著者
三上 功生
出版者
人間‐生活環境系学会
雑誌
人間‐生活環境系シンポジウム報告集 第43回人間−生活環境系シンポジウム報告集 (ISSN:24348007)
巻号頁・発行日
pp.199-202, 2019 (Released:2021-04-23)
参考文献数
7

著者は過去の人工気候室実験より、重篤な体温調節障害を持つ頸髄損傷者(以下頸損者)の至適温度範囲 を 25±2℃(但し 50%RH、着衣量 0.6clo)と求めた。しかし、室温 22℃での頸損者の体温調節反応は十分に明ら かになっていないため、それを把握することを目的とした人工気候室実験を行い、頸損者の至適温湿度範囲の下 限値について検討を行った。実験では 5 名の頸損者(39.6±9.2 歳、172.0±4.6cm、64.4±6.3kg)を室温 22℃(40, 50, 70%RH、着衣量 0.6clo)に各 90 分間曝露した。その結果、どの相対湿度でも頸損者の口腔温は実験開始後 20 分 からやや直線的に下降していた。従って、室温 22℃は相対湿度の高低(ビル管法で規定されている相対湿度の範 囲:40~70%RH)に関わらず、頸損者の至適温度から外れる可能性がある。現時点での下限値は室温 23℃50%RH と考えているが、今後、室温 23℃における相対湿度の違いの影響について検討を行う必要がある。
著者
三上 功生 吉田 燦 青木 和夫 蜂巣 浩生
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.97-107, 2005-10-01
被引用文献数
3

交通事故等で頸椎を骨折し,ほぼ全身に及ぶ発汗障害と温冷感麻痺,末梢部の血流調節障害等の重度体温調節障害を持つ頸髄損傷者の温熱環境に対する意識・実態把握を目的としたアンケート調査を行った.回収数は338人であった.その結果,(1)暑さ,寒さを苦手に感じている者がほとんどであった.(2)体調が悪くなってから暑さ,寒さに気付くことを経験している者が多かった.(3)自室の冷暖房使用率はほぼ100%であったが,トイレ,脱衣所は低く,冷暖房の必要性を感じている者が多かった.(4)様々な公共施設の冷暖房に対して不満を感じていた.(5)夏季と冬季の外出時,体温上昇予防と寒さ対策として様々な手段を必要としていた.(6)体温調節障害のために,生活行動範囲が狭まっていると感じている者が多かった.本調査より頸髄損傷者が日常生活で,体温調節障害のために多くの困難に直面していることが明らかとなった.<br>