著者
寺田 竜太 ニシハラ グレゴリー・ナオキ 嶌田 智
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

九州南部は温帯と亜熱帯性海産植物の分布推移帯(エコトーン)に位置し,温帯域に見られる種類の多くは当地が分布南限となっている。本研究では,温帯域で藻場を構成する16種の分布南限群落の個体群動態を明らかにすると共に,培養試験や光合成活性の結果を基に,温度や光の耐性やストレスの影響を解明した。光合成活性の測定は,藻場構成種16種と共に食用紅藻9種も用い,様々な水温,光条件における純光合成速度や光量子収率(Fv/Fm),電子伝達速度活性(rETR)を測定した。その結果,分布南限の個体群では寿命の短命化や繁茂期間の短縮などが顕著に見られ,高水温の環境が各種の繁茂に影響を与えていると推察された。多くの種において,純光合成速度やFv/Fm,rETRは28℃以上で低下し,最高30℃に達する生育地の夏季水温がこれ以上増加すると,群落の生残に著しい影響が出る可能性が示唆された。