著者
リツ テイ
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-14, 2016-12-15

哲学史には多くの善と美の緊密な観点がある。それらは異なる前提をおい ているにもかかわらず,どの観点においても善と美は緊密な関係があるとい う結論が得られる。 当時の理論の核を構成した概念の対象は,現代ではいささか単純に見える けれども説得力がある理由の影響を受ける。われわれは理念と神の存在を信 じず,また理性自身の強さがすべての道徳と審美に干渉できるということを 信じない。現代では,形而上学的な概念が含まれた理論は「独断論」として 否定される。以前の重要な概念の連結作用の欠如がある場合に,善と美の関 係をどう処理すればよいかは熟考に値する問題である。善と美が密接に繫 がっているという観点は認識方面の錯覚や他の形で説明できるのか。あるい は,善と美は別の二つの概念であるのか,それともその中身に密接な関係が 含まれているのか。「独断」的に作られた統括的な概念が失敗に終わっている のなら,われわれはこの問題に新たな視野と研究方法を求めなければならな い。そこで,以下では主に認識論(主にピアジェの認識論の主張について) と言語哲学の視点から,善と美との間に不可分の関係があるという立場を論 証する。