著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11204, (Released:2016-08-25)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
渡邊 貴博 高林 知也 渡部 貴也 久保 雅義
出版者
日本バイオメカニクス学会
雑誌
バイオメカニクス研究 (ISSN:13431706)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.52-61, 2022 (Released:2022-09-08)
参考文献数
29

To prevent chronic ankle instability (CAI) and understand why outcomes vary among patients with a lateral ankle sprain, it is important to examine the differences in movement patterns between copers without recurrent ankle sprain and those who develop CAI. The differences in coordination between both groups are unclear, even though abnormal movements of the rearfoot may affect the forefoot through coupling. Therefore, the purpose of this study was to investigate the coordination between the rearfoot and forefoot of CAI, coper groups. Twelve individuals with CAI, 12 copers, and 12 controls ran on a treadmill at a fixed speed of 2.5 m/s. Kinematic data of the rearfoot and forefoot were measured using a three-dimensional motion analysis system. The coupling angle between the rearfoot and forefoot was calculated using the modified vector coding technique and was classified into four coordination patterns. During early stance, the coper group showed a significantly greater proportion of anti-phase with distal dominancy than the CAI group (p<0.05), and in-phase with distal dominancy approached to decrease than the CAI group (p=0.052). During midstance, the CAI group approached to increase proportion of anti-phase with distal dominancy than the control group (p=0.053). During late stance, the coper group showed a significantly decreased proportion of anti-phase with distal dominancy than the control group (p<0.05). This study may provide in-depth knowledge of motor-behavioral characteristics of coper and CAI.
著者
安部 公輔 東森 信就 久保 雅義 藤原 宏志 磯 祐介
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.15-26, 2014

Courant-Friedrichs-Lewy条件(CFL条件)は双曲型偏微分方程式の差分近似の解析において,最も重要な条件の1つである.この条件は差分スキームの安定性と関連して論じられることが多いが,本来は差分解の収束に対する必要条件である.本論文においてはCFL条件の本来の意味を再確認し,この条件下においても計算機から出力される数値解は必ずしも"安定"ではないことを具体例を通して示すと伴に,丸め誤差の多様な挙動についても言及する.
著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.404-411, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
高林 知也 江玉 睦明 横山 絵里花 徳永 由太 久保 雅義
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.67-73, 2016 (Released:2017-08-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

ウィンドラス機構 (WM) とは歩行時の蹴り出し時の推進力を生み出す足部機能のひとつであり, 効率的な歩行を実現するために重要な役割を担っている. しかし, 走行におけるWMはいまだ明らかとなっていない. 本研究は, 走行と歩行の動作様式の違いがWMにおよぼす影響を検証した. 対象は健常成人男性9名とし, 課題動作はトレッドミル上での走行と歩行とした. 解析項目として, WMの指標である内側縦アーチ角度と母趾背屈角度を立脚期で算出した. 走行と歩行で内側縦アーチ角度最小値は変化がみられなかったが (157.4±6.0°, 156.9±4.9°), 走行は歩行と比較して母趾背屈角度ピーク値が有意に低値を示した (32.9±7.3°, 39.9±9.0°; p<0.05). 本研究結果より, 走行時のWMの役割は限局的である可能性が示唆された.
著者
中村 敏 久保 雅義
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第69回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.110, 2022 (Released:2022-08-30)

