著者
三上 由希野 篠塚 明彦
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Hirosaki University (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.117, pp.21-29, 2017-03

明治政府は、日本を近代国家とするために、様々な政策に着手し、弘前でもまたこの流れに遅れをとるまいと、近代社会実現にむけた活動が活発に行われていた。しかし、それは明治政府の近代化とは一線を画すところもあった。こうした弘前の近代化の過程にあっては、旧弘前藩出身の士族層が地域リーダーとして活躍していた。弘前周辺でも、江戸時代の後半以降、豪農や豪商の成長もみられていた。だが、明治に入っても士族層が大きく没落することのなかった弘前においては、そうした豪農層や豪商層の成長にも関わらず、相変わらず士族層がリーダーとして地域を支える役割を担っていたのである。これは、全国的な状況、例えば自由民権運動において「士族民権から豪農民権へ」という地域リーダー層が交替する姿とは些か異なる状況にあった。本稿では弘前における地域リーダーとして活躍し続けた士族の姿を明らかにし、日本における近代化の様相の個別性を再考する。