20 0 0 0 OA 環境真菌と生態

著者
高鳥 浩介
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.J97-J105, 2014 (Released:2014-09-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

環境真菌は室内や室外問わず普遍的に生息している.環境真菌の生態は環境に限らず,健康への影響も強くかかわってくることから無視することができない.とりわけ,生活周辺での環境真菌は近年健康被害を及ぼすことが報告されるようになり,その生態を理解することが重要となってきた.本稿では,環境真菌の生活周辺での生態をまとめ,主要な環境真菌について述べた.また環境真菌と健康にかかわる現象についてまとめた.
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.5-6, 2012 (Released:2012-03-30)
著者
大林 民典
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.J141-J147, 2017 (Released:2017-11-30)
参考文献数
44
被引用文献数
2

カブトガニ血球中のβ-グルカン感受性因子の発見に基づいて血中(1→3)-β-D-グルカン測定法(以下,β-グルカン測定法)が,深在性真菌症の補助診断法として1985年,わが国で誕生した.多くの臨床治験ののち,今やβ-グルカン測定法は内外の深在性真菌症の診療ガイドラインに取り上げられ,世界のどこでも利用できる.しかし,わが国では比色法と比濁法というβ-グルカンに対する反応性が大きく異なる2つの方法が使われているため,両者の測定値を比較する際には注意が必要である.比濁法の血中β-グルカン1pg/mlは,大部分の例で,比色法の7pg/ml前後に相当する.したがって比濁法のカットオフ値は比色法より著しく高くなり,偽陰性による見逃しの可能性が高くなる.また最小検出限界値も比色法に換算すると比濁法では60pg/mlと高く,低値域の測定値の上昇による早期診断に寄与できない.海外で使われているいくつかの試薬もまた感受性が異なる.データの互換性を確立し,本法の有用性をさらに高めるには,国際的な標準化ないしハーモナイゼーションが必要である.将来,国際的な生物保護の流れに沿って,遺伝子工学がカブトガニ凝固酵素の供給源としてカブトガニに取って代わり,標準化の新たな機会をもたらすかもしれない.

7 0 0 0 OA Aspergillus属

著者
矢口 貴志
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.193-197, 2011 (Released:2011-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2
著者
平井 一行 犬飼 達也 中山 浩伸
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.J163-J170, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

現在の真菌感染症治療薬には抗真菌スペクトラムや副作用の問題があるため,治療薬選択の余地は狭く,有効な治療法の開発が急務となっている.有効な治療法の開発の1つの手段として,真菌のストレス環境下の応答機序(シグナル伝達や代謝など)の解明がある.本稿では,感染時に起こるさまざまなストレスのうち,鉄欠乏ストレスおよびそれに適応するために起こる代謝の変化に着目し,それらの応答システムの解明について,Candida glabrataを中心としたCandida酵母での研究の現状を紹介し,真菌症の治療戦略の創製の可能性に触れる.
著者
常深 祐一郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.J71-J75, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

爪白癬治療の基本は経口抗真菌薬であるが,経口抗真菌薬は爪白癬治療のためだけにあるのではない.外用のみでは難治な角化型足白癬には経口抗真菌薬の併用が有効である.眼や耳,口などに接する顔面白癬,広範囲の体部白癬,外陰部の複雑な部位に及んだ股部白癬などは完全に外用し尽くすことは困難で,再発が多くなる.よって経口抗真菌薬が必要である.白癬だけでなく,広範囲の癜風やマラセチア毛包炎,爪カンジダ,カンジダ性爪囲爪炎にも経口抗真菌薬は重宝する.また,真菌症であっても抗真菌薬の外用が困難または禁忌となる場合がある.頭部白癬は外用抗真菌薬の刺激で炎症が強くなる可能性があり,外用できたとしても毛包内までは効果が及ばないため,経口抗真菌薬のみを使用する.また,びらんや接触皮膚炎などを伴った趾間型足白癬は,外用抗真菌薬により刺激性皮膚炎を起こして悪化するため使用しづらい.この場合,局所はステロイド外用薬や亜鉛華軟膏などで治療し,白癬菌には経口抗真菌薬で対応し,合併症消失後は外用抗真菌薬に切り替える.さらに外用は手間と時間を要するため,アドヒアランスが低下しがちである.そこで,経口抗真菌薬を併用し,治療効果を高め,治療期間を短縮することも有用である.経口抗真菌薬は,イトラコナゾールとテルビナフィンの違いを理解して使用することが重要である.新規経口抗真菌薬の臨床試験も行われており,経口抗真菌薬がさらに活用されることを期待する.
著者
矢口 貴志
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.J13-J17, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

