃除機と電気冷蔵庫が普及することによって、ごみと人間の関係がどのように変化したのかを明らかにすることである。婦人雑誌『主婦の友』と東京都清掃局内の新聞『清掃きょくほう』を中心に分析を行った。分析の結果、三つの傾向を指摘した。第一に、高度経済成長期に生じた住宅構造の変化は、ほうきを用いた「掃き出す」掃除から、掃除機を用いた「吸い取る」掃除へと変化を余儀なくした。吸い取る掃除は掃除の際に空間を舞うチリやホコリの量を減少したが、その結果、人々は逆に空間を舞うチリやホコリを強く意識するようになったことを明らかにした。第二に、電気冷蔵庫の登場は食品を「冷やす」だけではなく「保管」することを可能とした。すると人々は、ついよけいに買いすぎ・作りすぎ・しまい込み・結局だめにするという、「余剰品」を生みだす様子を明らかにした。第三に、掃除機や電気冷蔵庫が「粗大ごみ」として出されるようになると、粗大ごみの異質性が際立つようになった。ここから、粗大ごみ登場以前のごみが「燃やすことができ、埋め立てることができ、土壌化できる、小さな存在」であると理解される様子を示した。以上の分析結果から、人々は空間を舞うチリやホコリ、余剰品、粗大ごみというごみを「発見」し、ごみ概念自体を拡大させている様子を明らかにした。