著者
吉田 燦 杉山 知之
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.225-232, 1981
被引用文献数
1

ラット自身が快適とする近隣環境温度を推定するために, ラットの尾部皮膚温の変化に着目し, 室温を2℃間隔の5段階に変化させてそのサーモグラフを撮影するとともに行動観察を行った。ポリカーボネート製ケージ内に5匹1群で飼育されたラットは室温20~24℃では体を寄せあい, 室温28℃では互いにできるだけ離れた位置をとり, 室温26℃でその中間の状態となる行動を示し, その間尾部皮膚温は常に高く, 室温20℃においても28.5~31℃に維持された。同型のケージに単独飼育されたラットの尾部皮膚温は, 室温28℃では群飼ラットとほぼ等しく, 室温26℃でもこれに近い値を示したが, 24℃以下の室温では降下が激しく, 室温20℃では20~23℃にまで達した。5匹1群のラットではケージ内温度の上昇も見られたが2℃を超えることはなかった。室温28℃では単独ラットも群飼ラットもともに唾液を体に塗って熱放散を増加させる行動を行った。これらの結果から, ラットが単独で高い尾部皮膚温を維持し, 同時に唾液を用いて放熱を計る必要のない温度すなわち26~27.5℃をラットの快感温度と推定した。
著者
三上 功生 吉田 燦 青木 和夫 蜂巣 浩生
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.97-107, 2005-10-01
被引用文献数
3

交通事故等で頸椎を骨折し,ほぼ全身に及ぶ発汗障害と温冷感麻痺,末梢部の血流調節障害等の重度体温調節障害を持つ頸髄損傷者の温熱環境に対する意識・実態把握を目的としたアンケート調査を行った.回収数は338人であった.その結果,(1)暑さ,寒さを苦手に感じている者がほとんどであった.(2)体調が悪くなってから暑さ,寒さに気付くことを経験している者が多かった.(3)自室の冷暖房使用率はほぼ100%であったが,トイレ,脱衣所は低く,冷暖房の必要性を感じている者が多かった.(4)様々な公共施設の冷暖房に対して不満を感じていた.(5)夏季と冬季の外出時,体温上昇予防と寒さ対策として様々な手段を必要としていた.(6)体温調節障害のために,生活行動範囲が狭まっていると感じている者が多かった.本調査より頸髄損傷者が日常生活で,体温調節障害のために多くの困難に直面していることが明らかとなった.<br>
著者
関口 克明 吉田 燦 吉野 泰子 蜂巣 浩生 川西 利昌 早川 朝康 関口 克明
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

当プロジェクトは中国北西部の広大な黄土高原地域に根づく伝統住居"窰洞"の持続発展可能な近代化に関する研究である。調査対象の窰洞は陜西省延安市棗園村で、現地調査は1998年8月〜2002年1月に6回実施した。1〜3回は既存窰洞を対象とし、4〜5回は新型多層窰洞を対象としてそれぞれ冬季と夏季に実施した。測定内容は窰洞に関する居住環境の意識調査と温熱、音、光、空気質に関する物理量の計測である。生活に対する実態調査とアンケート結果より、・夏涼しく、冬暖かい温熱環境は90%が満足 ・空気質は通風が悪く粉塵が不快(70%) ・光環境に対する不満はない ・外部生活騒音は多少気になる等について確認した。その結果光環境については、昼間は最深部で暗く(昼光率1%未満)夜間照度は部屋中央で101x以下であることから、住民の視力検査とライトシェルフの可能性に関する調査を追加(2000/8)した。温熱環境は部屋全体として熱収支を把握し、具体的な問題点を指摘するため常に空間分布として計測した。測定は室内空気温、壁表面温度と壁体熱流について相関を持たせながら24時間の連続測定を基本とした。空気が乾燥し日較差・年較差の激しい気候のため、ふく射熱の影響を考慮した計測システムを開発して空間分布とベクトル温度による考察を加えた。室内気温は窰洞形式、居住下・無人下によって差はあるが、築年(築100年から築1年の5タイプ)による差はない。外気温との比較により土の保温性能が把握できた。新型窰洞は平地における独立二層型で、北側は換気・採光を考慮した窓開口のある厚い壁(45〜60cm)である。南側サンルームは冬季に効果的を発揮し、既存窟洞に対して明るく暖かな気温を維持するが、冬季の間終日影となる北側壁面からは常に熱流が外向きで壁体の蓄熱効果はないことを示した。また、ベクトル温度計により、気温と壁面温度の較差の様子を示した。