著者
李 花子 勝浦 哲夫 岩永 光一 下村 義弘 東 洋邦 一條 隆
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-27, 2008-05

光は,ヒトの急性な生理的反応や覚醒反応を引き起こす。最近,夜間の光反応に対する波長の依存性が報告されたがこれらの研究は,ほとんどメラトニン抑制や位相変位に関するものである。ヒトの昼間の覚醒水準に及ぼす影響を明確に示した研究はまだ少ない。本研究では,脳波と瞳孔径を測定して昼間の覚醒水準と瞳孔の反応に関する波長の効果を検討した。実験は,男子大学生10名について行なった(23±2.9歳)。単波長光条件は,420,458, 500, 550, 610, 670 nmにピークをもつ6つの干渉フィルタを使用して設定した。AAC(α波減衰係数)は, 240, 550, 610, 670nmより458nmの単波長光においてのAAC変化量が高いことが示された。このことから,昼間の458nmの単波長光暴露時の覚醒水準が高いことが示唆される。瞳孔径は,波長と時間経過の有意な交互作用(p=0.0014)が認められた。そこで,時間経過の区間毎に瞳孔径の変化を比較した結果,単波長光条件暴露16分後に,670nm単波長光暴露時の瞳孔径は458, 500, 550, 610nmのより大きくなることが示された。