著者
大久 長範 鈴木 直樹 三浦 みどり 遠藤 耕介 藤田 康弘
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.442-446, 2012-09-15
被引用文献数
1 5

小麦粉に8% (w/v)食塩水を添加し24時間熟成した後に手で伸ばし製麺したところ,稲庭うどん等に見られている空隙が形成された.熟成温度を10℃から23℃,30℃と高くすると空隙が大きくなった.稲庭うどんの生地から酵母(M1株とM2)を単離した.いずれの株も,グルコースをはじめ5種類の単糖,二糖類を発酵しガスを発生し,可溶性デンプンを資化し,10% (w/v)の食塩水溶液にも耐性を示した.rDNAのITS領域の塩基配列および糖の資化性から,これらの菌株を<I>Hyphopichia burtonii</I>と同定した.M1株,M2株を小麦粉に添加しドウを作製し30℃に保存すると,10時間以降にドウ体積の増加した.対照および<I>Hyphopichia burtonii </I>NBRC10837では,36時間にわたりこのようなドウの膨れは認められなかった.稲庭うどん等の手延べ乾麺の空隙形成に耐塩性酵母が関与していると考えられた.