著者
野村 律夫 高須 晃 入月 俊明 林 広樹 辻本 彰
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

最近,出雲の巨石が注目されている。島根大学のくにびきジオパーク・プロジェクトが主催した10月下旬の探訪会には,30名を超す参加者が出雲市坂浦町にある立石(たていわ)神社を訪れた。そこには今,社殿はないが,12mを超す巨石がご神体として鎮座している。アニミズムの象徴といえるこの巨石は,単なる石ではなく,古来より磐座(いわくら)や石神とよばれる神そのもとして人々のなかに息づいている。ここでは島根半島にみるジオサイトとしての巨石の成因と我々のジオパーク活動の方針について報告する。 東西約70kmにも及ぶ島根半島を西の日御碕から東の美保関までみると,山塊が分かれて少しずつ雁行状に日本海側へずれていることに気がつく。この構造は,今から2000~1500万年前に西南日本弧が大陸から分離し,日本海が形成された地殻変動と密接に関係している。半島地域の変動は,1100万年前まで続いているので,日本海が広がった頃を1700~1500万年前とすると,約400~600万年かかって島根半島の構造的な原形が造られたことになる。この時の地殻は,北西-南東方向の圧縮応力場にあり,著しい変形と変異を受けたため,島根半島は全国でも有名な宍道褶曲帯として知られる。大社の山塊の南麓には,落差が1000mの巨大な大社断層があり,北側の平田付近には弓のように窪んだ向斜構造が形成され,その構造は宍道湖へとつながっている。鹿島町の古浦海岸から美保関にかけて存在する宍道断層も大社断層と同じ性格をもち,半島の形成に参加した。島根半島には,これら二つの断層と平行した多数の断層が形成されているのが特徴で,巨石形成の最も大きな要因の一つになっている。立石神社の巨石も宍道断層の西方延長上につくられていることが,巨石の裏面や大小の割れ目に発達する擦痕からも理解できる。このようなことから島根半島に見られる多くの巨石は,島根半島の形成に伴ってできた地殻変動の結果である。 古代出雲の人々は,1300年も前に島根半島の形成に基づいた地形を反映させて,国引き神話を語っていた。風土記時代から詳細な地形分析がなされていたことは驚くべきことである。
著者
カビール ファッツル 高須 晃
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.183-192, 2010
参考文献数
34

四国中央部別子地域に分布するエクロジャイト質塩基性片岩には2回の独立した変成作用イベントが記録されている.すなわち,1回目のエクロジャイト変成作用イベントと2回目の藍閃石-バロワ閃石変成作用イベントである.エクロジャイト変成作用イベントのピーク変成作用は,エクロジャイト相の片理を形成する鉱物組み合わせ(ざくろ石,オンファス輝石,バロワ閃石,フェンジャイト,ルチル,石英)によって示される.この変成条件は,これまでの研究から610-640℃,12-14kbarと推定されている.ピーク変成作用の後,減圧を伴う降温期変成作用により緑れん石角閃岩相の条件(400-535℃,6-7kbar)となった.この変成条件は,エクロジャイト変成作用イベントのピーク変成作用を示す鉱物を置換する鉱物組み合わせにより示される.藍閃石-バロワ閃石変成作用イベントは,エクロジャイト相の鉱物組み合わせからなる片理を切って成長する顕著な累帯構造を示す角閃石の化学組成の変化から,緑れん石青色片岩相から緑れん石角閃岩相に至る昇温期の変成経路が復元できる.この変成作用は,エクロジャイト岩体周囲の三波川結晶片岩の昇温期変成作用と類似する.これらのことより,瀬場エクロジャイト質塩基性片岩は,エクロジャイト相のピーク変成作用の後,少なくとも藍閃石の安定な低温の変成条件の下で三波川結晶片岩と接合し,ともに昇温期変成作用を受けて緑れん石角閃岩相に達し,その後,現在の地表レベルにまで上昇したと考えられる.
著者
青矢 睦月 平島 崇男 高須 晃 榎並 正樹 Simon Wallis 榊原 正幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.XXI-XXII, 2001 (Released:2010-11-26)
参考文献数
2
被引用文献数
1 2

