著者
澤島 智明 ゴ・ティ チュ・フェン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 居住者が日常生活において、夏期はより涼しい場所、冬期はより暖かい場所に選択的に滞在すれば、暖冷房エネルギーの使用を削減できる可能性がある。本報では夏期の住宅居住者の滞在場所と温熱環境の関係について事例調査をもとに検討する。<br><b>方法</b> 佐賀県と長崎県に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温実測を行った。調査住戸選定の際には居住者数に対して室数が多く、居住者が比較的自由に滞在場所(室)を選択できることを条件とした。インタビューは事前に準備した平面図を見ながら、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③ 室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2013年8月中旬から9月中旬に10分間隔で測定を行った。<br><b>結果</b> 調査住戸のうち2件はエアコンを毎日、長時間使用しており、他の2件は通風中心の生活をしていた。エアコン使用の多い2件は部屋数に余裕があるにも関わらず、従来の室用途を守って生活しており、熱的条件の悪い部屋での滞在がエアコン使用を助長している可能性がある。一方、通風中心の住戸では居住者が日射を受けやすい場所や熱気のこもりやすい場所を避け、通風の良い場所を選択して滞在している様子が見られた。ただし、こちらも部屋の使用状況や生活行動の内容等を夏向けに大きく変化させているわけではなく、「同室内で着座場所が変わる」「短時間の滞在が時々見られる」といった行動の微細な変化であった。