- 著者
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宮川 修一
コンチャン ソムキアット
河野 泰之
- 出版者
- 日本熱帯農業学会
- 雑誌
- 熱帯農業 (ISSN:00215260)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.4, pp.248-256, 1998-12-01
- 被引用文献数
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7
東北タイの稲作地帯において近年盛んになりつつある直播栽培(主に乾田)の収量性を伝統的な移植栽培法と比較するため, 1994年には69筆(直播24,移植45), 1995年には103筆(直播41,移植62)の農家圃場の収量並びに収量構成要素を坪刈りによって比較した.降雨の比較的少なかった1994年には直播栽培の平均収量は移植栽培より劣った.この場合, 灌漑田では収量の方法間差異は認められず, 天水田A型(最も干ばつ被害を受けやすい)並びにB型(比較的干ばつや洪水の被害が小さい)の両者を合わせた際の平均収量では明らかに直播栽培の収量が劣っていた.これは移植栽培よりも少ない一穂穎花数並びに面積当たり穎花数に起因していた.降雨の比較的多かった1995年には, 全体でも, また水条件別に見ても両方法間の収量差はなかった.直播栽培の収量は穎花数以外にもわら重や稈長との相関が強く, 補助的灌漑, 穂肥を中心とした肥料の投入, 早期播種, 直播向き適品種の選抜普及が収量向上に貢献すると考えられた.以上のことから多雨年や灌漑田では現在の直播栽培は省力的栽培方法として移植栽培に代替可能であると評価しうるものの, 天水田ではなお技術改良を要するといえる.