著者
羽藤 律 桑野 園子 コスティガン エドワード 難波 精一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.695-703, 1998
参考文献数
14
被引用文献数
3

本研究では非母国語の聴取方法について, 日本人学生と留学生で比較・検討した。日本人学生と留学生に, バブルノイズと日本語の短文をラウドスピーカからSN比を変えて同時に提示し, 聴こえた言葉から順に書き留めるよう求めた。その結果, (1)留学生の場合, 単語了解度は文の性質に依存し, 単語数の多い文, 発話速度の速い文においては, 日本人学生より顕著に低下すること, (2)文に聴き取りの困難な単語が含まれている場合, 日本人学生の場合は主として前後の文脈から単語を推定する試みをするが, 留学生の場合音韻の特徴に基づいて推定する傾向があること, (3)各単語の了解時のSN比を基にして樹形図の作成を試みた結果, 日本人の場合樹形図の構造が単純になるのに対して, 留学生の場合複雑となることが示された。これらの結果は, 留学生及び日本人学生の文章の聴き取り方の違いを反映していると考えられる。