2001年の9月1日から7日に渡り, 愛媛県の新居浜市, 土居町, 別子山村を舞台に開催された国際エクロジャイト会議(IEC)の記念碑が別子山村の瀬場に建立された(Fig.1).材料となった重量10トンにも及ぶエクロジャイトの転石(Fig.2)は1998年, 京都大学の岩石学グループが別子巡検を行った際に瀬場谷川下流域で見つけたものである. 極めて保存の良い美しいエクロジャイトであったため(Figs.3-5), 昨年11月, IEC記念碑の建立を計画していた別子山の村長らにその転石を紹介したところ, 村側も大変気に入り, 即, 採用の運びとなった.
著者
櫻井 剛 高須 晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.XIII-XIV, 2001 (Released:2010-11-26)
参考文献数
2
被引用文献数
1

三波川帯は高圧型変成帯であるが藍晶石の産出は比較的まれであり, 四国中央部の高変成度部に分布するいくつかのテクトニック・ブロックから報告されているのみである(第1図). 今回, 四国中央部三波川変成帯の“いちのまつこ谷”上流の五良津東部岩体中から長径約16cmに達する藍晶石の巨晶が発見された(第2~5図). 五良津東部岩体は, 原岩が層状はんれい岩であり, グラニュライト相→高温のエクロジャイト相→藍閃石片岩相→低温のエクロジャイト相という変成履歴を経た後, 現位置にテクトニック・ブロックとしてもたらされ, 緑れん石角閃岩相の変成作用(三波川変成作用)を受けたと考えられている(Takasu, 1989). 藍晶石の巨晶は, 緑れん石角閃岩相の鉱物組合せよりなる岩石の片理面と斜交するすべり面上に形成されている. このことから, 藍晶石は五良津東部岩体が緑れん石角閃岩相の変成作用が進行していた三波川変成帯の現位置ヘテクトニック・ブロックとしてもたらされる前後の時期に形成されたといえる.
著者
ジャブカラン オトゴンクウ 高須 晃 カビール ファッツル バトウルツ ダッシュ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.89-96, 2014-03-25

モンゴル南西部のLake帯中のAlag Khadny変成コンプレックスは中央アジア造山帯(Central Asia Orogenic Belt: CAOB)中央部に位置する.この変成コンプレックスは主に正片麻岩からなり,その他に少量の雲母片岩を伴う.この正片麻岩はMaykhan Tsakhir累層の大理石層を挟在し,大理石層はさらにざくろ石-クロリトイド片岩のレンズ状岩体を包有している.また,正片麻岩中にはエクロジャイトのレンズ状岩体が存在する.エクロジャイトのピーク変成条件はこれまでに温度590-610℃,圧力20-22.5kbarが見積もられている.一方,ざくろ石-クロリトイド片岩の変成温度条件は560-590℃でエクロジャイトよりわずかに低温であるが,変成圧力条件は10-11kbarであり,エクロジャイトより著しく低圧である.本研究においてエクロジャイト岩体中に主に角閃石からなる小脈(角閃石-斜長石-フェンジャイト脈と角閃石-石英脈)が発達するのを見いだした.小脈は構成する鉱物種から2種に分けられる.角閃石-斜長石-フェンジャイト脈は角閃石(バロワ閃石,マグネシオホルンブレンド,エデン閃石),斜長石,フェンジャイトと少量のチタン石と石英よりなる.角閃石-石英脈は石英と角閃石(トレモラ閃石,マグネシオホルンブレンド)からなる.本研究において,エクロジャイト中の角閃石-斜長石-フェンジャイト脈から603±15MaのK-Ar角閃石年代と612±15Maのフェンジャイト年代を得た,また,角閃石-石英脈から602±15Maの角閃石年代を得た,これらはいずれもおよそ600Maの調和年代を示し,エクロジャイト岩体の上昇の年代として解釈できる.しかし,この年代は,これまでにエクロジャイトとざくろ石-クロリトイド片岩から報告されていたおよそ540Maの^<40>Ar/^<39>Arフェンジャイト年代よりも明らかに古い.本研究により報告する600Maの年代を示すエクロジャイト存在は,Alag Khadny変成コンプレックスのエクロジャイトには,異なる2種の上昇プロセスがあることを意味する.
著者
冨吉 将平 高須 晃
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.540-543, 2009
被引用文献数
1 3

This is the first report of lawsonite in pelitic schists from the Kebara Formation, a tectonometamorphic unit exposed between the Sambagawa metamorphic belt and the Chichibu belt in western Kii Peninsula. Lawsonite and pumpellyite have previously been reported from basic schists in the Kebara Formation, suggesting high-P/T metamorphic conditions. The pelitic schists consist mainly of quartz, albite and chlorite along with minor carbonaceous matter and rare phengite, lawsonite, calcite and titanite. The mineral assemblage of the lawsonite-bearing pelitic schists is chlorite+phengite +lawsonite+albite+quartz. This assemblage is basically the same as that reported for lawsonite-bearing pelitic schists from the chlorite zone in the Sambagawa metamorphic belt, i.e. in the Ise area in eastern Kii Peninsula and in the Besshi nappe complex exposed along the Asemigawa River in central Shikoku. These various lawsonite-bearing pelitic schists probably experienced similar high-P/T metamorphic conditions suggesting that the entire Kebara Formation experienced similar high-P/T metamorphism to that of the chlorite zone in the Sambagawa belt.

