著者
阪田 史郎 青木 秀憲 間瀬 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.811-823, 2006-06-01
参考文献数
56
被引用文献数
54

インターネットや携帯電話網などの従来のネットワークにはない無線マルチホップの新しい形態で通信を行うアドホックネットワークは,ユビキタスシステムにおける重要なネットワークとして,特に1990年代末以降活発な研究がなされてきた.2003〜2004年にはユニキャストルーチングについて,IETF(Internet Engineering Task Force)のMANET(Mobile Ad hoc NETwork) WGにおいて三つのプロトコルがExperimental RFCになり,現在Standard TrackのRFCに向けた作業が進展している.また,大規模なテストベッドの構築が進展し,実用化への期待が高まっている.本論文では,アドホックネットワークについて,これまでの研究,標準化の動向を述べた後,MAC層でのアドホック(無線マルチホップ)ネットワークの実現技術として,2004年5月に検討が開始されたIEEE802.11sにおける無線LANメッシュネットワークに関する標準化状況,研究内容,アドホックネットワークの今後の進展を展望する.
著者
畝田 道雄 外園 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1120-1129, 2002-07-01
被引用文献数
10

飛しょう体発射試験において,飛しょう体や標的機等の経路計測及び解析を精確に行うための精密計測レーダとして,「標定用レーダ」を研究開発している.本レーダはX帯アクティブフェーズドアレーアンテナによって構成されており,基本的測角方式にはアンテナ開口を4分割するモノパルス方式を採用している.また,MUSIC等の高分解能測角処理も可能となるように,本レーダには同一アンテナ開口面上に等価8チャネル円形配列アレーアンテナが設けられている.一方,チャネル間に振幅・位相偏差がある場合,高分解能測角処理性能は低下するため,本レーダは受信器のチャネル間偏差を補償できるハードウェアキャリブレーション機能を有している.ところが,ハードウェアキャリブレーション機能を具備するためには複雑な回路構成が必要となることから,将来的に本機能を必要としないソフトウェアキャリブレーション法が確立できれば,ハードウェア面とともにコスト面からも有利であると考えられる.本論文では,初めに本レーダにおける等価円形配列アレーアンテナの概要を述べるとともに,ハードウェアキャリブレーション機能の使用,未使用の双方の状態で実際に取得したレーダ受信信号のMUSIC処理を行い,その際に得られた結果を報告する.加えて,チャネル間振幅・位相偏差のソフトウェアキャリブレーション法として,受信信号に対する振幅・位相偏差補償処理アルゴリズムを用いることで,その有効性を確認した結果を述べる.
著者
安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2082-2091, 2001-12-01
参考文献数
44
被引用文献数
52

GPSは1970年代に米軍により開発が開始され, 1993年に完成した衛星測位システムである.世界中どこでもいつでも実時間の高精度測位が可能となり, それ以来10年足らずの間に, 各種の航法のみならず, 膨大な分野での応用開発が進行中で, 今やこのシステムなしでは, 日常生活もままならぬほどの展開を見せている.一見, オールマイティで今更研究の余地が残されているのかと思われがちであるが, まだ解決すべき多くの課題を抱えている.GPS受信機自体の改良, 広域・狭域補強システムの開発, 屋内から, 上空が制限された市街地に至るシームレスな測位を可能とする擬似衛星技術の開発研究, RTK-GPSの広域化をめざす仮想基準点方式(VRS)の研究と枚挙にいとまがない.本論文ではGPSシステムの概要を示すとともに, GPSにかかわる諸般の技術の展望を述べる.
著者
池田 直美 新藤 浩之 飯出 芳弥 浅井 弘彰 久保山 智司 松田 純夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.108-116, 2005-01-01
被引用文献数
7