第3セクターのいすみ鉄道は、乗客、沿線地域の人々、行政などステークホルダーの価値を高めることを使命としています。観光客誘致のために、沿線住民、行政、ステークホルダーの価値を高めることを使命としています。地域の魅力を豊かな価値に変え、提供することにより、公共交通事業から公共交流事業へ転換しています。例えば、地元の支援者に菜種の種を配り、春に花が咲くように種を蒔いたり、線路に飾り付けをしたりしています。これは「菜の花が咲く鉄道」として全国に知られ、多くの鉄道ファンや観光客を集めています。本稿ではこれらの取り組みについて調査しました。
著者
徳永 由太 高林 知也 稲井 卓真 中村 絵美 神田 賢 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-106_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】膝関節周囲の悪性腫瘍による大腿四頭筋の広範囲切除によって膝関節伸展筋力は大幅に低下し,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作に影響を及ぼすことが報告されている.一般的には,大腿四頭筋が膝関節伸展作用を発揮すると考えられているが,一部の先行研究ではハムストリングス(HAM)が膝関節伸展作用を発揮する可能性が提示されている.しかし,どのような姿勢でHAMが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていない.そこで本研究は,数理モデルを用いてHAMが膝関節伸展作用を発揮できる姿勢を明らかすることを目的とした. 【方法】身長1.8 m,体重80 kgの対象者を仮定し,体幹,大腿,下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築した. HAMの膝関節屈曲および股関節伸展モーメントアーム(MA)はOpenSimのGait2392モデルで報告されており,HAMの筋張力を決定すれば,HAMによる膝関節屈曲および股関節伸展モーメントは一意に決定できる.本研究では10Nmの膝関節屈曲モーメントが発揮されるようにHAMの筋張力を設定した.膝関節を屈曲0度~90度,股関節を伸展30度~屈曲90度の範囲内で変位させ,順動力学シミュレーションを実施した.なお,純粋なHAMの作用を確認するため重力の影響がない姿勢を仮定した.HAM機能の判定には,シミュレーション開始時と終了時の膝関節屈曲角度の差を用いた.先行研究において,HAMが膝関節伸展作用を発揮するためには,HAMの股関節伸展MAが膝関節屈曲MAに比較して大きい必要があると報告されている.そのため,股関節伸展MAを膝関節屈曲MAで除した値(MA比)も算出した.上記の解析はScilab 6.0.0によって実施した. 【結果】HAMは膝関節屈曲7~0度かつ股関節屈曲2~62度(条件1),膝関節屈曲44~90度かつ股関節伸展30~屈曲50度(条件2),の2つの条件下で膝関節伸展作用を発揮した.条件1では膝関節角度が小さいほど,条件2では膝関節屈曲角度が大きいほど膝関節伸展作用が強くなる傾向にあった.また,MA比が大きい場合でも,HAMが膝関節伸展作用を発揮しないこともあった. 【考察】本研究の結果より,HAMの膝関節伸展作用の発揮はMA比の大小だけでは説明できないことが明らかとなった.先行研究において,筋の力学的作用はリンクシステムの姿勢により変化することが報告されている.本研究においても,姿勢の影響によりHAMの力学的な作用が修飾されている可能性が考えられた. 【結論】本研究は2つの条件下においてHAMが膝関節伸展作用を発揮する可能性を提示した.この結果から考えると,条件1・2におけるHAMの膝関節伸展作用をうまく活用することが出来れば,大腿四頭筋の機能不全を有する者であっても,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作を円滑に遂行できる可能性が考えられた. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は数理モデルを用いた順動力学シミュレーションによる検証のため,倫理的配慮および説明と同意に該当する内容は含んでない.数理モデルに必要なパラメータは先行研究で報告されたものや既存のモデルを参照しているため,個人を特定する内容は含まれていない.
著者
神田 賢 北村 拓也 佐藤 成登志 古西 勇 鈴木 祐介 渡辺 慶 久保 雅義
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.483-487, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
25

〔目的〕若年女性の本態性慢性肩こり有訴が頸部に影響を及ぼす因子を比較検討した.〔対象と方法〕若年女性40名(有訴群20名,無有訴群20名,平均年齢21.4 ± 0.7歳)を対象に,頸部屈伸筋群持久力および最大筋力,頸部機能不全度(NDI)を評価した.〔結果〕肩こり有訴群は無有訴群と比較して,頸部屈伸筋群持久力時間において有意に低い値を示したが,屈伸筋群最大筋力においては,有意な差を認めなかった.頸部機能不全度では,有訴群が無有訴群と比較して有意に高い値を示した.〔結語〕若年女性においては,本態性慢性肩こり有訴は頸部屈伸筋群持久力に影響を及ぼす因子となる可能性が示唆された.また,本態性慢性肩こり有訴は,頸部機能にも影響を与える可能性が示唆された.
著者
市原 増夫 久保 雅義
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.H12-H12, 2010

近年、地方鉄道は経営環境の悪化から存続・廃線の危機に瀕しており、各社とも生き残りを賭けて様々な取組みを行っている。特に観光面では独自性のある一芸を打ち出し、集客を図ろうとしている。その中でもネコの駅長というキャラクターや特徴的な車両デザインによるユニークな取組みと、官民一体の積極的な活動で地方鉄道活性化の成功例とされているのが、和歌山電鐵貴志川線である。本研究では、同線の観光目的の利用者の増加の要因を探ることを目的とした。
著者
笹 健児 久保 雅義 永井 紀彦 米山 治男 白石 悟 水井 真治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1291-1295, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