1 0 0 0 OA 超高圧変成岩

著者
高須 晃
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.253-260, 2021-07-25 (Released:2021-09-29)
参考文献数
39
著者
KABIR Md. Fazle 高須 晃
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-32, 2021-01-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
54

蓮華変成帯若桜地域に分布する青色片岩には昇温期,ピーク,そして降温期の 3つのステージの変成作用が記録されている.昇温期変成作用は片理を構成する鉱物に包有される鉱物群(緑泥石,緑れん石,フェンジャイト,曹長石,ウィンチ閃石/藍閃石,パラゴナイト,赤鉄鉱,石英)によって定義される.ピーク変成作用は片理を構成する鉱物(藍閃石/マグネシオリーベック閃石,緑れん石,フェンジャイト,緑泥石,チタン石,赤鉄鉱,石英)によって定義される.昇温期とピークの変成温度圧力を Na2O-CaO-K2O-FeO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O-O2 (NCKFMASHO)系の相平衡モデル(シュードセクション・モデリング)により推定した.フェンジャイトと緑泥石の組成等値線から,昇温期変成条件は 300-320℃,0.5GPa,また,ピーク変成条件は 350-390℃,1.05-1.2GPa(ローソン石藍閃石片岩相または緑れん石藍閃石片岩相)であることが明らかにされた.片理を形成する角閃石の縁部(ウィンチ閃石~アクチノ閃石)およびピーク変成鉱物を置換する緑泥石とカリ長石の組み合わせより,360-400℃,0.4-0.5GPaの降温期変成条件が得られた.これらの昇温期,ピーク,降温期変成条件の推定より,若桜の青色片岩は変成ピーク後の岩体上昇初期に定温降圧を伴う時計回りP-T経路を経て形成されたことがわかる.このような定温降圧を伴うP-T経路は,ピーク変成条件は異なるが,周防帯に属する江津地域の青色片岩と類似する.
著者
鳥海 光弘 榎並 正樹 平島 崇男 渡辺 暉夫 Wallis Simon 高須 晃 西山 忠男
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.49, pp.71-88, 1998-03-27

この多人数の著者による論文は, 将来の進歩に向けての展望と戦略に重点を置いて, 岩石学の展開を議論する。鳥海は来るべき21世紀に向けての岩石学の使命とそれを達成するための戦略についての個人的見解を述べる。榎並と平島は高圧・超高圧変成作用の現代的視点を議論する。彼らは, 岩石学の古典的な手法が, 熱モデル・テクトニックモデルと結合された場合には, その温度・圧力履歴を解明するのに大変有用であることを示す。"テクトニクス"の定義の議論から始めて, ウォリスはテクトニクスにおけるこれまでの解釈についていくつかの重要な疑義を呈している。造山帯において単純剪断よりは伸長テクトニクスの証拠が増加していることはその一例である。大陸地殻のテクトニクスは地球科学において現在でもなお盛んな研究領域である。彼は大陸地殻の変形についてのプレートテクトニクスを越える最近のアイデア, 例えば大陸リソスフェアを堅いプレートではなく粘性流体とみなす考えなど, を議論している。渡辺は過去の超大陸, ロディニア, の再構成に関する最近の進歩をレビューし, テクトニックプロセスの解釈における inverse modelingとforward modelingの重要性を議論する。高須は年代測定法の岩石学への応用の最近の進歩, 特にSHRIMPやCHIMEなどの微小領域年代測定法を議論している。彼は間違っているかも知れない年代測定のデータに信を置きすぎる人たちによるその応用の危険な側面を強調している。
著者
高須 晃 亀井 淳志 ロザー バリー 赤坂 正秀 大平 寛人 KABIR M.F. OROZBAEV. R. JAVKHALAN O. 松浦 弘明 貝沼 雅亮
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

