著者
杉原 たまえ 石田 裕 三津浜 三栄子 鈴野 弘子 豊原秀和
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.186-192, 2008-03-15

本研究は,南西諸島のような物理的・環境的条件の限定された地域における在来的な自生植物資源の有用性に関する研究である。沖縄県伊江村(伊江島)では,アブラナ科のハマカブラBrassica campestris L.を,マーナと称し,島の人々はかねてから利用してきた。この植物は日本全国で確認されているが,沖縄県においては自生地が限られ,またこれを日常的に食しているのは伊江島だけといわれている。雑草であるがゆえに,この植物の生産に取り組んでいる農家は,2戸に過ぎない。われわれはこのマーナに関する一般的特性に関する聞き取り調査をおこない,さらに栄養分析をおこなった。その結果,特にマーナのポリフェノール含有量は比較的高い数値で,一般的な野菜の10倍程度であった。日常的に利用されながら雑草的な扱いにとどまっているが,成分的には機能性に加え,栄養学的な面でも優れていることが示され,今後食用化が進められるべき素材であることが示唆された。伊江島では製糖工場が閉鎖され,農家の高齢化も伴って耕作放棄が目立ちつつある中で,ラッカセイ,トウガン,花卉につぐ,マーナの特産化が模索されるべきであろう。