外洋性港湾に船舶が入出港するときの安全性について, 前報では大型フェリーが着離岸するときにRollによって作業困難となる状況を定量化した. 本研究では, 港外から港内に至る入出港の全局面で発生する船体動揺を連続的に再現できる数値解析手法の構築を行った結果, 沖合観測波形, 港湾・船型データ, 操船データをもとに着離岸局面を含めた入出港時の船体動揺を実用上十分な精度で再現できることを検証した. さらに着離岸時の作業困難度を定量的に評価できる「着離岸困難度関数」を新たに定義しその有効性を検討した. さらに海域, 港湾, 船型が異なるケースにおいても船体動揺の現地観測を実施し, 入出港の困難さを支配する諸要因について考察した.
著者
久保 雅義 中村 敏
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第69回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.108, 2022 (Released:2022-08-30)

観光急行「雪月花」は、赤い外観と大きな窓が屋根迄伸びた外観をもち、ミシュランシェフの監修のもと地元の食材を使った上質な食事サービスを提供し、山側と海側の風景を車窓を通して変化を楽しむオペレーションサービスを提供する優れた観光車両です。感染症の厳しい条件にも関わらず乗客数を増やすことができました。鉄道を愛する真の鉄道員の想いや努力の賜物であり、お客様のニーズをしっかりと捉え、これは鉄道を観光資源と捉え地域に貢献することに成功しています。
著者
稲井 卓真 高林 知也 江玉 睦明 久保 雅義
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-32, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
53

