著者
蔭山 拓 カゲヤマ ヒロシ Kageyama Hiroshi
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 = Journal of multicultural education and student exchange : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-7, 2016

本稿では、日本語教育における主要な対話観を概観・整理し、それらの意義・課題について、バフチンの対話原理およびそれを基盤とする対話主義的な第二言語教育という視点から考察した。その結果、日本語教育における主要な対話観としては、「会話」とほぼ同義の対面式の口頭言語コミュニケーションを指す対話観、相互理解や課題の発見・解決といった目的を達成するための「話し合い」や「交渉」とほぼ同義の対話観、「内省」と同義の自己内対話を指す対話観などが混在していることが明らかになった。そして、対話主義的な第二言語教育の視点からの考察では、それら従来の主要な対話観に基づく研究や教育実践は、一方で依然としてモノロジズム的な言語観・言語活動観あるいはコミュニケーションのコードモデルを踏襲するものであること、そして、一方で日本語教育における対話の活用を目指してはいるものの実践が依拠している日本語の習得と指導の原理を十分に提示できていないことなどを指摘した。
著者
磯野 英治 近藤 佐知彦 宮原 啓造 イソノ ヒデハル コンドウ サチヒコ ミヤハラ ケイゾウ Isono Hideharu Kondo Sachihiko Miyahara Keizo
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 = Journal of multicultural education and student exchange : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.20, pp.19-24, 2016

本稿では、国際教育交流センターの短期プログラム開発研究チームと日本語教育研究チームが協働のもと行っている短期日本語教育プログラムである「J‒ShIP」および「超短期プログラム」の2015年度の実施状況を報告した。その中で、新たなプログラムの開発の背景や短期日本語教育プログラムの意義と可能性を併せて論じている。
著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学留学生センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-31, 2010-03-31

【特集OUSカリキュラムの開発(3)】従来の漢字教育では教科書等の主教材での漢字学習と漢字教材での漢字学習は必ずしも十分に関連づけられていなかった。本稿では、従来の日本語能力試験2級漢字1023字を6段階に分けて、各漢字に最も基本的と考えられる漢字語を配当して漢字学習のシラバス(漢字学習ロードマップ)を作成し、それに基づいて開発された漢字教材とウェブでの漢字学習システムについて論じる。新たな漢字教材は、教科書等での漢字学習と併せて複線的な漢字学習システムを構成すること、同教材に準じて開発されたウェブでの漢字マスタリー学習システムとともに利用することで漢字知識を一定水準まで平準化するための補充学習を有効に行うことができること、及び漢字ロードマップにはそれを参考にしつつ中級以降の教材作成を合理的に行うことができるという利点があることを明らかにした。
著者
高橋 朋子 タカハシ トモコ Takahashi Tomoko
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学留学生センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.61-74, 2008-03-31

本稿は、これまであまり考察が試みられることがなかつた「継承語教育」に焦点を当て、先行研究の概観及び中国帰国者集住地域にある小学校で行われている中国語授業の実践例を参考に、その課題と展望を探り、子どもたちにとって継承語教育とはどんな意味を持つのか、その教育的意義を探ることを目的とする。
著者
磯野 英治 近藤 佐知彦 宮原 啓造 イソノ ヒデハル コンドウ サチヒコ ミヤハラ ケイゾウ Isono Hideharu Kondo Sachihiko Miyahara Keizo
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.19-24, 2016-03-31

本稿では、国際教育交流センターの短期プログラム開発研究チームと日本語教育研究チームが協働のもと行っている短期日本語教育プログラムである「J‒ShIP」および「超短期プログラム」の2015年度の実施状況を報告した。その中で、新たなプログラムの開発の背景や短期日本語教育プログラムの意義と可能性を併せて論じている。
著者
宮原 啓造 Miyahara Keizo ミヤハラ ケイゾウ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.19, pp.57-64, 2015

