著者
阿部 寛 中西 紀元 三上 直子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.396-401, 1996
被引用文献数
1

石鹸は古来, その安価さと使用時の泡立ちの豊かさ, 洗い上がり時のさっぱり感から, もっとも手軽に用いられてきた身体洗浄料基材であった。しかしながら, 近年の素材のマイルド化の流れの中で, すすぎ時のきしみ感や洗い上がりのつっぱり感等が指摘されることもあった。<br>そこで石鹸の優れた特性を保ちつつ, マイルド感のある界面活性剤の探索を行ったところ, 脂肪酸のリジン塩が, 以下の特性を有する優れた洗浄料基材となることを見いだした。<br>(1) 皮膚一次刺激性, 眼粘膜一次刺激性ともに, 一般のマイルド系界面活性剤と同等以上の低刺激性である。<br>(2) 他の脂肪酸塩類に比べ速やかに生分解される。<br>(3) 低濃度から高濃度にいたるまで良好な起泡力を示し, また適合pH領域が広く, 弱アルカリ性でも使用可能である。<br>(4) 官能面では, 洗浄時には泡立ちの早さ, 泡量, 泡保ちに優れ, 使用後にはさっぱりしながら, しっとり, すべすべした感触を感じさせる。