著者
田村 実 スタンレー ジョージ・デ STANLEY George D.Jr. ジェームズダブルシアーズ 渡辺 一徳 ジョージ・ディー・スタン
出版者
熊本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

研究成果報告書日本の三宝山帯とはアルプス等テチス海域に特徴的なメガロドン石灰岩をはじめとする二枚貝及び造礁性サンゴ化石が報告されている。日本はアルプスを含むテチスプロパ-地域とテチスフォーナを含む米国太平洋岸地域の中間的位置を示している。勿論日本及び北米のテチスフォーナを産する地域はExotic terranesではあるが,テチス域の当時の古地理をしらべる上で重要な資料を提供しうるという点でこの度の共同研究となった。1993年に田村はWallowa産地を訪れ,又スタンレーは1993年9月より1994年8月はじめまで日本に滞在し,球磨川流域,熊本県の八代郡水上越,奈良県のアザミ谷,沖縄の今帰仁層の資料に基き,専門は異なるが夫々の資料を提供し,日本とアメリカの三畳紀(特に後期三畳紀)テチス化石群の対比を二枚貝とサンゴに基づいて行い,更にテチス域全体についてにも対比を広めた。現在入手しうる最大の資料(化石)を用いて検討したが資料の不足はなお残る。特に日本のサンゴ化石は保存が悪く又産出は礫からに限られているため充分な研究ができたとはいいがたい。今後更に資料の蓄積に努力してより確度の高い結果をえたい。全体的な結論として二枚貝・サンゴ共,テチス要素を含みテチスフォーナに属するが夫々がEndemicな要素の含有率が高く,又日米双方間についても二枚貝では共通種がなく,サンゴでは北米産60種のうち1種が共通するだけで,分布を容易にする環境ではなかったと考えられる。以下に研究により判明したことを箇条書に示す。二枚貝の研究(1)ニュートン他は北米ワラワ山地の二枚貝化石群をテチス域のものとしたが,この中に日本ではテチス域(三宝山帯)に全く産せずより内側の河内ケ谷フォーナの要素の産出を報じたが検討の結果ワラワ山地で河内ヶ谷フォーナの種に同定又は類似種とされたもののいづれもが異なることが以下の如く明かになった。(2)テチスフォーナ中の三角貝類を検討した結果,次のことが明らかになった。a.日本産の上部三畳系の三角貝はGruenewaldia decussata,Gruenewaldia vokhlmanni,Kyushutrigonia hachibarensis new genss and next species,Prorotrigonia(?)sp.でこれらはテチス域から中国西部にかけての