著者
小瀧 裕一 小檜山 篤志 安元 剛 寺田 竜太
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

記憶喪失性貝毒生産藻3種に関して、分布、毒生産特性、毒の動態を検討した。Pseudo-nitzschia multiseriesを分離したが早めに死滅し、追及は困難であった。Nitzschia navis-varingicaは南方産でわが国まで黒潮で運ばれて分布を拡大したとの仮説を構築した。同種の増殖・毒生産特性、rDNA ITS領域の塩基配列比較結果は上記仮説を支持した。同種は、ドウモイ酸とイソドウモイ酸A、Bを生産し、その組み合わせから4タイプに分けられるが、それを制御する因子は遺伝子および環境細菌の存在であった。毒生産に及ぼす細菌の影響はP. multiseriesが最も顕著であった。
著者
新北 成実 寺田 竜太
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.23-00020, (Released:2023-11-07)
参考文献数
37

鹿児島湾のアマモ場の分布の現況を把握するため,2021年に湾内外の77か所において調査を行った。調査は潜水または海岸踏査によって海草の生育範囲を確認し,群落内に無作為に設置した方形枠で被度を記録した。その結果,湾内ではアマモ,コアマモ,ヤマトウミヒルモが見られ,湾外ではこれらに加えてオオウミヒルモ,カワツルモが見られた。アマモ場の面積は湾内で4.39 ha,湾外4か所を含めても6.46 haとなり,湾内のアマモ場の面積は2006年の調査時の11.6%,1978年の2.4%まで減少していた。
著者
土屋 勇太郎 Nishihara Gregory N. 寺田 竜太
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-197, 2012-03-15
参考文献数
48
被引用文献数
2 7

鹿児島産ホンダワラ属 5 種の光合成を 10~36°C の温度で測定した。純光合成速度はそれぞれ 20~24°C で最高値を示し,マメタワラとヤツマタモク,ヒジキは 16~28°C ,コブクロモクとキレバモクは 16~24°C で最高値と有意差のない速度を示した。呼吸速度はいずれも高温で増加した。光化学系IIの電子伝達速度はそれぞれ 28~30°C で最高値を示し,32°C 以上で減少した。生育地の夏季の水温環境(約 29°C)では,電子伝達の阻害はないと示唆されるが,それ以上の水温では光合成活性の低下の可能性が考えられた。<br>
著者
田中 敏博 吉満 敏 今吉 雄二 石賀 好恵 寺田 竜太
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.20-30, 2013-01-15
被引用文献数
1 16

鹿児島湾内 230 地点で海藻・海草類の調査を行い,ガラモ場やアマモ場(アマモ,コアマモ)の分布を明らかにした。また,ガラモ場を構成する主要なホンダワラ属海藻 10 種については,各種の分布を整理した。その結果,ガラモ場を 159 地点で確認し,アマモ場を 41 地点で確認した。温帯域に広く分布するヒジキ,イソモクやヤツマタモク,マメタワラは湾内各地に広く見られたが,亜熱帯から暖温帯に広く分布するトサカモクやフタエモク,コブクロモク,キレバモク,コナフキモク,シマウラモクは湾中央部や湾口部に多く見られた。<br>
著者
河野 敬史 猪狩 忠光 今吉 雄二 田中 敏博 徳永 成光 吉満 敏 寺田 竜太
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.359-369, 2012-09-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
32

薩南諸島と鹿児島県本土に見られる海草13種について,鹿児島大学と鹿児島県水産技術開発センターの標本と調査記録に基づいて分布を整理すると共に,熱帯・温帯性海草の推移帯に位置する奄美大島 2ヶ所で群落構造を調査した。日本本土に主に分布する温帯性種のコアマモとヤマトウミヒルモは奄美大島でも見られたが,アマモは薩南諸島で確認されなかった。熱帯性種の分布は種によって異なり,ベニアマモ,リュウキュウアマモ,ボウバアマモ,リュウキュウスガモ,ウミヒルモ,トゲウミヒルモの6種は奄美大島が北限だったが,ウミジグサ2種は種子島南部でも見られた。一方,オオウミヒルモは薩南諸島,鹿児島県本土の両方で見られた。沖縄以南の海草群落で主要構成種となるリュウキュウスガモは与論島,沖永良部島,徳之島で優占群落が見られたが,奄美大島では一部を除いて点生する程度であり,コアマモやウミジグサ類主体の群落が形成されていた。
著者
小野 豪朗 寺田 竜太 奈良 武士
出版者
佐賀大学海浜台地生物環境研究センター
雑誌
Coastal bioenvironment (ISSN:13487175)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.67-76, 2003-12 (Released:2011-03-05)

