著者
グリフィス R.F. レーサム J.
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.416-422, 1972
被引用文献数
20

半径R電荷Qをもった球形の水滴が,約4.5m/secの速度で電極間を落下するとき,その水滴からコロナ放電を起こすに要する電場の強さ瓦と気圧との関係を測定した.気圧1,000mbで正の垂直電場では瓦は9.0&plusmn;05kv/cmであり,気圧500 mbではこれが5.5&plusmn;1.0kv/cmに減少した.電場が水平である場合には,気圧1,000,500mbで瓦はそれぞれ6.3&plusmn;0.3,6.9&plusmn;0.3 kv/cmであった.<br>Dawson(1969)とRichards and Dawson(1971)の研究を主な論拠として,これらの結果を説明しうる方程式をたてたが,この式から予想されることは,大粒の雨を含む雷雲中に存在しうる電場の最大値は,気圧には無関係であって,ほぼ12/R0&bull;3e.s.u.あたりであるということである.これは500kV/mに相当する.ここで,もしこのような強さの電場が雷雲の内部に生ずると,分裂しつつある水滴から生ずるコロナ放電が雷放電のトリガーとなるであろうと考えられる.
著者
アバス M.A. レーサム J.
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.65-74, 1969
被引用文献数
28

温度が0&deg;Cから-45&deg;Cまでかえられる箱の中に半径0.106cm~0.134cmの過冷却水滴を絶縁してつるし,その凍結状態を調べた.<br>その結果,もし水滴の表面が電気的または力学的な力でふん砕され,こわれた部分から液体のフィラメントが発生する場合には,0&deg;C~-22&deg;Cの温度範囲で,一定の時間間隔の中で水滴が凍結する割合は,かなり大きいことがわかった.<br>たとえば5分間の実験間隔で,水滴の凍結率は,もし水滴が電場でこわされる時には,-50&deg;C,-10&deg;C,-15&deg;C,-20&deg;Cで夫々0.44,0.62,0.75,0.88であり,もし同じ温度で,水滴の表面に絶縁されている糸又は導線をつっこんだ時には,夫々0.25fO.44,0.50,0.58となるが,もし水滴の表面が,この時間中にこおされたり乱されたりされずに,その破壊点以下のところに相当する強電場の下にそっとおかれるか,水滴をつるしたものを強くふるような場合には,夫々0,0.02,0.07,0.18に留まっていた.<br>この観測はPrupPacher(1963 a, b)によってなされた電場内での凍結についての規準(すなわち,三重相の境界の運動といつも関連しているとするもの)と全く一致しない.この観測はむしろ:Loeb(1963)の示嵯するものと-致している.それは電場内での凍結の最も本質的条件は水滴の.__.部分が細いフィラメントに,ひっばられることによるというのであるが,:Loeb et aL(1938)は既にフィラメントはすぐれた凍結核として働く分子凝集物を含むものであると言っている.これらの結果は,凍結が破壊の起った場所からはじまっているということを示す高速度写真によって裏づけされている.破壊の過程の間に,液体より放出される気泡の凍結確率に対する影響は二次的であることが示される.<br>自然の雲の中でなされた観測によると,電場内での凍結については,はっきりした証據がないとはいえ,かなりの量の間接的な研究からしても,過冷却の雲の中の気温の非常に高いところに氷粒が存在しているという事実のうらがきとなる.そして自然の中で観測された凍結粒の特性は電場内での凍結から期待されるものとよく一致している.