国際植物命名規約において,これまで多型的生活環をもつ高等菌類(子のう菌類と担子菌類)では例外的に1つの生物種を2つの学名で呼称すること(二重命名法)が認められていた.しかし,2011年7月にオーストラリア・メルボルンで開催された第18回国際植物学会で国際植物命名規約の大幅な改訂がなされ,1つの生物種に対して1つの学名を与える(1生物種1学名)統一命名法が高等菌類にも適用された.この命名規約の改訂が病原性糸状菌に与える影響,Aspergillus,Penicillium および関連するテレオモルフの学名の検討状況をについて述べる.
著者
上原 雅江 佐野 文子 鎗田 響子 亀井 克彦 羽毛田 牧夫 井出 京子 永井 啓子 高山 義浩 西村 和子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.205-209, 2008 (Released:2008-08-09)
参考文献数
21
被引用文献数
6 4

2006年本邦において,タイ人AIDS患者の血液培養よりPenicillium marneffei が分離された.本菌種による感染報告例は本症例が3例目となるが,培養に成功した例はわが国では初めてと考えられる.患者は,41歳,タイ東北部出身の女性で,約10年前に来日.その後もしばしば一時帰国していた.AIDS治療中に発熱のために行った血液培養より,培養初期に白色,やがて暗赤色となる集落が分離され,菌学的および分子生物学的手法によりP. marneffei と同定され,患者はマルネッフェイ型ペニシリウム症と診断された.アムホテリシンBおよびミカファンギンの投薬により患者は回復し,引き続き通院し経過を観察された.分離株をサブロー・ブドウ糖寒天平板培地にて25℃で培養した集落は,初め白色フェルト状で,次第に黄色から黄緑色となり,さらに培地内に深紅色色素を拡散した.分生子頭は散開性で,その先端に分生子の連鎖を形成していた.ブレイン・ハート・インフュージョン寒天斜面培地にて35℃で培養すると,細かい襞のある灰白色膜様集落を形成し,顕微鏡的には短菌糸より構成されていた.なお,本分離株のリボゾームRNA遺伝子internal transcribed spacer領域の配列は,既知株と100%一致し,DDBJにAB298970として登録されている. 臨床検査分野においては,今後HIV感染症の拡散と人々の移動のグローバル化に伴い,病原性輸入真菌症に遭遇する危険性が高まることが予測され,専門機関との連携を含め,初期対応が可能となるような体制作りが必要であると考える.
著者
杉田 隆 張 音実 高島 昌子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.J77-J81, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2

ゲノム情報が大量に蓄積されてきた今日では,この情報を用いて真菌の新しい分類体系が再構築されつつある.加えて,新しい命名規約である“国際藻類・菌類・植物命名規約”が2013年1月1日に発効し,1F=1Nの作業も行われている.クリプトコックス症の起因菌であるCryptococcus neoformans とCryptococcus gattii は,それぞれ2菌種(C. neoformans, Cryptococcus deneoformans)と5菌種(C. gattii, Cryptococcus bacillisporus, Cryptococcus deuterogattii, Cryptococcus tetragattii, Cryptococcus decagattii)への再分類が提案されている.Trichosporon 属は5属に再分類され,トリコスポロン症の起因菌であるTrichosporon asahii はTrichosporon 属に,歴史的に重要なTrichosporon cutaneum はCutaneotrichosporon 属に移行した.
著者
丸山 奈保 滝沢 登志雄 久島 達也 石橋 弘子 井上 重治 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第51回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.135, 2007 (Released:2008-08-08)

【目的】膣カンジダ症は発症頻度の高い感染症でありながら、一部では抗真菌剤だけで解決できない場合も多い。本症にアロマセラピーとして植物精油が経験的に用いられているが、有効性を得る最適な投与法に関する研究は少ない。ここでは、膣カンジダ症マウスモデルを用いその検討を行った。【方法】実験1.C.albicans TIMM2640を、エストラジオールを投与したBALB/cマウスに接種し、翌日より植物精油を3日間連続膣内投与後、4日目に菌を回収した。一部のコントロールマウスでは、投与6時間後に膣の洗浄操作を加えた。実験2.菌接種48時間後に膣を洗浄後、ゼラニウム油及び主成分であるゲラニオールを膣内投与し、投与6、24、96時間後に菌の回収・洗浄を行った。【結果と考察】1.クロトリマゾールでは効果が認められたが、ゼラニウム油、ティートリー油などの植物精油では、生菌数の低下は認められなかった。ただし、膣洗浄により生菌数の有意な低下が認められた。2.植物精油投与96時間後にはゲラニオール1%で生菌数の有意な減少が、ゼラニウム油1%で減少傾向が見られた。すでに、ゼラニウム油及びゲラニオールはin vitroでC.albicansの菌糸形発育を阻止し、基材への付着性を低下させることを明らかにしている。以上より、これらは、膣洗浄との適切な組み合わせにより、膣カンジダ症に有効性を示しうると考えられる。
著者
吉田 稔
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.111-115, 2013 (Released:2013-06-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1
著者
原田 聡 杉田 隆 田嶋 磨美 津福 久恵 坪井 良治 西川 朱實
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第50回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.77, 2006 (Released:2006-09-12)