民生部品・コンポーネント実証衛星「つばさ」に搭載された民生半導体部品実験装置(Commercial Semiconductor Devices: CSD)は民生用半導体デバイスの宇宙空間における放射線耐性を計測するものであり,将来民生用のデバイスを宇宙で積極的に使っていくための評価手法を確立することを目的としている.約1年半にわたる「つばさ」の軌道上運用期間中,搭載した民生用半導体デバイスについて放射線影響に関する世界的にも貴重なデータを取得し,地上における試験と併せて評価を行った.その結果,シングルイベント効果については,地上試験から得られた予測値と観測結果との間にばらつきが見られた.これは,近年の飛躍的な技術の進歩(デバイスの小型化・大容量化等)に予測モデルが対応しきれなくなりつつある現状を示唆していると考えられる.また,トータルドーズ効果については,ほとんどのデバイスで予測結果と観測結果が比較的よい一致を示したものの,DRAMについては予測よりも放射線耐性が低いという結果が得られた.これは,新たな放射線耐性劣化現象の可能性を示唆している.
著者
内村 圭一 柏木 誠哉 脇阪 信治 有田 秀昶
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2244-2253, 2001-12-01
被引用文献数
6

D-GPS装置及び3軸ジャイロセンサから得られる位置情報と車載カメラから得られる道路画像情報とを統合し, 道路中心点の緯度, 経度及び高度のデータ(3次元データ)を得る3次元道路地図作成法を提案する.画像処理では, 変動テンプレートマッチングにて道路白線を抽出し, 車両座標系と画像座標系の投影変換式を用いた道路形状の認識結果により, 自車両と道路中心点間の位置関係を求める.一方, 自車両位置の3次元データはD-GPS装置と3軸ジャイロセンサにより得る.この際, D-GPS装置が誤ったデータを出力した場合の3軸ジャイロセンサによる補正方法も示している.自車両位置の3次元データが得られたことから, これと画像処理により得られている道路中心点間の位置関係から, 道路中心点の3次元データが求まる.実道路における実験により, 様々な走行状態にもかかわらず, 道路中心点3次元データの再現性を確認し, 提案手法の有効性を示した.
著者
藤野 義之 佐藤 正樹 永井 清仁 平良 真一 尾崎 裕 渡邉 栄司 澤 学 田中 行男 楠田 哲也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.1611-1619, 2008-12-01
被引用文献数
3

ヘリコプターによる撮影は,災害時の情報収集に有効な手段の一つである.しかし,現在は,撮影した被災地映像を地上の車載局や基地局で中継するため通信範囲が限られ,新潟中越地震では,付近に基地局がなく緊急消防援助隊の指導などに生かされなかったといわれている.本論文では,筆者らが開発した,ヘリコプターから災害映像を実時間で直接衛星を経由し対策本部等に伝送するシステムについて論じる.本システムは,(1)MPEG4規格での384kbit/s準動画及び1.5Mbit/s 動画伝送機能,(2)ヘリコプターと対策本部との間の音声及びデータの双方向通信機能,(3)撮影している被災地位置を三次元地図を用いて高精度で特定する機能等を有している.また,これらの通信を可能とするために,(1)高速回転するヘリコプタープロペラのわずかなすき間をねらって電波を送信する技術,(2)ヘリコプターの姿勢が動揺してもアンテナビームを人工衛星方向に高精度で捕そく指向させる技術,(3)通信機器等に異常が発生しても利用衛星に隣接する衛星や地上の無線設備に干渉を与えないための技術等を開発し,実証試験を行ってその有効性を確認したので報告する.
著者
重近 範行 中村 修 村井 純
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1234-1242, 2002-08-01
被引用文献数
2

本論文では,規模や時間的制約,双方向コミュニケーションを考慮した,インターネットを用いたイベントにおける新しいコミュニケーションモデルを提案する.イベントにおけるコミュニケーションでは,会場における場の共有がイベントの成功に特に大きな影響を与える,しかし,テレビ放送や既存のインターネット中継では,場の共有という重要な要素が考慮されていない.本モデルに従って規模や時間的制約に対応でき,場所に依存しない双方向コミュニケーション支援システムGayaを設計・実装した.また,Gayaシステムを用いて,慶應義塾大学環境情報学部の授業・渋谷駅前などで実証実験を行い,本システムの有用性を明らかにした.
著者
小菅 義夫 系 正義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.2397-2406, 2003-11-01
被引用文献数
18

