著者
五ノ井 透 ハナフィ アメド メーヤー ウィランド 三上 襄
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.78, 2008

マイクロサテライトは、ゲノム上に存在する数塩基単位の繰り返し配列であり、集団遺伝学やDNA鑑定において遺伝子マーカーとして用いられている。世界の各国で採取された100株あまりの<I>Cryptococcus neoformans</I> var. <I>grubii</I> (serotype A) のマイクロサテライト多型を解析し、地域による菌の分布の多様性について明らかにした。すでに公表されているH99株ゲノム配列を基に、15の典型的なマイクロサテライト部位をランダムに選択して塩基配列を解読した結果、3つの部位で2~3塩基の繰り返し配列が7~13回と異なる回数繰り返される、マイクロサテライト多型が観察された。残りの12ヶ所には多型は観察されなかった。見つけたゲノム上の3ヶ所の多型を用いて世界各国で採取された菌株をタイプ分けしたところ、日本-中国-台湾に共通する型、タイ国に特有の型、ヨーロッパ-エジプトに共通する型などを識別することができた。また、ベネズエラ-コスタリカ-ブラジルなどの中南米の各国には、多くの型が混在していることが明らかとなった。 今回多型が存在することが明らかとなった3つの部位を含め、<I>Cryptococcus neoformans</I> のマイクロサテライト多型の解析は、菌の伝播経路、感染経路の解析や地域多様性の解析、さらには、菌種の解析にも有用であると結論した。