国際教育交流の場に適した人名の表記法について考察する。世界各国には様々な人名の構成が存在するが、その正確な表記と、それを通じた個人の明確な弁別は、留学や国際共同研究などの教育交流を含め、あらゆる分野における社会活動にとって重要な要素である。本稿では、まず特徴的な人名構成の例を取り上げて概要を俯瞰すると共に、その複雑性・多様性を再確認する。次に、その分析と考察に基づいて、国際教育交流に有用と考えられるいくつかの人名表記手法を提案する。
著者
義永 美央子 潘 英峰 Yoshinaga Mioko Pan Yingfeng ヨシナガ ミオコ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.23, pp.53-64, 2019-03-31

本稿では、附属図書館ラーニングサポーターの活動の現状およびラーニングサポーター自身の学修支援を通じた学びを理解することを目的として実施したアンケート調査およびインタビュー調査の結果を報告する。調査の結果、ラーニングサポーターは主にスキルや態度面での自己の変化や成長、具体的には、「コミュニケーション能力の向上」「学習・研究に対する姿勢の変化」「積極性・主体性の向上」「LS としての自覚の向上」を認識していた。また留学生に対する支援を通じて、「コミュニケーション能力の向上」「視野や態度の変化」「日本語に対する理解の深まり」「学習意欲の向上」を感じていることが明らかになった。
著者
難波 康治 佐合 弘行 Nanba Koji Sago Hiroyuki ナンバ コウジ サゴウ ヒロユキ
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.12, pp.113-120, 2008

留学生センター日本語教育部門では、日本語教育プログラムの改革と平行して平成18年度の教育基盤整備費の配分を受け、従来のプレースメントテストと履修登録手続きをすべてWEB化し、学内外のどこからでも縦横申請を行えるシステムを開発した。本稿は、その開発の経緯とシステムの概要について報告する。
著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.15, pp.43-53, 2011

本稿では、基礎日本語教育のカリキュラム開発と教材作成において基礎とされた第二言語の習得と習得支援の原理について議論する。広く基礎となる言語観としてはバフチンの対話原理が採用された。そこでは、文ではなく発話と対話性の重要性が強調される。そして新カリキュラムの要件として、(1)文型・文法事項の系統的学習、(2)語いの体系的学習、(3)言語活動目標が設定されていること、が提示された。次に、新カリキュラムでは、学習者が本文を習得しさえすれば学習言語事項の習得はすべて達成されるマスターテクスト・アプローチを採用し、マスターテクストには、(1)言語事項の収用元、(2)ユニット学習の道じるべ、(3)言語事項の借用元、の役害」があることを論じた。さらに、学習方法として、受動的理解のフェイズ、模倣とローカルな対話のフェイズ、自己目的のための再構成のフェイズ、自己の言葉の再利用のフェイズが想定されていることを明らかにし、各々の方法を解説した。最後に、自己修正、差し替え、補い、代替語提示などを伴う、教師によって介助された各種の言語活動従事経験を通して学習者が有効に第二言語習得を進められることを論じた。
著者
難波 康治 角南 北斗 ナンバ コウジ スナミ ホクト Namba Koji Sunami hokuto
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.14, pp.63-69, 2010

【特集OUSカリキュラムの開発(8)】OUSカリキュラムでは、そのカリキュラムの一部として、計画段階からITの積極的な利用を検討してきた。本稿では、その背景としての大学の日本語教育に おけるIT利用の現状とその問題点を分析し、その解決策を検討する。さらに、その教育理念をもとに現在開発に着手している「日本語教育支援ITプラット フォーム」について紹介する。
著者
宮原 啓造 Miyahara Keizo ミヤハラ ケイゾウ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 = Journal of multicultural education and student exchange : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.20, pp.75-80, 2016