追尾フィルタは,目標位置を観測値として,位置,速度,加速度など限りなく真値に近いものを推定する.その代表例は,3次元空間の追尾を1個の追尾フィルタで実現するカルマンフィルタを使用したものである.また,α-βフィルタは等速直線運動モデル,α-β-γフィルタは等加速度運動モデルを使用した1次元空間用の追尾フィルタである.なお,カルマンフィルタもα-β(-γ)フィルタも線形フィルタの一種である.ここで,α-β(-γ)フィルタでは,初期値算出から十分時間が経過した場合の位置の定常追従誤差の値が既知である.しかし,3次元空間用の追尾フィルタでは定常追従誤差の算出式が報告されていない.本論文では,3次元空間において,目標位置ベクトル及び目標位置ベクトルのn階までの時間微分値からなる目標運動諸元を推定する線形フィルタで構成される追尾フィルタの定常追従誤差の算出式を導出した.なお,目標は位置ベクトルのn+1階の時間微分値が一定で運動すると仮定した.この結果,位置の定常追従誤差は,サンプリング間隔と追尾フィルタの目標位置ベクトルのn階の時間微分値に対するゲイン行列の逆行列の積に比例することがわかった.
著者
中川 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.351-359, 2005-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
57

無線通信といえば3000GHzまでの電波利用と, 赤外線利用のいずれかと思われていた.見える光を利用する可視光通信について述べていきたい.見える光は電波と同じ波の一種なので, 当然ながら, 情報を伝えることができる.ここでは可視光通信の可能性をユビキタス通信システムの一員として論じる.
著者
森村 吉貴 上原 哲太郎 侯 書会 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.1427-1439, 2011-10-01

インターネット上のライブ映像配信,すなわちインターネット放送は数万人のユーザに同時に同じ映像を配信できる同報性と,専門知識や機材がなくとも映像配信を開始できる導入容易性におけるメリットをもつ.筆者らは放送された映像が不正に再配信された場合にそれを追跡可能とする技術が今後重要となると考え,そのようなシステムの実現を目標とする.追跡性の実現に有効な技術に,配信者が映像を暗号化し,視聴者がそれを復号する際に個々人のIDが映像に強制的に電子透かしとして挿入されるJFD(Joint Fingerprinting and Decryption)がある.しかし既存の提案は導入容易性,同報性をともに満たすシステム構成を提示しておらず,また実環境において利用する計算資源や帯域資源と透かし映像の画質の検証が十分でなかった.筆者らは,導入容易性に優れた公開鍵JFD法を採用し,透かしを埋め込む周波数係数の選択及び構成の工夫により数万人程度の同報性を実現するシステムを提示した.また,システムを実装評価し,計算と帯域資源に対する数値評価結果,及び画質に対するPSNRによる客観評価結果が目的に十分適うことを示した.
著者
田島 孝治 安藤 公彦 大島 浩太 寺田 松昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.1084-1097, 2009-07-01
被引用文献数
1

本論文では,我々が開発した情報提示システム「水晶珠」について述べる.水晶珠とは,個人の現在位置と時刻情報から,そのとき,その場所で,その人だけに必要と思われる情報を生成し,携帯端末に自動的に映し出す情報提示システムである.提案システムは,近年注目されているContext-Awareの考え方を利用しており,秒単位で生じる位置情報による膨大な行動履歴の保存と,多種の予測方式や携帯端末固有の環境に柔軟に対応できる必要がある.そこで,個々の履歴を圧縮するのではなく,地域の特性を利用した行動履歴保存方式を提案する.提案方式により,その地域で意味のある点を抽出し,行動履歴の保存に利用することでデータ量を削減する.また,行動の予測はインタフェースのみを定義することにより,多種の予測方式へ適応可能なシステムを実現した.提案システムに実際の行動履歴を入力した検証実験により,行動履歴の保存に必要なデータ量の削減とプロトタイプシステムによる動作を確認した.提案システムの試作により,事前のユーザ登録のみで,情報提供を受けるときには利用者は入力作業を行う必要のない情報提示システムの可能性を示唆した.
著者
西川 博昭 冨安 洋史 青木 一浩 水野 修 末田 欣子 チャウ チーオン 宇津 圭祐 石井 啓之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.1003-1014, 2009-07-01