変形性股関節症は股関節痛に加え,関節可動域・下肢筋力・日常生活動作能力・生活の質の低下を伴う代表的な整形外科疾患である。しかしながら,変形性股関節症の進行を遅延させるエビデンスは十分には確立されていない。我々は,動作中の股関節の負荷の指標として股関節モーメントインパルスに着目し,歩行中の股関節内・外転モーメントインパルスと立ち上がり動作中の股関節伸展モーメントインパルスを検討した。歩行に関して,対側杖の使用により股関節内・外転モーメントインパルスが減少すること,および歩行速度の低下に伴い股関節内・外転モーメントインパルスが増加することを明らかにした。また,立ち上がり動作に関して,立ち上がり時間の減少に伴い股関節伸展モーメントインパルスが減少することを明らかにした。我々の知見は,股関節内・外転モーメントインパルスが低い(または高い)歩行パターン,および股関節伸展モーメントインパルスが低い(または高い)立ち上がり動作パターンを理解するために役立つと考える。さらに,我々の知見は変形性股関節症の進行を遅延させるために将来役立つ可能性があると考えられる。
著者
江玉 睦明 久保 雅義 大西 秀明 稲井 卓真 高林 知也 横山 絵里花 渡邉 博史 梨本 智史 影山 幾男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0563, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】アキレス腱(AT)障害の発生メカニズムとしては,これまで踵骨の過回内による「whipping action(ムチ打ち)」が要因であると考えられてきた。しかし,近年では,踵骨の回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として重要視されてきている。この原因としては,ATの捻れ構造が関与している可能性が示唆されていが,ATの捻れの程度の違いを考慮して検討した報告はない。従って,本研究は,踵骨を回内・回外方向に動かした際にATを構成する各腱線維束に加わる伸張度(%)を捻れのタイプ別に検討することを目的とした。【方法】対象は,我々が先行研究(Edama,2014)で分類したATの3つの捻れのタイプ(I:軽度,II:中等度,III:重度の捻れ)を1側ずつ(日本人遺体3側,全て男性,平均年齢:83±18歳)使用した。方法は,下腿部から踵骨の一部と共に下腿三頭筋を採取し,腓腹筋の筋腹が付着するAT線維束とヒラメ筋の筋腹が付着するAT線維束(以下,Sol)を分離し,腓腹筋内側頭が付着するAT線維束(以下,MG)と外側頭の筋腹が付着するAT線維束(以下,LG)とに分離した。そして,各腱線維束の踵骨付着部の配列を分析して3つの捻れのタイプに分類し,各線維束を3-4mm程度にまで細かく分離を行った(MG:4~9線維,LG:3~9線維,Sol:10~14線維)。次に,下腿三頭筋を台上に動かないように十分に固定し,Microscribe装置(G2X-SYS,Revware社)を使用して,各腱線維の筋腱移行部と踵骨隆起付着部の2点,踵骨隆起の外側の4点をデジタイズして3次元構築した。最後に,任意に規定した踵骨隆起の回転中心を基準に作成した絶対座標系上で踵骨を回内(20°)・回外(20°)方向に動かした際の各腱線維の伸張度(%)をシミュレーションして算出した。解析には,SCILAB-5.5.0を使用した。統計学的検討は,Microscribe装置測定の検者内信頼性については,級内相関係数(ICC;1,1)を用いて行った。【結果】級内相関係数(ICC;1,1)は,0.98であり高い信頼性・再現性が確認できた。タイプ毎の伸張度(%)は,タイプIでは,回内(MG:-1.6±0.9%,LG:-2.2±0.2%,Sol:1.7±3.4%),回外(MG:1.3±0.7%,LG:2.0±0.3%,Sol:-1.4±3.3%),タイプIIでは,回内(MG:-1.2±0.7%,LG:-0.4±0.6%,Sol:2.4±1.4%),回外(MG:0.8±0.7%,LG:0.4±0.5%,Sol:-3.2±1.5%),タイプIIIでは回内(MG:-1.7±0.4%,LG:-0.4±1.4%,Sol:3.7±6.0%),回外(MG:1.3±0.4%,LG:0.4±1.3%,Sol:-5.4±6.2%)であった。【考察】AT障害の発生メカニズムとして,踵骨の回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として報告されている。また,好発部位は,踵骨隆起から近位2-6cmであり,外側よりも内側に多いことが報告されている。今回,踵骨を回内すると3つの捻れのタイプ全てにおいて,MG・LGは短縮し,Solは伸張された。特にタイプIII(重度の捻れ)では,回内時のSolの伸張度が他のタイプに比べて最も大きく,更にSolを構成する各腱線維の伸張度のばらつきが多い結果であった。従って,タイプIII(重度の捻れ)では,踵骨回内時には,ATを構成するMG,LG,Solの伸張度が異なるだけでなく,他のタイプに比べてSolの伸張度が大きく,更にSolを構成する各腱線維の伸張度も異なるため,AT障害の発生リスクが高まる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】AT障害は,重症化するケースは少ないが再発率が高く,管理の難しい疾患の一つとされている。近年,有効な治療法はいくつか報告されているが,予防法に関しては有効なものが存在していない。その原因として,発生メカニズムが十分に解明されていないことが懸念されている。本研究結果は,AT障害の発生メカニズムの解明に繋がり,有効な予防法や治療法の考案,更には捻れ構造の機能解明に繋がると考える。
著者
濱口 萌子 久保 雅義
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

平成25年度より、文部科学省は「地(知)の拠点整備事業」(以下、COC事業)を実施している。地域の課題と大学の資源の効果的なマッチングによる地域の課題解決策の立案・実施を目的としている。COC事業は「産学連携」の取り組みのひとつであるが、大学発プロダクトアウト型商品開発・事業創出は大きな問題を抱えている。大学との連携企業や地方公共団体は、大学からの成果物を継続的な経営資源として捉えている。一方、消費者生活者視線の販売を意識した開発等がなされないまま市場導入されニーズとのギャップに驚かされることも珍しくないと聞く。本研究は、「藤布の里」産品プロジェクトであり、大学側が自然の藤の花から酵母や乳酸菌等を取り出し、それらを用いて京丹後市の多数の製造業ともに商品を開発した。しかし市場に臨むと話題性はあるものの支持はされず、「モノづくりと販売を分離して考えてはいけない」ことや市場の消費者や生活者の検証やその後の展開までも考えることが改めて必要ということが分かった。
著者
徳永 由太 高林 知也 稲井 卓真 中村 絵美 神田 賢 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.I-106_2-I-106_2, 2019