【はじめに】皮膚常在真菌であるMalasseziaはアトピー性皮膚炎の増悪因子である。本菌は細胞外にリパーゼを分泌することにより皮脂を分解しそれを自らの栄養源としている。この度は、アトピー性皮膚炎の標準的治療薬であるステロイドおよびタクロリムスがMalasseziaの分泌性リパーゼ産生および遺伝子発現に及ぼす影響について検討した【材料および方法】菌株:アトピー性皮膚炎患者皮膚の主要構成菌種であるM. globosaおよびM. restrictaの臨床分離株を用いた。リパーゼ遺伝子変動:degenerate PCRによりリパーゼ遺伝子をクローン化し、各種薬剤存在下での遺伝子発現変動をreal-time PCRを用いて調べた。分泌性リパーゼ産生:各種薬剤存在下でpNPP法によりリパーゼ活性を測定した。【結果および考察】臨床濃度に相当するステロイド存在下では、リパーゼ遺伝子の発現およびタンパク産生の抑制が認められた。一方、タクロリムスは、臨床濃度の約1/60以下で遺伝子発現およびタンパク産生の亢進が認められた。しかしながら、タクロリムスは臨床濃度ではMalasseziaに対して殺菌的に働くので、リパーゼ活性の亢進は臨床上問題にならないと考えられる。【会員外共同研究者】内田夕貴、斉藤美沙

2 0 0 0 OA 真菌の命名法

著者
高島 昌子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.263-267, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1

2 0 0 0 OA KOH直接鏡検

著者
畑 康樹
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-9, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
6
著者
阪口 英夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.J43-J49, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
12
被引用文献数
3

近年,高齢者における口腔カンジダ症が増加している.これは,高齢者の増加が大きな理由であると考えられるが,口腔カンジダ症が高齢者に多いことが知られるようになってきたことも要因の1つであると考える.口腔カンジダ症には,3つの病型が存在する.白苔の出現がみられる偽膜性口腔カンジダ症,紅斑の出現がみられる紅斑性口腔カンジダ症,粘膜の肥厚が現れる肥厚性口腔カンジダ症である.これらの治療には,高齢者ではおもにミコナゾールゲルの投与が行われている.高齢者の口腔カンジダ症は繰り返し発症することが多い.そのため,発症後の再発予防が重要となる.再発予防には抗真菌性(antifungal)をもつヒノキチオールを配合した口腔保湿剤を定期的に使用することが推奨される.
著者
Takashi Toyoshima Ken-ichi Ishibashi Daisuke Yamanaka Yoshiyuki Adachi Naohito Ohno
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.E39-E44, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2

Aspergillus species are ubiquitous in the environment and Aspergillus fumigatus can cause life-threatening infections in immunocompromised patients. β-1,3-/1,6-glucan is a major fungal cell wall polysaccharide that has various biological effects on the infected host, but little is known about the influence of β-glucan on the fungus itself. In a previous study, we demonstrated that the cell wall β-glucan content could be increased in Aspergillus spp. by addition of β-glucan to the culture medium. In this study, we investigated the influence of β-glucan on the susceptibility of A. fumigatus to antifungal agents. A. fumigatus was cultured in the presence or absence of β-glucan for antifungal susceptibility testing based on changes of the growth rate and morphology. Susceptibility to micafungin, a β-glucan synthase inhibitor, was about 10-fold lower when β-glucan was added to the culture medium. On the other hand, susceptibility to amphotericin B and voriconazole was similar in either the presence or absence of β-glucan. These results strongly suggest that β-glucan has an important physiological role in Aspergillus spp.
著者
樽本 憲人 金城 雄樹 北野 尚樹 渋谷 和俊 前﨑 繁文 宮﨑 義継
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.J115-J122, 2014 (Released:2014-09-18)
参考文献数
68

