著者
東保 登紀代 トウボ トキヨ Toubo Tokiyo
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.10, pp.73-82, 2006

本稿は、約二ヶ月間に渡り週一回ペアで行われた日本語中上級学習者のトピック会話の、教師による誤用訂正と学習者の誤用自己訂正を集計・分析したものである。その結果、学習者の誤用は文法の誤用が最も多いことが分かった。また誤用の具体例を見ると、誤用の分類項目の全てに渡って誤用は特定の誤用に集中していた。一方、学習者の誤用自己訂正は「語彙」の訂正率が最も高く「助詞」の訂正率が最も低かった。「語彙」では誤用数が多かった項目は、訂正率も高かったが、分類項目「文法」では多くの誤用があつた項目の訂正率は逆に低かった。教師は学習者の誤用を毎週添削してフィードバックしてきたが、この間に学習者は間違いやすい「文法」に対する自己訂正がさほど行えなかったと言えよう。このことは正確な日本語運用には、学習者の誤用を訂正してフィードバックするだけでは充分とは言えず、間違えやすい具体的な「文法」項目や「助詞」を、その言語形式に焦点を当てて復習することがきわめて重要であることを示唆している。この調査により、全体としての中上級学習者が発話上間違えやすい言語項目、並びに個々人のそれを突き止めることができた。学習者のクラス在籍中に週ごとの誤用を集計するなら、彼らの日本語学習を効率的に援助できる。