<p>【はじめに】膝関節周囲の悪性腫瘍による大腿四頭筋の広範囲切除によって膝関節伸展筋力は大幅に低下し,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作に影響を及ぼすことが報告されている.一般的には,大腿四頭筋が膝関節伸展作用を発揮すると考えられているが,一部の先行研究ではハムストリングス(HAM)が膝関節伸展作用を発揮する可能性が提示されている.しかし,どのような姿勢でHAMが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていない.そこで本研究は,数理モデルを用いてHAMが膝関節伸展作用を発揮できる姿勢を明らかすることを目的とした.</p><p> </p><p>【方法】身長1.8 m,体重80 kgの対象者を仮定し,体幹,大腿,下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築した. HAMの膝関節屈曲および股関節伸展モーメントアーム(MA)はOpenSimのGait2392モデルで報告されており,HAMの筋張力を決定すれば,HAMによる膝関節屈曲および股関節伸展モーメントは一意に決定できる.本研究では10Nmの膝関節屈曲モーメントが発揮されるようにHAMの筋張力を設定した.膝関節を屈曲0度~90度,股関節を伸展30度~屈曲90度の範囲内で変位させ,順動力学シミュレーションを実施した.なお,純粋なHAMの作用を確認するため重力の影響がない姿勢を仮定した.HAM機能の判定には,シミュレーション開始時と終了時の膝関節屈曲角度の差を用いた.先行研究において,HAMが膝関節伸展作用を発揮するためには,HAMの股関節伸展MAが膝関節屈曲MAに比較して大きい必要があると報告されている.そのため,股関節伸展MAを膝関節屈曲MAで除した値(MA比)も算出した.上記の解析はScilab 6.0.0によって実施した.</p><p> </p><p>【結果】HAMは膝関節屈曲7~0度かつ股関節屈曲2~62度(条件1),膝関節屈曲44~90度かつ股関節伸展30~屈曲50度(条件2),の2つの条件下で膝関節伸展作用を発揮した.条件1では膝関節角度が小さいほど,条件2では膝関節屈曲角度が大きいほど膝関節伸展作用が強くなる傾向にあった.また,MA比が大きい場合でも,HAMが膝関節伸展作用を発揮しないこともあった.</p><p> </p><p>【考察】本研究の結果より,HAMの膝関節伸展作用の発揮はMA比の大小だけでは説明できないことが明らかとなった.先行研究において,筋の力学的作用はリンクシステムの姿勢により変化することが報告されている.本研究においても,姿勢の影響によりHAMの力学的な作用が修飾されている可能性が考えられた.</p><p> </p><p>【結論】本研究は2つの条件下においてHAMが膝関節伸展作用を発揮する可能性を提示した.この結果から考えると,条件1・2におけるHAMの膝関節伸展作用をうまく活用することが出来れば,大腿四頭筋の機能不全を有する者であっても,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作を円滑に遂行できる可能性が考えられた.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は数理モデルを用いた順動力学シミュレーションによる検証のため,倫理的配慮および説明と同意に該当する内容は含んでない.数理モデルに必要なパラメータは先行研究で報告されたものや既存のモデルを参照しているため,個人を特定する内容は含まれていない.</p>
著者
久保 雅義 バーテル フォルカー
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.47-58, 1992

船型の増大に伴い,ターミナルは水深の大きな沖合いに建設されている。その結果,船は大きな波を受け,この時の船体動揺が安全荷役や安全係留に影響を与えている。そこで船体動揺を抑え,係留施設の最も安全な利用のあり方を検討することが重要となる。係留船の運動や係留索力のシミュレーションを行う方法としては数値計算による方法と水理実験による方法とがあるが本研究では水理実験により船体運動低減化の方法について議論を行っている。得られた結果を要約すれば次のようになる。(1)サブハーモニック波による長周期運動はサージとスウェーで卓越し,一方ヒーブ,ロールそしてピッチは一次の波成分により引き起こされている。ヨーは長周期と短周期の両方で応答する。(2)サージとヨーの長い固有周期は堅い係留索(ティルロープ付きワイヤー)を用いることによりかなり容易に変えることが出来る。もしサージとヨーの固有周期を一次の波とサブハーモニック波の卓越周波数の谷間に来るように設定すれば,長周期船体運動はかなり低減することができる。(3)長周期船体運動を低減するための第1の方法として固有周期の制御が試みられるべきである。第2の方法としてダッシュポット・システムが有効である。(4)係留索とフェンダーの係留力の非対称性のためにスウェーはサブハーモニック運動を起こす。係留索のバネ定数を堅くすることは非対称性の程度を減少させ,その結果としてスウェーを減少させる。(5)係留索のバネ定数を変えることによって,ロール,ピッチそしてヨーの短い固有周期を変えることは難しい。この場合にはダッシュポット係留索が船体運動の低減に有効である。
著者
木暮 洸一 川越 誠 桜井 進一 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1388, 2012

