著者
ニザム・ ビラルディン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.19-34, 2001-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26

農村改革以降の新彊ウイグル自治区における食糧確保問題の背景を考察し,グルジャ県を事例に食糧増産対策と当面の課題について検討した.新彊ウイグル自治区では, 1980年代から綿花を中心とした換金作物の作付面積が増加してきた反面,食糧作物の作付面積は減少してきた.さらに, 1990年代半ばには,同自治区は中央政府によって中国最大の綿花生産地およびテンサイ生産地に指定され,綿花,テンサイなどの換金作物作付面積の拡大に拍車がかかった.新彊ウイグル自治区政府は食糧を確保するため,各県の食糧自給を強化する一方,食糧生産の基地となるべき県に対して食糧供給力の増大を求あた.同自治区の主な食糧生産基地県であるグルジャ県では,「五統一」政策によって食糧生産の増大が図られている.しかし,この「五統一」政策は,食糧作物の耕作地の確保に貢献し得るものの,従来からの食糧販売問題を一層深刻化させる可能性があることも否定できない.食糧販売問題の解決策としては,穀物を中心とした作目構成を改善し,野菜,果樹などの作付拡大を図りつつ,穀物を含む農産物の共同販売体制を整備することが必要である.