著者
亀山 宏 竹歳 一紀
出版者
香川大学農学部
雑誌
香川大学農学部学術報告 (ISSN:03685128)
巻号頁・発行日
vol.55, no.108, pp.11-18, 2003-03

商品先物取引には三大機能がある。第一は、価格の透明性を確保する取引の公開機能である。観念上の売買を約束事で演ずるに過ぎない商品先物取引だが、決済は実際の商売として守らなければならなく、そのために公益法人として取引所が仲立ちをしており、価格形成はガラス張りであり、市場流通のほかに様々な市場外の動きが活発な最近の農産物流通の世界では、大変魅力的である。第二の機能は「かけつなぎ」で、当業者(現物商品の生産や売買に携わっている)の将来に発生する恐れがあるリスクを管理、コントロールすることができる。現物商品を仕入れた当業者が、近い将来にそれを加工して売りたい場合に、先物市場の相場の流れのなかで、その商品を自分の希望する価格で売る約束をすることができる。第三の機能としては、価格平準化で、オープンな市場でガラス張りの取引なので、関係者が価格情報を完全に共有でき、強気筋・弱気筋が同時に働き、価格が次第に平準化する。農政の議論に新たな論点を提示するものとして、第一、第二の機能を活用して農産物の価格政策を見直すことができ、野菜の価格決定にあたって先物市場の活用の可能性を探ってみることは有効であると思われる。本論文では、指定野菜の重要な品目であり、取り扱い業者も多く、かつ輸入品の競合についてもその他の野菜よりも長い経験をもっている「たまねぎ」を取り上げた。
著者
亀山 宏 チャックマック H.エロール 陸 永寿
出版者
香川大学
雑誌
香川大学農学部学術報告 (ISSN:03685128)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.27-43, 2007-02-28
被引用文献数
2

本研究では、作物と畜産をサブ・セクターとする農業セクターを構築した。表3のように、そのセクターは約40の作物アクティビティーと13の畜産アクティビティーからなり、4つの地域ごとに投入要素資源の制約量のもとで、需要と供給をベースに経済余剰の最大化を目的関数として現状の再現モデルを構築した。これに、EU加盟をめざさないシナリオと、EU加盟をめざして新たな農業支持政策に変更した場合(3ケース)、について生産者余剰と消費者余剰の変化を求めた。結論は次の2点である、第1に、生産者の余剰は15%ほど減少し、消費者の余剰は10%ほど増加すること。両者を合わせた合計の余剰は3%ほど増加すること、また、生産者の所得の減少分は、現在、実施し始めた直接所得補償方式でカバーできることなど、確かめることができた。第2に、これらの結果をもたらす生産、消費、貿易の状況を農産物別にシミュレーション結果を定量的に整理した。トルコの農業政策は、従来、選挙対策の農業支持のための所得移転という性格が強く、農業生産者の経営にとって最大の不安定要因であった。今後は、国内外との需給調整を図り、農業者の所得水準の向上をめざして作物、畜産の構成を変更しながら進めていくことが望まれている。トルコがEUへの加盟をめざすなかでも、農業者にとっての経営上の最大のリスクは政府による政策手段の変更となっている。すでにEUで取り組まれている農業政策の枠組みに沿えるように政策手段を整え、実際に、政策の実施が生産者の意思決定を誘導できるようになるには、かなりの時間がかかるように思われる。