著者
上田 博 梶川 正弘 早坂 忠裕 遊馬 芳雄 菊地 勝弘 和田 誠 ソラス M.K.
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北極域の気候変動や水循環を解明する上で、ポーラーローを含む北極低気圧の発生・発達過程と北欧北極圏やノルウェー海上での水蒸気輸送や雲、降水粒子の形成過程を明らかにするために、地上リモートセンサーを用いた現地観測を行なった。1999年1月から4月までスウェーデン・キルナで現地のスウェーデン宇宙物理研究所の協力を得て気象観測用Xバンド鉛直ドップラーレーダーのデータを取得した。得られたデータを解析した結果、スウェーデン・キルナ地方の降水はスカンジナビア山脈の影響を強く受け、空気塊の斜面上昇による山岳性降水やノルウェー海上を北上する低気圧に伴う上層の前線からの弱い降水と山脈の強制上昇の影響を受けた下層雲との相互作用によって降水が増強されている様子が観測された。また、1999年10月にノルウェー海の中央に位置するベアー・アイランドのノルウェー気象局の観測所、スピッツベルゲン島・ニーオルセンの国立極地研究所の観測施設に出かけ、北極圏の低気圧に関する資料やデータを収集した。また、その際に簡易気象観測機器を設置して北極圏の低気圧に関してのデータを取得した。これらのデータは厳冬季を含む北欧北極圏やノルウェー海上での雲や低気圧の構造・発達過程、水循環・輸送過程が明らかになり、ポーラーローを含む北欧北極圏での気象擾乱の構造や水・エネルギー循環を明らかにするための基礎データとなることが期待される。