カンジダ属は,院内の血流感染症の原因菌の中でも頻度が高く,全身性カンジダ症が致死的な転帰をたどることもまれではない.カンジダ感染症に対する宿主の生体防御反応においては,感染早期の自然免疫においては好中球などの食細胞が,獲得免疫においてはCD4T細胞が重要な役割を示す.近年,自然免疫応答にも関与するリンパ球であるNKT細胞が,さまざまな微生物の感染症における免疫応答に関与することが示唆されているが,カンジダ感染におけるNKT細胞の関与については明らかではない.私たちは,全身性カンジダ症のマウスモデルにおけるNKT細胞の役割について確認した.まず,NKT細胞欠損マウスであるJα 18KOマウスを用いて解析を行ったが,その役割は限定的であった.一方で,糖脂質を投与してNKT細胞を活性化させたところ,生存期間が著明に短縮し,腎臓内菌数が有意に増加していた.加えて,末梢血および骨髄中の好中球数が減少していた.さらに,IFNγ KOマウスでは,NKT細胞活性化によるカンジダ感染の増悪がほぼ消失した.また,腸管内常在性の細菌とカンジダ属を共感染させたところ,カンジダ単独感染群と比較して,真菌排除が低下し,この感染増悪には細菌感染により誘導されたIFNγ が重要であることが明らかになった.以上の結果より,細菌との共感染などによって過剰にIFNγ が産生される状況では,全身性カンジダ症が増悪する可能性が示唆された.
著者
高橋 英雄 高橋 広志 高橋 容子 鎗田 響子 猪股 智夫 佐野 文子 西村 和子 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.152, 2005

2005 年 9 月 1 日より輸入動物の検疫体制が整う予定であるが,すでに輸入された動物が保菌している病原体は世代を超えて感染が広がっている.今回,国内の動物園で繁殖し飼育されている 5 ヶ月齢のカナダヤマアラシに <I>Arthroderma benhamiae</I> による脱毛が発症した.同居している母個体はカナダ,父個体はアメリカ合衆国から輸入されたもので,無症状であったが,同菌種を保菌していた.分離菌株は当該獣より 4 株,母獣より 5 株,父獣より 2 株分離され,いずれも形態,rRNA 遺伝子の ITS 領域の配列,<I>A. benhamiae</I> Americano-European race との交配成立から同種と同定した.11 株のうち 42℃ で生育可能であった株は母由来 1 株,ITS 領域の配列は母由来 2 種,他は 1 種で GenBank 登録配列とは一致せず,RAPD バンドパターンも複数種確認した.この家族内感染は国内未確認の遺伝子型をした <I>A. benhamiae</I> 複数株によるものであった.なお,同動物園ではふれあい動物園を併設していることから,飼育しているげっ歯目および食虫目動物 33 頭について皮毛を培養したが,本菌種は分離されなかった.<I>A. benhamiae</I> によるヒト感染は命に関わる疾患ではないが,この家族内保菌・感染はすでに輸入された個体が我が国に無い病原体を保持し,それを次世代に伝播している一例である.他の真菌,原虫,細菌,ウイルスによる感染症も同様な状況が推測されるため,人と動物の共通感染症の予防にはすでに輸入された動物にも細心の注意が必要である.
著者
豊留 孝仁
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.J149-J154, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

アスペルギルス症は深在性真菌感染症の重要な位置を占めている.アスペルギルス症の原因真菌はAspergillus fumigatusが最も重要であるが,そのほかにもAspergillus flavusやAspergillus niger, Aspergillus terreusなども重要な原因菌種である.また,近年になって隠蔽種と呼ばれる各Aspergillus sectionの代表的な種に非常によく似た菌種の存在が認識され,一部のアスペルギルス症の原因となっていることも分かってきた.最近の研究で,それらの菌種間では抗真菌薬に対する感受性や二次代謝産物の産生プロファイル (エクソメタボローム) が異なることも明らかとなってきた.一方,治療中のA. fumigatusアゾール耐性化や近年の欧州を中心とした環境中アゾール耐性A. fumigatusの出現も報告され,これら菌種を正確に同定し,加えて感受性を評価することの重要性が高まってきている.本総説ではA. fumigatusを含めたアスペルギルス症原因菌種,特に隠蔽種について触れ,エクソメタボローム解析を利用した同定の可能性を述べる.加えて,A. fumigatusアゾール系抗真菌薬耐性について最近の報告を交えて概説したい.