大阪大学が、その海外協定校からの要望に答えるべく新設した短期留学生受入れプログラムについて述べる。同プログラムは、理工医学系の主に学部生を対象としており、長期休暇期間中に来日する短期留学生が様々な部局の研究室に所属して研究活動を遂行するものである。プログラムの新規開発にあたっては、既に10年弱の実績を持つセメスタベースの短期研究留学受入れプログラム「FrontierLab@OsakaU」の枠組みを基盤として活用した。実施初年である2015年度はプログラムのカウンタパートとして米国の協定校を設定し、同校から12名の学生を受入れた。実施後のアンケート調査から、プログラムが着実に遂行され参加学生および受入れ研究室の双方がプログラム構成に満足すると共に十分な研究成果を挙げたことが確認された。また協定校から受入れ数枠拡大の要望が寄せられ、これらの結果を受けて今後プログラムの規模を拡充すべく運営会議で検討を進めている。
著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-11, 2018-03-31

Based on the anthropological necessity entailing three moments of dialectics of the society, i.e. externalization, objectivation and internalization, the sociology of knowledge advocated by Berger and Luckmann (1966) and Berger (1967) offers language educators with important insights on humanity and its verbal behavior. The paper begins with the brief explication of the sociology of knowledge, and proceeds to the discussions on humanity and verbal behavior within the sociological theory. It also touches on the basic phenomenological perspective of the theory, which places language at the center of our world-building activities. While pointing out the three dimentional nature of utterance including situated action, situation-transcending historical aspect and aspect of code system, the paper concludes that language educators need to pay attention to the nature of language discussed in this paper in planning, designing and implementing language teaching.社会の弁証法の3つの契機である外在化と客体化と内在化を含む人間学的必然性を背景として、Berger and Luckmann(1966)とBerger(1967)により提唱された知識社会学は、人間観と言語観に関して言語教育者に重要な洞察を与えてくれる。本稿は、知識社会学とは何かという議論から始まり、知識社会学における人間観と言語観の議論に進む。さらに、知識社会学の現象学的な観点にも言及する。現象学的な観点では、言語がわたしたちの世界構築の営みの中心に置かれる。最後に、発話は状況的行為と超状況的な歴史的側面とコードのシステムとしての側面という3つの側面を有することを指摘し、教育や授業の企画・計画・実践において第二言語教育者は、発話のこのような成り立ちと特性を十分に考慮しなければならないと結論づける。
著者
Castro Juan Jose 金 雪梅
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.73-77, 2013-03-31

外国人留学生の視点を取り入れながら今後どのように就職支援を進めていくことが望ましいかを2年間の就職対策講座の経験から報告としてまとめてみた。 日本式就職活動に対する不安や迷いを留学生に特化した形の支援で補い、日本人学生と同等の就職活動につなげてあげることが重要である。
著者
魚崎 典子 ウオサキ ノリコ Uosaki Noriko
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-21, 2014

近年、「留学」の在留資格を有する外国人(以下「留学生」と称する)の日本企業への就職希望率は上昇しているにも関わらず、実際の就職率は低迷している。その一因として、日本独特の就職制度が考えられる。日本では一般的に就職活動は卒業予定年度の前年度(B3,Ml)から始める慣行がある。その慣行を知らずに就職活動を開始する時期が遅れるケースが複数報告されている。手遅れになる前に留学生に情報を伝える有効な対策が早急に望まれている。本調査報告ではまず、日本独特の就職制度とそれを支える就職支援産業に触れ、諸外国の就活事情および、留学生がどのように日本の就職活動に関わる情報を得たかについてアンケート調査を実施した結果を報告する。そして留学生の日本での就職を困難にさせている要因を明確化した上で、有効な情報伝達手段を提案する。
著者
東保 登紀代 トウボ トキヨ Toubo Tokiyo
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.10, pp.73-82, 2006

