著者
大竹 亘 岩橋 政宏
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.54, pp.9-12, 2009-12-03
被引用文献数
3

リフティング構成された2点回転変換は、信号値や乗算係数値の有限語長化にも拘わらず、信号の可逆再生が保証されており、ロスレス符号化として広く応用されている。回転変換の係数値は、回転角度により一意に決定されるが、リフティング構成された場合、係数値が分母を持つ。このため、回転角度によっては分母が零となる。このような特異点の付近では、有限語長化による丸め誤差が、変換の内部で大幅に増幅される問題がある。以前我々は、RGB3色に対する主成分分析(あるいはKLT)を例として、信号の入力順と出力順を置換することで、3点回転変換における特異点問題が回避され、丸め誤差を低減できる方法を提案した。本報告では更に、2点回転変換に対する信号置換ならびに符号置換を導入することで、より一層の誤差低減が可能となることを示す。4種類の標準画像に対する実験の結果、誤差の分散が従来法に比べ平均26.6[%]程度低減できることが確認された。
著者
岩橋 政宏
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の監視カメラは常に我々を写し続け、受信者に対して被写体の細部までを克明に伝えてしまう。いわば被写体の気持ちを無視した映像通信システムとなっている。これに対し本研究では、映りたくない人は自動的に隠す、いわば見られる人の気持ちを反映するプライバシー・コンシャスなビデオ通信方式を開発し、これをもって国際交流に貢献することを目的としている。1年目は、1)映像中から人物領域を抽出し、2)カメラからの距離に応じて人物ごとの透明度を決め、3)必要最小限の情報のみを圧縮符号化および伝送し、4)受信側で透明人間を映し出す方法を提案した。提案手法はとくに、画像符号化の国際標準であるJPEG2000(JP2K)の要素技術を活用しているため、世界的に普及しているIPコアなどのハードウェア・ソフトウェア資産を活用でき、開発期間の短縮や製品コストの削減が可能となる優れた特徴を有している。2年目は、5)本システムをDSPによりハードゥェア実現し、6)諸般の利用形態における改善点を明らかにし、システムの実用化を目指した評価実験を行った。既存の画像認識モジュールと既存の画像符号化モジュールを単に組み合わせるだけでは学術的な特色があるとは言えない。本研究では、7)JP2K画像符号化国際標準の要素技術を活用し、8)認識処理にフィードバックすることで人物領域や透明度を決定する。このような点で学術的に特色があり独創的であると言える。結果として、認識と符号化の協調技術が開発され、小型で省電力な知能ビデオカメラの開発が期待できる。更にはこれを太陽電池と風力発電で駆動することで、プライバシー・コンシャスな環境調和型モニタリング・システムを構築できる、あるいは、人に緊張感を強要しない遠隔共同研究空間を提供できる、等の意義を有する。
著者
デルゲルマー モンフバータル 岩橋 政宏 石井 俊平 神林 紀嘉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.470-482, 2004-04-01

リフティング構成されたウェーブレット変換に基づく画像符号化は,フィルタ処理後にラウンディング処理を行うことで効率的な可逆符号化が可能となるため,可逆・非可逆統合符号化の一手法として近年注目されている.しかし,ラウンディング処理が非可逆符号化時にも行われる場合,量子化誤差に加えてラウンディング誤差が再生画像に重畳されるため,これにより更なるSNRの低下を招いてしまう.そこで本論文では,一般的なNステージに拡張可能な,新しい非分離型2次元ウェーブレットの変換モジュールを提案する.これにより,従来の分離型ウェーブレットと互換性があり,なおかつ,ラウンディング誤差の低減された可逆・非可逆統合符号化が可能となる.更に,ラウンディング誤差のフィルタバンク内の伝搬メカニズムを解析し,再生画像に重畳するラウンディング誤差の分数値を理論的に導出することで,Nステージにおけるラウンディング誤差の低減効果を理論的に裏づける.結果,ラウンディング誤差の分散値が分離型に比べて50%程度低減できること,及び,高ビットレート非可逆符号化時において平均1.30[dB]程度のSNR改善が確認された.