原虫トリパノソーマ・クルーズが引き起こすシャーガス病は有効な治療法がなく、ラテンアメリカにおいて公衆衛生上問題となっている。そこで、我々は、新規シャーガス病治療薬の開発を目的に、日本沿岸より採取した計341種の海藻のMeOHならびにPBS抽出液を対象にして、組換えトリパノソーマ・クルーズジヒドロオロト酸脱水素酵素(rTcDHOD)に対する阻害活性のスクリーニングを行った。その結果、6種の海藻のMeOH抽出液ならびに3種の海藻のPBS抽出液に20%以上のrTcDHOD阻害活性が観察された。中でも、褐藻イシゲのMeOH抽出液は42%もの高いrTcDHOD阻害活性を示し、試験した30~121℃並びにpH3~10域で安定であることが明らかとなった。また、その抽出液は濃度依存的なrTcDHOD阻害活性を示し、正常ヒト線維芽細胞(HDF)に対して250μg/mlまでの濃度おいて毒性は観察されなかった。これらのことより、褐藻イシゲには新規シャーガス病治療薬の開発に有望なrTcDHOD阻害物質の存在が明らかとなった。
著者
Lideman Gregory N. Nishihara 野呂 忠秀 寺田 竜太
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.563-571, 2011-09-20 (Released:2012-12-27)
参考文献数
35

カタメンキリンサイ,トゲキリンサイ,トサカノリ(紅色植物門ミリン科)は,熱帯・亜熱帯域に生育する有用海藻であり,日本では南西諸島や九州でよく見られる。本研究では,これら3種の養殖技術を確立する上で必要な至適光・温度条件を検討することを目的とした。温度(16,20,24,28,32°C)が生長や光合成に与える影響については,培養による生長試験と溶存酸素計を用いた光合成試験の2つの実験で行った。また,水温24°C,光量0から536μmol photon m-2 s-1 の条件で光合成速度を測定し,光合成-温度曲線を作成した。光量90μmol photon m-2 s-1 における最適生長率はカタメンキリンサイとトゲキリンサイで24°Cと28°C,トサカノリで20°Cと24°Cの範囲だった。最大光合成速度はカタメンキリンサイで135.0,トゲキリンサイで65.0,トサカノリで52.4μg O2 (mg chl-a)-1 min-1であり,それぞれ94.9,69.4,35.4μmol photon m-2 s-1 以上で飽和した。これらの結果は各種の生育水深と日本南部における分布と密接に関連しており,各種の養殖可能時期について考察を行った。
著者
寺田 竜太 ニシハラ グレゴリー・ナオキ 嶌田 智
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

九州南部は温帯と亜熱帯性海産植物の分布推移帯(エコトーン)に位置し,温帯域に見られる種類の多くは当地が分布南限となっている。本研究では,温帯域で藻場を構成する16種の分布南限群落の個体群動態を明らかにすると共に,培養試験や光合成活性の結果を基に,温度や光の耐性やストレスの影響を解明した。光合成活性の測定は,藻場構成種16種と共に食用紅藻9種も用い,様々な水温,光条件における純光合成速度や光量子収率(Fv/Fm),電子伝達速度活性(rETR)を測定した。その結果,分布南限の個体群では寿命の短命化や繁茂期間の短縮などが顕著に見られ,高水温の環境が各種の繁茂に影響を与えていると推察された。多くの種において,純光合成速度やFv/Fm,rETRは28℃以上で低下し,最高30℃に達する生育地の夏季水温がこれ以上増加すると,群落の生残に著しい影響が出る可能性が示唆された。