著者
ズール リチャード 大山 修一
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.73-86, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1 6

ザンビアにおける都市と地方の不均衡な開発は,地方から都市への人口移動を引き起こしたが,都市における住宅開発は順調に進まなかった。本稿は,ザンビアの土地政策の歴史をみたうえで,経済の自由化と土地商品化の動きにともなう都市の住宅問題,宅地をめぐる争議を検討する。主要な問題は,都市における住宅のうち80%がインフォーマル,あるいは,開発計画の適用地域外であるということにある。これらの地域では,水や電気の供給,下水道やゴミ収集といった衛生に関する行政サービスは乏しく,洪水が起きたり,あるいは,コレラや赤痢などの感染症の発生もみられる。ザンビアでは,1964年の独立時に,人々の移動が自由となった結果,都市の住宅不足が深刻な問題となった。さらに1995年に土地法が改正されたことにより,貧困削減を目的として,土地の資産価値を認め,首都への資本集中を進めた。この土地法の改正は,土地所有権の強化と都市の開発を進めることになった。ザンビアにおける住宅開発は,住民の主体性に任せる「自助努力による住宅開発」にもとづいているため,地価や物価の上昇のなかで住宅を確保できない住民も多い。ザンビアにおける潜在的な問題として,都市部における住宅地の競合と行政による土地接収に対する都市住民の過激な反応にともなう社会秩序の混乱を指摘しておきたい。