著者
亀山 宏 チャックマック H.エロール 陸 永寿
出版者
香川大学
雑誌
香川大学農学部学術報告 (ISSN:03685128)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.27-43, 2007-02-28
被引用文献数
2

本研究では、作物と畜産をサブ・セクターとする農業セクターを構築した。表3のように、そのセクターは約40の作物アクティビティーと13の畜産アクティビティーからなり、4つの地域ごとに投入要素資源の制約量のもとで、需要と供給をベースに経済余剰の最大化を目的関数として現状の再現モデルを構築した。これに、EU加盟をめざさないシナリオと、EU加盟をめざして新たな農業支持政策に変更した場合(3ケース)、について生産者余剰と消費者余剰の変化を求めた。結論は次の2点である、第1に、生産者の余剰は15%ほど減少し、消費者の余剰は10%ほど増加すること。両者を合わせた合計の余剰は3%ほど増加すること、また、生産者の所得の減少分は、現在、実施し始めた直接所得補償方式でカバーできることなど、確かめることができた。第2に、これらの結果をもたらす生産、消費、貿易の状況を農産物別にシミュレーション結果を定量的に整理した。トルコの農業政策は、従来、選挙対策の農業支持のための所得移転という性格が強く、農業生産者の経営にとって最大の不安定要因であった。今後は、国内外との需給調整を図り、農業者の所得水準の向上をめざして作物、畜産の構成を変更しながら進めていくことが望まれている。トルコがEUへの加盟をめざすなかでも、農業者にとっての経営上の最大のリスクは政府による政策手段の変更となっている。すでにEUで取り組まれている農業政策の枠組みに沿えるように政策手段を整え、実際に、政策の実施が生産者の意思決定を誘導できるようになるには、かなりの時間がかかるように思われる。