著者
ヴィスーティヴィセット ワサカ 門林 雄基 山口 英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1215-1226, 2002-08-01
被引用文献数
1

IPマルチキャストは,大人数グループに同一データを効率良く配送するための機構として提案された.しかし,IPマルチキャストはグループの増加に伴いルータ負荷が大きくなるため,少人数グループが多数存在する通信に適していない.本論文では,少人数グループ通信を対象とした新しいマルチキャスト経路制御プロトコルSender Initiated Multicast(SIM)を提案する.SIMでは,受信者アドレスリストをパケットに添付し,ユニキャスト経路情報に基づくパケット転送を行う.また,SIMはルータ上にSIM Forwarding Information Base(FIB)として転送情報を保持するPresetモードを備えているため,全パケットにアドレスリストを添付する必要がない.Presetモードでは,送信者アドレスとグループのマルチキャストアドレスの組を転送情報検索のハッシュキーとして利用することで,効率の良い経路表検索を実現している.また,自動的に分岐点ルータ間を結ぶSIMトンネル機構により,転送情報の保持と全受信者に対する経路表検索を行うルータ数を減らし,パケット転送処理の高速化を図っている.本論文では,これらの機構をもつSIMは少人数グループが多数存在する通信において有効であることを示す.