著者
ジャブカラン オトゴンクウ 高須 晃 カビール ファッツル バトウルツ ダッシュ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.89-96, 2014-03-25

モンゴル南西部のLake帯中のAlag Khadny変成コンプレックスは中央アジア造山帯(Central Asia Orogenic Belt: CAOB)中央部に位置する.この変成コンプレックスは主に正片麻岩からなり,その他に少量の雲母片岩を伴う.この正片麻岩はMaykhan Tsakhir累層の大理石層を挟在し,大理石層はさらにざくろ石-クロリトイド片岩のレンズ状岩体を包有している.また,正片麻岩中にはエクロジャイトのレンズ状岩体が存在する.エクロジャイトのピーク変成条件はこれまでに温度590-610℃,圧力20-22.5kbarが見積もられている.一方,ざくろ石-クロリトイド片岩の変成温度条件は560-590℃でエクロジャイトよりわずかに低温であるが,変成圧力条件は10-11kbarであり,エクロジャイトより著しく低圧である.本研究においてエクロジャイト岩体中に主に角閃石からなる小脈(角閃石-斜長石-フェンジャイト脈と角閃石-石英脈)が発達するのを見いだした.小脈は構成する鉱物種から2種に分けられる.角閃石-斜長石-フェンジャイト脈は角閃石(バロワ閃石,マグネシオホルンブレンド,エデン閃石),斜長石,フェンジャイトと少量のチタン石と石英よりなる.角閃石-石英脈は石英と角閃石(トレモラ閃石,マグネシオホルンブレンド)からなる.本研究において,エクロジャイト中の角閃石-斜長石-フェンジャイト脈から603±15MaのK-Ar角閃石年代と612±15Maのフェンジャイト年代を得た,また,角閃石-石英脈から602±15Maの角閃石年代を得た,これらはいずれもおよそ600Maの調和年代を示し,エクロジャイト岩体の上昇の年代として解釈できる.しかし,この年代は,これまでにエクロジャイトとざくろ石-クロリトイド片岩から報告されていたおよそ540Maの^<40>Ar/^<39>Arフェンジャイト年代よりも明らかに古い.本研究により報告する600Maの年代を示すエクロジャイト存在は,Alag Khadny変成コンプレックスのエクロジャイトには,異なる2種の上昇プロセスがあることを意味する.