筆者らは,大規模なインフラ設備を必要とせず,いつでもどこでも情報通信サービスにアクセスできる,アドホックユビキタス通信環境の実現を目指して,データ駆動ネットワーキングシステムの研究開発プロジェクトを推進している.本論文ではまず,アドホックユビキタス通信環境に対する三つの要求条件を示す.第1の要件として,ユビキタス環境におけるコミュニティ情報を活用した目的ノード発見方式の必要性とその実現法を論じ,問合せパケット数の削減効果を示す.続いて,第2の要件である,アドホックネットワークにおける品質保持型情報転送方式として,マルチポイント・ポイント情報転送方式の提案とその実現法を述べ,品質劣化を抑制できることを明らかにする.更に,第3要件として,VLSI試作したデータ駆動ネットワーキングプロセッサCUE-v3について概要を示すとともに,アドホックユビキタス通信環境の各種処理のオフローディング方式を検討し,一次評価のために,上記アドホックユビキタス機能実現に必須な基本機能であるUDP/IPをオフロードし,多重処理性により複数パケットの処理を1パケットのヘッダ処理時間に極小化が可能であることを示す.
著者
中須賀 真一 酒匂 信匡 津田 雄一 永島 隆 船瀬 龍 中村 友哉 永井 将貴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.41-48, 2005-01-01
参考文献数
8
被引用文献数
14

2003年6月30日,東京大学中須賀研究室が開発した超小型衛星CubeSat-XI(1kg,10cm立方)がロシア連邦プレセツクより高度820kmの太陽同期軌道に打ち上げられた.その後,当初の予想を超え1年以上の長期にわたり順調に動作し,バス機器の軌道上実証,画像取得・ダウンリンクなどの実験を行って大きな成果を収めた.この衛星は学生の手作りにより開発された衛星で,その第一の目的は宇宙工学教育であるが,民生品をベースに低コスト・短期に衛星を提供することによる新しい宇宙開発を試行することをその先の目的としている.本論文では,CubeSat-XIの概要と軌道上実証の成果を述べ,その開発経験や成果を踏まえ,宇宙開発の低コスト化・短期開発化を目指した小型・超小型衛星開発のあり方を論じる.
著者
斉藤 春夫 三浦 周 小原 徳昭 岡本 英二 山本 伸一 森川 栄久 小園 晋一 若菜 弘充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.731-740, 2001-04-01

通信放送技術衛星(COMETS)は, 平成10年2月21日に打ち上げられたが, H-IIロケット第2段エンジンの故障により静止トランスファー軌道への投入に失敗した.その後, アポジエンジンによる7回の軌道変更により, 遠地点高度17,711km, 近地点高度473kmの2日9周回の準回帰軌道にのせることに成功し, 1日当り最長90分間の通信実験が行えることになった.平成10年8月末から通信・放送実験が開始され, 平成11年1月に定常運用段階を終了し, 2月からは後期利用段階に移行した.しかし, 残念ながら平成11年8月6日に, 予定された運用期間のほぼ半分でCOMETSの運用は終了した.本論文では, 軌道変更直後に衛星のテレメトリのみを用いて実施された軌道上における移動体衛星通信用機器(MCE)の初期機能確認試験と, その後, 地球局から実際に通波して行われた軌道上機能評価実験の結果ついて述べる.周回化により懸念されていた放射線の影響による特性の劣化はごく一部に限られ, ほとんどのMCE機器が軌道上においてもほぼ良好に機能していることが判明した.
著者
平井 敏郎 鹿野 幸泰 蓮井 暖美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1523-1530, 1999-08
被引用文献数
1

トリクルニッケルカドミウム(Ni/Cd)電池の改良に伴い, 電池劣化が抑制され長寿命化されると寿命評価自体に時間を要することになる. そこで寿命評価の迅速化の検討を行った. JIS規格などで規定されている高温加速試験では, 容量はサイクル数の対数に対して直線的に変化することから, 最初の数サイクルの容量を外挿すれば寿命推定が可能になることが明らかになった. 更に, 容量のサイクル数対数値に対する変化は, トリクル充電の期間によらずほぼ一定となることから, 充電期間を3日に短縮することも可能であることがわかった. 従来, 経 験則として用いられている「10℃半減則」は, 電池の高温特性改良により完全には適用できないことが明らかになったが, 最悪の事態を想定した保証値としてなら有効と判断される.
著者
星合 隆成 小柳 恵一 ビルゲ スクバタール 久保田 稔 柴田 弘 酒井 隆道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.411-424, 2001-03-01
被引用文献数
46

