著者
天野 和孝 ゲーラト フェルメイ 成田 健
出版者
日本古生物学会
雑誌
Transactions and proceedings of the Palaeontological Society of Japan. New series = 日本古生物学会報告・紀事. 新篇 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.171, pp.237-248, 1993-09-30
被引用文献数
4

北海道の中新統から産出したアクキガイ科の腹足類, Nucellaの保存の良い標本はN. tokudai (Yokoyama)とN. freycineti saitoi Hatai et Kotakaに同定される。N. tokudaiは中新世前期にカリフォルニアに出現し, 中期中新世初期までに, 西方へ日本およびカムチャッカに分布を広げた。N. freycineti saitoiは中新世中期に日本に出現し, 本亜種から中新世末期または鮮新世前期に現生のN. freycineti (Deshayes)が進化した。初期の地理的分布や初期のすべての種に小歯をともなう厚い外唇が見られることから, Nucella属は北東太平洋の温暖水起源であることが推定される。北米西岸の温暖水に起源をもち, その後東アジアに分散したNucellaの分布の変遷は, 北太平洋の温帯浅海域の他の多くの貝類やフジツボの分布の変遷史に類似している。