本稿は、約二ヶ月間に渡り週一回ペアで行われた日本語中上級学習者のトピック会話の、教師による誤用訂正と学習者の誤用自己訂正を集計・分析したものである。その結果、学習者の誤用は文法の誤用が最も多いことが分かった。また誤用の具体例を見ると、誤用の分類項目の全てに渡って誤用は特定の誤用に集中していた。一方、学習者の誤用自己訂正は「語彙」の訂正率が最も高く「助詞」の訂正率が最も低かった。「語彙」では誤用数が多かった項目は、訂正率も高かったが、分類項目「文法」では多くの誤用があつた項目の訂正率は逆に低かった。教師は学習者の誤用を毎週添削してフィードバックしてきたが、この間に学習者は間違いやすい「文法」に対する自己訂正がさほど行えなかったと言えよう。このことは正確な日本語運用には、学習者の誤用を訂正してフィードバックするだけでは充分とは言えず、間違えやすい具体的な「文法」項目や「助詞」を、その言語形式に焦点を当てて復習することがきわめて重要であることを示唆している。この調査により、全体としての中上級学習者が発話上間違えやすい言語項目、並びに個々人のそれを突き止めることができた。学習者のクラス在籍中に週ごとの誤用を集計するなら、彼らの日本語学習を効率的に援助できる。
著者
魚崎 典子 ウオサキ ノリコ Uosaki Noriko
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.11-21, 2014-03-31

近年、「留学」の在留資格を有する外国人(以下「留学生」と称する)の日本企業への就職希望率は上昇しているにも関わらず、実際の就職率は低迷している。その一因として、日本独特の就職制度が考えられる。日本では一般的に就職活動は卒業予定年度の前年度(B3,Ml)から始める慣行がある。その慣行を知らずに就職活動を開始する時期が遅れるケースが複数報告されている。手遅れになる前に留学生に情報を伝える有効な対策が早急に望まれている。本調査報告ではまず、日本独特の就職制度とそれを支える就職支援産業に触れ、諸外国の就活事情および、留学生がどのように日本の就職活動に関わる情報を得たかについてアンケート調査を実施した結果を報告する。そして留学生の日本での就職を困難にさせている要因を明確化した上で、有効な情報伝達手段を提案する。
著者
渡部 留美 ワタナベ ルミ Watanabe Rumi
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.10, pp.107-114, 2006

本稿では、デンマークにおける留学交流の現状をインタビューや資料をもとに紹介する。前半部分ではヨーロッパの短期交換留学制度の中のデンマークの状況とデンマークの留学生受入れ状況について、後半部分ではデンマークの大学の国際化を支える部署やスタッフについて述べる。
著者
中橋 真穂 義永 美央子 ナカハシ マホ ヨシナガ ミオコ Nakahashi Maho Yoshinaga Mioko
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.41-50, 2012-03-31

グローバル化が進む中、異文化理解教育が益々重要になってきている。そこで、世界有数の多文化国家であるアメリカの中学校で異文化理解教育に関する調査を実施した。その結果、中学校での異文化理解教育に関するカリキュラムや指導方法、教師の意識、また、中学生が実生活で様々な異文化に接触している実態と、それらに対する寛容な態度が明らかになった。
著者
西口 光一 ニシグチ コウイチ Nishiguchi Koichi
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.18, pp.41-54, 2014

本稿では引用等を手がかりとし文献を辿って、ヴィゴツキーとパフチンがマルクスから何を引き継ぎそれをどう発展させたかを検討した。その結果、ヴィゴツキーとパフチンは共にマルクスの人間観や意識観から意識の記号による被媒介性という見解を導いていること、そしてヴィゴツキーは一貫して発達研究に関心を寄せていることが明らかになった。それに対し、パフチンは意識の記号による被媒介性の見解をさらに推し進めて、イデオロギーと心理の関係、心理と記号の関係、言語活動における心理過程と記号の聞の往還運動、そして対話原理へとさせていることが明らかになった。パフチンのそのような議論は、人と人の接触・交流にこれまでにない新たな視点を提供するものとして、第二言語の習得と教育の研究の立場から大いに注目される。