著者
増田 信也 板垣 皓大 神田 桂輔 畠山 正治 長沼 政亮 鈴木 伸章 永谷 公一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.72-76, 2020-03-15 (Released:2020-04-03)
参考文献数
21

症例は55歳男性,自殺企図で左前胸部に包丁が刺さって倒れている患者が発見され救急搬送された.エコーで左血胸と診断され,胸腔ドレナージを行った.CT検査を行ったところ,包丁が左肺を貫通し左下肺静脈に包丁先端が位置している所見であった.心嚢液はなく,人工心肺準備下に左開胸での肺切除と左下肺静脈の損傷があれば修復する方針で,仰臥位として,手術を開始した.大腿動静脈を剥離していたところ,急激な血圧低下をきたした.ただちに人工心肺を確立し,胸骨正中切開を行い,出血部位を観察すると左室側壁長軸方向に5 cm程度の損傷があり,拍動性に出血していた.心室細動下に修復術と左肺上葉舌区部分切除を行った.術後経過は良好で第25病日紹介病院へ転院となった.胸部鋭的損傷の場合,心嚢液貯留がなく,一見安定した血行動態であっても,心血管損傷による血行動態の破綻の可能性も考慮し,人工心肺を準備した上での加療が重要である.
著者
高橋 昌一 高谷 俊一 一関 一行 畠山 正治 大徳 和之 久我 俊彦 棟方 護 福井 康三 福田 幾夫
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.224-229, 2003-07-15
参考文献数
18
被引用文献数
5

1996年から2002年3月までの約5年間(前期:1998年6月まで,後期:1998年7月以降),39例の腹部大動脈瘤に対してステントグラフト(SG)挿入による治療を行ってきた.そのうち80歳以上の症例は前期3人,後期8人で,感染性動脈瘤を2人認め,また併存症として後期に虚血性心疾患5例,COPD1例,胸部大動脈瘤合併4例などhigh risk症例が含まれていた.前期の3例が外科手術に移行したが,残り36例(92%)がSG留置に成功した.36例中6例にendoleakを認め,5例に腸骨動脈解離(全例ステント留置)を認めた.SG留置に成功しendoleakを認めない症例は,前期50%,後期89%であった.経過観察中に追加治療や手術を受けたのはそれぞれ3例と4例であった.在院死は前期に4例認め,遠隔死亡は3例認めた.全体の生存率は術後3年で82%であった.腹部大動脈瘤に対するSG治療は,high riskな症例に対して有効と考えられ,今後さらに治療成績は向上すると考えられた.