著者
久保 雅義 バーテル フォルカー
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.47-58, 1992

船型の増大に伴い,ターミナルは水深の大きな沖合いに建設されている。その結果,船は大きな波を受け,この時の船体動揺が安全荷役や安全係留に影響を与えている。そこで船体動揺を抑え,係留施設の最も安全な利用のあり方を検討することが重要となる。係留船の運動や係留索力のシミュレーションを行う方法としては数値計算による方法と水理実験による方法とがあるが本研究では水理実験により船体運動低減化の方法について議論を行っている。得られた結果を要約すれば次のようになる。(1)サブハーモニック波による長周期運動はサージとスウェーで卓越し,一方ヒーブ,ロールそしてピッチは一次の波成分により引き起こされている。ヨーは長周期と短周期の両方で応答する。(2)サージとヨーの長い固有周期は堅い係留索(ティルロープ付きワイヤー)を用いることによりかなり容易に変えることが出来る。もしサージとヨーの固有周期を一次の波とサブハーモニック波の卓越周波数の谷間に来るように設定すれば,長周期船体運動はかなり低減することができる。(3)長周期船体運動を低減するための第1の方法として固有周期の制御が試みられるべきである。第2の方法としてダッシュポット・システムが有効である。(4)係留索とフェンダーの係留力の非対称性のためにスウェーはサブハーモニック運動を起こす。係留索のバネ定数を堅くすることは非対称性の程度を減少させ,その結果としてスウェーを減少させる。(5)係留索のバネ定数を変えることによって,ロール,ピッチそしてヨーの短い固有周期を変えることは難しい。この場合にはダッシュポット係留索が船体運動の低減に有効である。