【はじめに、目的】 投球動作の中で肩・肘関節に疼痛を訴えることの多い相はLate cocking期以降とされており,その動作はそれ以前の動作の影響を受ける.先行研究ではLate cocking期以降に加わる肩・肘関節へのストレスの大きさに影響を及ぼす要因として,肩・肘関節角度などが挙げられている.さらに,投球動作は下肢からの連動動作であるため,上肢だけではなく下肢にも注目する必要がある.下肢の中でも指導者や野球の指導書の多くがよく指摘するリードレッグ(前方に踏み出す足)の接地位置は投球におけるコントロールに強く影響を及ぼすため,接地位置のズレに気がつかないままの投球の継続は,コントロールを意識しすぎるが故に手投げとなることが多いとされている.そこで,本研究は野球の投球動作においてリードレッグの接地位置の違いが,肩の負荷および上肢への運動伝達に重要な体幹回旋角度にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は,本研究に同意の得られた野球経験のある男性10名(平均20.4±0.5歳)とした.課題動作はリードレッグの接地位置をスタンスレッグの踵からホームベースへ引いた直線上に接地するストレートステップ(以下SS位),その線より3塁側に接地するクロスステップ(以下CS位),1塁側に接地するオープンステップ(以下OS位)とする3つの肢位での全力投球とし,各課題それぞれ3球ずつ行い,その動作を三次元動作解析装置(VICON Mx,Oxford Metrics社製)およびスピードガン(Bushnell社)で計測し解析した.サンプリング周期は250Hzで,身体の各部位に38個の反射マーカーを貼付した.解析対象としては,各課題間で球速の差を最小限にするため,球速が近い値のデータを選択し,リードレッグ接地時(以下FP)・肩関節最大外旋時(以下MER)・ボールリリース時(以下BR)の関節モーメントおよび関節角度(オイラー角を用いて表現)を算出した.統計処理には, 3条件間での比較に一元配置分散分析を用い,その後の2条件間の比較に多重比較検定のTukey-Kramer法を用いた(有意水準5 %).なお,肩関節の負荷については,肩関節モーメントと肩関節角度・体幹回旋角度を求め,それらから推定するものとした.【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対しては,研究内容と研究で起こりうる危険因子について口頭及び書面を用いて十分に説明を行い,同意を得た.【結果】 肩関節モーメントでは,MER時のSS位の内旋モーメントがCS位に比べ有意に高い値を示した(p<0.05).その他の肩関節モーメントでは有意な差は見られなかった.MER時の肩関節外旋角度は,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に高い値を示した(p<0.01).MER時の肩関節外転角度は,CS位がSS位・OS位に比べ有意に低い値を示し(p<0.05,p<0.01),SS位はOS位に比べ有意に低い値を示した(p<0.01).BR時の肩関節外転角度は,CS位がSS位・OS位に比べ有意に低い値を示した(p<0.05,p<0.01).肩関節水平内転角度は,MER時においてCS位がSS位と比較し有意に低く(p<0.01),BR時においてCS位がOS位と比較し有意に高い値を示した(p<0.01).FP時の体幹回旋角度では,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に低い値を示した(p<0.01).BR時では,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に高い値を示した(p<0.01).【考察】 算出した肩関節モーメントは,関節角度に比べデータの標準偏差が大きく,MER時のSS位・CS位間の内旋モーメントのみに有意な差が認められた.関節角度では,CS位が他の2条件に比べ有意に肩関節最大外旋角度が大きく,肩関節外転角度が小さくなった.また,リードレッグ接地時の体幹回旋角度でもCS位は他の条件に比べ小さい値となった.肩関節最大外旋角度が大きく,肩関節外転角度が小さい肘下がりでの投球動作はいずれも肩関節への負荷が増大するとされている.さらに,リードレッグ接地時の体幹回旋角度の不足は体幹と上肢の運動伝達を低下させ,代償的に肩にかかる負荷を増大させることから,CS位では肩の負荷が増大していると考えられる.以上のことから,3条件の中で一番肩関節への負荷が大きいのはCS位での投球動作ということが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 リードレッグ接地位置を修正することは,高速運動となるLate cocking期以降の動作を修正するよりも比較的容易であり,投球動作の指導上,有用なものになると考えられる.