著者
三原 俊彦 大橋 博 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.1195-1206, 1984-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
13

76年1月から12月までの1年間に東京女子医大糖尿病センターを受診し, 一定の調査項目の完備した糖尿病患者1,629名について5年間にわたりprospectiveに追跡調査を行ったところ, 登録5年後の生存者1,442名, 死亡者184名, 生死不明者3名であり, 生死に関する追跡率は99.8%であった. 登録5年後の生命予後を不良とした登録時状態として, 糖尿病30歳未満発症, 肥満度90%未満, 収縮期血圧200mmHg以上, 拡張期血圧110mmHg以上, インスリン治療, 朝食前血糖200mg/dl以上, 血清コレステロール150mg/dl未満および300mg/dl以上, 血清中性脂肪300mg/dl以上, 血清尿素窒素30mg/dl以上, 血清尿酸10mg/dl以上, 神経障害, Scott IIIa以上の網膜症,(+++) 以上の蛋白尿などであった. とくに, 登録時に神経障害, 網膜症, 蛋白尿のすべてを有したものの予後は不良であった. 5年間に死亡した184名の死因の第1位は悪性新生物であり, ついで脳血管障害, 虚血性心疾患, 糖尿病性腎症の順であったが, 糖尿病若年発症者, 登録時肥満者, 高血圧, 高コレステロール血症, 高中性脂肪血症, 高尿素窒素血症, 高尿酸血症, 神経障害, 網膜症, 蛋白尿を有したものでは, 他の群に比し死因として悪性新生物の割合は少なく, 糖尿病性腎症, 虚血性心疾患, 脳血管障害など血管障害の割合が増大した.
著者
三原 俊彦 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.965-973, 1978-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

1958年に日本糖尿病学会が設立されたのを契機として, 全国各地の病院に糖尿病専門外来がつくられ, 糖尿病患者が長期にわたって管理を受けることができるようになった.1958年発足以来1976年まで18年間にわたって糖尿病患者の治療・管理を行っている糖尿病センターに通院している患者をみると, 糖尿病罹病期間の長いものが多数みられる.現在当センターを受診している糖尿病患者の実態を明らかにする目的で, 1976年1月1日より12月31日までの1年間に当センターを受診した糖尿病患者について一定の形式で問診, 診察, 諸検査を施行した.所定の調査項目の結果がすべて明らかとなった糖尿病患者1,629名の臨床像はつぎの通りであった.患者の男女比は1.23であり, 調査時年齢のピークは60歳代, 糖尿病推定発症年齢のピークは50歳であった.糖尿病推定発症より調査時までの推定罹病期間は, 従来の報告に比し長いものが多く, 10年以上の罹病歴をもつものが38.4%をしめた.糖尿病の家族歴を有するものは39.3%にみられ, 従来の報告に比し高い頻度を示した.糖尿病罹病歴の長いものが多かったこともあり, 糖尿病性合併症の頻度も高く, 糖尿病性神経障害、網膜症, 蛋白尿の頻度は, それぞれ, 53.0%, 39.4%, 33.5%であった.今後ますます糖尿病性合併症を有する糖尿病歴の長い患者の割合が増加してくることが予想される.
著者
三原 俊彦 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.479-484, 1979

糖尿病患者の代表的な糖尿病性合併症とされている神経障害, 網膜症, 腎症 (蛋白尿) をどのような組み合わせで有しているかという点に関して, その実体を明らかにする目的で本調査を行った. 対象は, 1976年1月1日より1976年12月31月までの1年間に東京女子医科大学糖尿病センターを受診した1,191名の糖尿病患者である. 神経障害, 網膜症, 蛋白尿の有無による組み合わせよりI型-VIII型の合併症分類型を設定した. すなわち, I型はいずれの合併症も有しないもの, II型は神経障害のみを有するもの, III型は神経障害と網膜症を有するもの, IV型は神経障害, 網膜症, 蛋白尿のすべてを有するもの, V型は蛋白尿のみ有するもの, VI型は神経障害と蛋白尿を有するもの, 孤型は網膜症のみを有するもの, 粗型は網膜症と蛋白尿を有するものである。合併症分類型別頻度は, I型17.8%, II型16.4%, III型18.5%, Iv型15.7%, V型9.5%, VI型8.1%, 顎型10.0%, VIII型40%であり, I型, II型, III型, IV型の頻度が高かった.糖尿病罹病期間と合併症分類型との間には密切な関連がみられ, 罹病期間の短いものでは, I型, II型, V型が多く, 罹病期間の長いものではIII型, Iv型が増加した. しかし, VI型, VII型, VIII型においては, 糖尿病罹病期間の長短と頻度との間に密切な関係はみられなかった. 調査時年齢, 初診時朝食前血糖値と合併症分類型との間には著明な関連はなかったが, Iv型, VIII型において高血圧の頻度が高かった.