- 著者
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大久保 将貴
オオクボ ショウキ
Okubo Shoki
- 出版者
- 大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
- 雑誌
- 年報人間科学 (ISSN:02865149)
- 巻号頁・発行日
- no.35, pp.19-37, 2014
本稿の目的は、制度研究における最新の動向をサーベイすることである。社会科学において、制度は古くからの研究対象であったが、近年、社会現象の理解のために、「制度が重要な意味をもつ (Institutions matter)」ことが一層認識されている。制度研究の歴史をサーベイした論文は存在するものの、とりわけ2000年以降の研究動向を包括的に紹介したものは極めて少ない。そこで本稿では、最新の制度研究の動向を提示することで、制度研究のフロンティアにおける成果と課題を明らかにする。具体的には第1に、従来は対立的だとみなされてきた社会科学における各制度論が、今日では補完的に用いられていることを指摘し、それはどのような仕方であるのかを提示する。第2に、今日の制度研究は内生的な制度変化を説明するという問題に直面していることを指摘する。第3に、上記2点の課題に対し具体的に採用されている分析手法として、ゲーム理論と実験室実験、反実仮想による因果推論、操作変数法の3つを取り上げ、最新の研究事例とともにその方法を紹介する。This paper reviews the latest theories and methods in institutional analysis in the social sciences. First, it makes abundantly clear how the contemporary paradigm of institutional analysis involves an "intellectual trade" that transcends the traditional boundaries of the social sciences. Second, it makes clear that institutional analysis faces a problem of explaining endogenous institutional change. Third, it surveys methods of game theory, causal inference and instrumental variables that are pivotal analytical methods in recent institutional analysis. While these three analytical methods will inevitably remain a formidable challenge, the prospects for game theory, causal inference and instrumental variables in sociology may thus be better than their current reputation would suggest.