著者
七谷 圭
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Synechocystis sp.PCC6803は、比較的環境変化の大きい環境に適応して生育することができる。申請者は、Synechocystisの塩耐性獲得機構に関する研究を進める過程で、塩ストレスによってバイオフィルム形成が誘導されることを見出した。この現象は、バイオフィルム形成によって外部環境から隔離することで菌自身を保護していると推察された。そこで、シアノバクテリアのバイオフィルム生合成の分子メカニズムと塩耐性獲得機構を解明することを目的とした。1.バイオフィルム構成成分の分析、生合成酵素の探索:Synechocystis sp.PCC6803の形成するバイオフィルムを構成する多糖の分析を行った。80%EtOH抽出、アミラーゼ分解、KOH抽出、72%硫酸によるセルロース分解を行った後、硫酸フェノール法により全糖量を定量した。塩ストレス下では、エタノール80%EtOH画分、アミラーゼ画分において糖量が増加した。トリフルオロ酢酸で加水分解した後、産物の中性糖組成分析を行った。その結果、80%EtOH画分、アミラーゼ画分においてグルコース(Glc)が増加し、Glcがバイフィルムが主要な構成成分である可能性が示唆された。2.バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定:バイオフィルム形成は塩ストレスによって誘導されることから、ヒスチジンキナーゼのバイオフィルム形成への関与を推定した。Synechocystis sp.PCC6803は、47のヒスチジンキナーゼを有する。申請者は、ヒスチジンキナーゼ破壊株の塩ストレス下でのバイオフィルム形成能を解析し、塩ストレスを感知しバイオフィルム形成を誘導するヒスチジンキナーゼの同定を試みた。その結果、破壊によりバイオフィルム形成量が増加する株と減少する株が得られ、正と負のレギュレーターの存在が示唆された。