三波川帯のエクロジャイトの変成作用は,①高温型変成作用イベント,②2回のエクロジャイト相変成作用イベント,そして③藍閃石片岩相-緑れん石角閃岩相変成作用イベントの4回の変成イベントが認められる.これらの変成作用は120-90 Maの比較的短時間に,海洋プレートの沈み込みの開始(大陸側プレートによる接触変成作用),沈み込みの継続(地温勾配の低下による低温エクロジャイト変成作用)海嶺の接近(地温勾配の上昇による高温エクロジャイト変成作用)そして海嶺の沈み込み(狭義の三波川変成作用と変成帯全体の上昇)によって説明できる.
著者
平島 崇男 中村 大輔 苗村 康輔 河上 哲生 吉田 健太 大沢 信二 高須 晃 小林 記之 臼杵 直 安本 篤 Orozbaev Rustam Svojtka Martin Janák Marian
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究課題では、世界で最も冷たい超高圧変成帯であるキルギス、最も温かい超高圧変成帯であるチェコ、その中間型である中国東部に分布する超高圧変成岩を対象とし、地下60-100kmでの流体活動の実態を明らかにし、超高圧変成岩の上昇駆動に関与する深部流体の役割の解明を目指した。超高圧時の温度が1000Cを超えるチェコの研究では、超高圧変成岩が上昇中に減圧部分溶融し浮力を獲得したことを見出した。超高圧時の温度が800C以下のキルギスや中国では、超高圧時でもローソン石・クロリトイド・Ca-Na角閃石等の含水珪酸塩が安定であり、ローソン石などは減圧時に脱水分解し周囲に水を供給していたことを見出した。
著者
田崎 和江 沢田 順弘 鈴木 徳行 飯泉 滋 高須 晃 石賀 裕明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

ODPの伊豆・小笠原弧の深海底掘削が行なわれた後,昨年度は,船上での成果を“Proceedings of the Ocean Drilling Program(Vol.126)"にまとめ公表した。それに次いで,今年度は,各研究者が専門的な立場で,より詳細な陸上での成果を“Scientific Volume"にまとめた。さらに,日本人の研究成果は,地学雑誌,月刊「海洋」,月刊「地球」に特集号を組み,日本語でも成果を発表した。研究代表者の田崎は,これらの報告書,雑誌にすべて論文を投稿し,当補助金により購入した電子顕微鏡をフルに活用し,3年間で40編の成果を得ることができた。伊豆・小笠原弧の深海底堆積物のうち,特に,火山砂,軽石に注目しXRD,SEM,TEM,FTーIR,マイクロESCA等の機器類により,鉱物組成を検討した。その結果,火山性堆積物の中に,有機物の存在を認めた。スメクタイト,沸石などの熱水変質鉱物の中に,グロ-コナイトやセラドナイトが共存し,その化学組成は,CH,CO,CーCCooHの化学結合を持つことが明らかとなった。今まで,グロ-コナイトの生因の一つに有機物が関与するという説があったが,今回の研究結果で,それが証明された。さらに特筆することは,この火山性堆積物の中に,多量のバクテリア化石を,電子顕微鏡で明らかにしたことである。200℃前後の熱水の循環があり,火山ガラスや造岩鉱物が変質する中にバクテリアが存在し,化石化して保存されていた事実は,深海底にブラックスモ-カ-が存在していたことを示唆している。さらに,グロ-コナイトの生成に,バクテリアが関与していることも暗示している。深海底における物質循環において,有機と無機の境界は不明りょうであり,両者の相互作用により有機炭素からグラファイトが生成される過程も,電子顕微鏡により追跡することができた。これらの研究成果は,国際誌chemical Greologyに投稿した。
著者
釘宮 康郎 高須 晃
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.644-662, 2002-10-15
被引用文献数
9 39

地形が急峻なため十分な地質調査がなされていなかった四国中央部別子地域三波川変成帯中のテクトニック・ブロックである五良津西部岩体およびその周辺地域の詳細な地質調査を行い,地質図を作成した.五良津西部岩体は,構造的下位から上位へ,かんらん岩,単斜輝石角閃石岩,ざくろ石緑れん石角閃岩,ざくろ石白色雲母角閃岩,大理石,緑れん石石英岩および曹長石白色雲母石英片岩の7つの岩相に区分された.これらの岩相の変成岩の原岩は,それぞれ超苦鉄質岩,はんれい岩,塩基性火山砕屑岩,石灰岩,石灰岩の混ざった珪質堆積岩および泥質岩である.周囲の三波川結晶片岩の塩基性片岩が珪質片岩を伴うのに対して,五良津西部岩体は大理石に富む.これらの結果より,五良津西部岩体の原岩は,頂部に礁性石灰岩を伴う海山,海台あるいは島弧のような海洋プレート上の高まりであったと考えられる.