著者
興野 純 一柳 光平
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

太陽系の初期段階では,小天体同士の衝突集積現象が多く生じていたことが知られており,惑星進化を理解するには衝突による高温高圧下における諸性質が重要となる.本課題では,衝撃圧縮下での構造変化過程をその場観察し,衝撃高温高圧下での物質の変化を結晶構造レベルで解明していくことを目指している.本課題では高強度レーザーによって発生させた衝撃圧縮下での構造変化ダイナミクスを観察する実験を進めているが,該当年度は共同研究者と協力して高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PF-ARの衝撃波発生用レーザーの改善を大きく進めた.レーザーの空間プロファイルは発生する衝撃波の空間プロファイルに直接影響するため本実験を行なう上で大変重要となる.該当年度以前はレーザープロファイルが良くなく,衝撃波が分布をもってしまっていた.そのため,構造変化を平均して観察してしまう本手法では,単一現象として解析することが困難であり,衝撃下でのダイナミクスを時間軸に沿って理解することが出来なかった.しかし,上述のレーザーの空間プロファイル改善により,衝撃圧縮から解放まで連続的に現象を追いかけて観察することが出来るようになった.本レーザーを用いて衝撃下時間分解X線回折測定をアルミニウム,ジルコニアセラミックス試料に対して行なった.アルミニウム試料に対する実験からは,結晶格子面の圧縮率の変化,二次元X線回折像の同心円方向への回折強度分布の変化から見積もられる結晶方向の観察を行ない,衝撃下での多結晶体の応答例のデータを得た.ジルコニア試料に対する実験からは破壊過程におけるX線回折測定結果を得ることができ,これまで直接観察されることなく議論されてきた正方晶安定化ジルコニアの変態強化機構を初めて直接観察することに成功した.これらのデータを一つ一つの得ることで,衝撃下での構造ダイナミクスの理解を深められつつある.