著者
クダイミ ムハマド スブヒ 材野 博司
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.533, pp.113-118, 2000-07-30 (Released:2017-02-03)
参考文献数
12

本稿は、京都と、城壁で囲まれたシリアの都市ダマスクスにおける、伝統的な都市空間パターンと、通りのシステムおよび土地利用について論じるものである。両都市の、通りの階層と、都市の土地利用および細街路と住戸の関係に焦点をあて、比較している。ダマスクスでの研究対象地域は、旧市街の中心であるウマイヤド・モスク周辺であり、京都は、中京区の二条城付近である。それぞれの都市は、異なる空間パターンを有しており、ダマスクスでは、通りが非幾何学的で、迷路のように入り組んだ性格を持つ、連続的な都市構造をしており、一方、京都では、幾何学的な格子状街路をもつ、ブロック状の構造をしている。本研究により、まず各々の都市空間の形態的パターンが異なりながらも、両都市で共通する四つの異なる通りのタイプが見られた。次に、土地利用調査によってダマスクスでは商業地域と住居地域の間において街路の階層と路地分布に相違が認められ、一方京都においては街区の大きさとその中の敷地の平均スケールと街路のヒエラルキーによって路地分布に相違が見られる。ダマスクスのマーケットであるスークの主要な単位は店舗であり、京都においては町家(店と住宅の両方の機能を併せ持つ)が勝っているが、このことも街路のヒエラルキーと路地分布に影響を及ぼしている。特にこのことは、両都市においてDタイプは住居のみという共通点を持ちながらBタイプとCタイプの街路において異なる土地利用がなされている面に現れている。