著者
デルゲルマー モンフバータル 岩橋 政宏 石井 俊平 神林 紀嘉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.470-482, 2004-04-01

リフティング構成されたウェーブレット変換に基づく画像符号化は,フィルタ処理後にラウンディング処理を行うことで効率的な可逆符号化が可能となるため,可逆・非可逆統合符号化の一手法として近年注目されている.しかし,ラウンディング処理が非可逆符号化時にも行われる場合,量子化誤差に加えてラウンディング誤差が再生画像に重畳されるため,これにより更なるSNRの低下を招いてしまう.そこで本論文では,一般的なNステージに拡張可能な,新しい非分離型2次元ウェーブレットの変換モジュールを提案する.これにより,従来の分離型ウェーブレットと互換性があり,なおかつ,ラウンディング誤差の低減された可逆・非可逆統合符号化が可能となる.更に,ラウンディング誤差のフィルタバンク内の伝搬メカニズムを解析し,再生画像に重畳するラウンディング誤差の分数値を理論的に導出することで,Nステージにおけるラウンディング誤差の低減効果を理論的に裏づける.結果,ラウンディング誤差の分散値が分離型に比べて50%程度低減できること,及び,高ビットレート非可逆符号化時において平均1.30[dB]程度のSNR改善が確認された.