著者
高橋 昌一 高谷 俊一 一関 一行 畠山 正治 大徳 和之 久我 俊彦 棟方 護 福井 康三 福田 幾夫
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.224-229, 2003-07-15
参考文献数
18
被引用文献数
5

1996年から2002年3月までの約5年間(前期:1998年6月まで,後期:1998年7月以降),39例の腹部大動脈瘤に対してステントグラフト(SG)挿入による治療を行ってきた.そのうち80歳以上の症例は前期3人,後期8人で,感染性動脈瘤を2人認め,また併存症として後期に虚血性心疾患5例,COPD1例,胸部大動脈瘤合併4例などhigh risk症例が含まれていた.前期の3例が外科手術に移行したが,残り36例(92%)がSG留置に成功した.36例中6例にendoleakを認め,5例に腸骨動脈解離(全例ステント留置)を認めた.SG留置に成功しendoleakを認めない症例は,前期50%,後期89%であった.経過観察中に追加治療や手術を受けたのはそれぞれ3例と4例であった.在院死は前期に4例認め,遠隔死亡は3例認めた.全体の生存率は術後3年で82%であった.腹部大動脈瘤に対するSG治療は,high riskな症例に対して有効と考えられ,今後さらに治療成績は向上すると考えられた.