本論文では, 意味情報に基づいて, イベントを目的地まで配送することが可能な意味情報ネットワーク(SION : Semantic Information-Oriented Network)を提案する.SIONを用いることにより, ブローカを介することなく, 情報提供者が, 提供するに相応しいユーザに対してのみ, 自身の情報を直接提案することが可能になる.また, 不特定多数のエンティティのなかから, 対象となるエンティティをスケーラブルかつリアルタイムに探索・発見することが可能になる.更に本論文では, SIONを実現するための要素技術であるイベントルーチング方式, ウェデレーション方式等について示す.また, SIONの効果を明らかにするとともに, SIONのキラーサービスであるコミュニティサービスについて説明する.
著者
松本 好太 橋本 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1549-1551, 2001-08-01
被引用文献数
2

本論文では, 電子レンジのドア部において, 抵抗皮膜をドアガラスに一体形成した場合のシールド効果の検討を, FDTD法を用いて行った. この結果, 面抵抗値の変化に対するシールド効果を定量的に確認するとともに, 実用性を考慮した場合の具体的な指針を解析的に示すことができた.
著者
舟阪 淳一 最所 圭三 福田 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.818-826, 1999-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
4

NetNewsの配送記事量が増加してきており, 1日20Gbytesに達することもある. そのため記事の保存及び配送には大量のディスク及び回線資源が必要となってきている. 一方, 多くのサーバでは読まれている記事が全記事の10%に満たない. 従来のNetNewsシステムは全記事をコピーするので, 90%がむだな配送ということになる. そこで本論文では, 資源の効率的な利用のため下流のサーバをもたない末端サーバをキャッシュシステムに置き換え, 選択的に記事をコピーすることを提案し, NetNewsのアクセスパターンを考慮したいくつかのキャッシングアルゴリズムを提案し, 評価する. ログを用いたシミュレーションの結果, ニュースグループにより選択的にプリフェッチし残りの記事をオンデマンドキャッシュする方法が, キャッシュのヒット率とディスクの使用量のバランスを最も良くすることがわかった.
著者
山本 寛 近藤 喜芳 佐々木 力 阿野 茂浩 山崎 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.1226-1229, 2013-10

本研究では,大規模なイベントの安全確保や宣伝などのために,参加者がもつAndroid端末に向けてIPマルチキャストを利用して様々なコンテンツを配信する新しい情報配信システムを提案する.約40万人が参加する長岡花火祭りにおける提案システムの実証実験では,情報配信地点から250[m]離れた位置に対して音声情報を提供できることを確認した.
著者
村田 健史 上田 裕子 上岡 功治 臼井 英之 岡田 雅樹 大村 善治 松本 紘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1411-1425, 2002-08-01
被引用文献数
7

現在,プラズマ粒子シミュレーションは,プラズマ観測・応用の様々な分野において用いられている.本研究では,既存のコードをもとに,オブジェクト指向開発技法によりプラズマ粒子シミュレーションコードを設計した.設計したモデルは,プラズマ粒子コードの基本的な機能を有するスケルトンモデルである.オブジェクト指向分析設計方法論によるプラズマ粒子コードの設計については,これまで,詳しい報告がなかった.したがって本論文では,本設計をもとに独自のプラズマ粒子コードを設計できるよう,オブジェクトクラスの洗い出しからデザインまでを詳細に説明した.更に,このデザインに基づき,オブジェクト指向プラズマ粒子シミュレーションコードを,C++言語により実装した.実装コードの基本動作及びコードの再利用性を確認し,更に,既存の手続き型言語によるコードとの,処理速度の比較を行った.その結果,実装したオブジェクト指向コードは,Fortranによる既存コードと比較し,最大3倍程度の計算時間を必要とするが,高い再利用性を有することがわかった.