著者
大原 浩樹 伊藤 恭子 飯田 博之 松本 均
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.137-145, 2009-03-15
被引用文献数
6 27

魚鱗コラーゲンペプチド(2.5g, 5g, 10g)の3用量の用量設定と豚皮コラーゲンペプチド(10g)の有効性確認を目的に,プラセボ群を設定して各々を4週間摂取して摂取前後の皮膚状態の変化を二重盲検法で比較した.その結果,魚鱗コラーゲンペプチド摂取によりその用量に応じて角層水分量の増加傾向が見られ,特に,30歳以上を対象とした層別解析で魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた.一方,豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった.この結果から,魚鱗コラーゲンペプチドの摂取は角層水分量の増加に有効であると考えられた.また,その他の評価項目(経表皮水分蒸散量,皮膚粘弾性,皮膚所見)に関しては,コラーゲンペプチド摂取に起因すると推定される変化は認められなかった.
著者
小早川 知子 松尾 和吉 橋本 忠明 築山 良一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.336-345, 2010-08-15
被引用文献数
2 2

淡口醤油パラドックスともいえる淡口醤油の調理特性をあきらかにするため,淡口醤油と濃口醤油での「塩味」「かつおだし風味」「煮干だし風味」「昆布だし風味」の閾値を2点識別試験片側検定にて比較した.さらに,醤油とかつおだしを組み合わせた時の減塩効果についてプロビット解析により検討を行い,以下の知見を得た.<BR>(1) 「塩味」の閾値は喫食時を想定して設定した3種類(0.92%,1.28%,2.75%)すべての食塩濃度範囲で濃口醤油より淡口醤油の方が低いことが明らかとなった.<BR>(2) 「かつおだし風味」「昆布だし風味」の閾値は,食塩水,濃口醤油よりも淡口醤油が低い結果となった.<BR>(3) 「煮干だし風味」の閾値は,醤油使用量が多い5.6%濃口が最も低い結果となった.5%淡口醤油,5%濃口醤油の閾値に差は見られなかった.<BR>(4) 0.90%食塩水と同等の塩味の強さと感じる等価食塩濃度は2%,3%,6%のかつおだし溶液それぞれ0.903%,0.894%,0.843%となり,だし濃度が高くなるほど塩味を強く感じる傾向を示したが,95%の信頼限界域から判断して,濃厚な6%かつおだしにのみ減塩効果が認められ,通常のだし濃度3%以下では減塩効果はなかった.<BR>(5) 4%淡口醤油,4%濃口醤油そのものには減塩効果はなかった.<BR>(6) 3%かつおだしと4%醤油を併用した場合の0.90%食塩水との等価食塩濃度は,淡口醤油の場合0.872%,濃口醤油の場合0.891%と共に減塩の傾向を示したが,95%信頼限界域から判断して淡口醤油の場合のみ有意な減塩効果が認められた.<BR>以上より,調理に淡口醤油を使うことは,目的とする塩味に調節し易く,且つ,だし風味を効かせた低塩料理につながることが強く示唆される結果となった.
著者
立花 正一 中沢 孝 渋川 喜和夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.583-588, 2008-12-15
参考文献数
7

宇宙環境のストレスと宇宙食。1961年4月に旧ソ連のガガーリン宇宙飛行士が初めて宇宙に飛び出してから既に50年を経ようとしている。有人宇宙開発もアメリカと旧ソ連が互いに覇権を争っていた「競争」の時代から、現在地上約400kmの軌道上に建設が進む国際宇宙ステーション(ISS:15カ国の国際共同プロジェクト)が象徴するように「協力」の時代に人っていると言える。我が国も今年3月と6月に「きぼう」という愛称の科学実験棟の主な部分(船内保管室、船内実験室、及びロボットアーム)を相次いで打上げ、ISSに首尾よく取り付けたことで、このプロジェクトの主要なメンバーとして本格的に活動を始めた。来年2月にはJAXAの若田飛行士が我が国初の宇宙長期滞在(3ケ月)に挑み、ISS内での科学実験を本格化させると共に、「きぼう」の最後のパーツである船外実験プラットホームのISSへの組み込み作業に主体的に取り組むことになっている。2009年中にはISSの乗組員の数は3人から6人に倍増する予定で、その後は若田飛行士に続いてJAXA飛行士が次々と約6ケ月の長期滞在ミッションに参加することになる。これまでスペースシャトルでの2週間ぐらいの短期ミッションしか経験の無かった我が国が、いよいよ6ケ月間を基本とする長期宇宙滞在に参加するわけである。
著者
黒田 澤井 玲子 佐々木 裕 西川 智子 黒田 和道 桜井 孝治 山本 樹生 清水 一史
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.496-498, 2011-10-15
被引用文献数
2

我々は,カリン(<I>Chaenomeles sinensis</I>)中の高分子ポリフェノールの季節性インフルエンザウイルス A/Udorn/ 307/72 (H3N2)に対する感染性中和活性および赤血球凝集抑制効果を既に報告している.<BR> カリン中の活性画分CSD3を用いて,新型インフルエンザウイルス A/Chiba/1001/2009 (H1N1) pdm に対する赤血球凝集抑制活性および感染性中和活性を評価したところ,5 μg/ml のCSD3で処理したウイルスは赤血球凝集価が約1/2に,感染性が約1/10に減少することが明らかになった.250 μg/mlの処理では感染価は1/3 000に減少したこれらの結果は,カリン中の抗インフルエンザウイルス活性成分は,H1N1新型インフルエンザウイルスに対しても有効であることを示す.更に,赤血球凝集価の減少以上に感染性が減少したことからウイルス吸着段階以降における抑制作用の存在が示唆された.
著者
大富 あき子 田島 真理子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.20-30, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

めんつゆの味に関して,SD法を用いて食味特性(プロフィール)と品質(分析値)との関連を調べ,めんつゆの材料が味にどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的に,材料の種類や割合を変えた16種のつゆを調製し,SD法による食味特性評定および一般成分分析を行った.重回帰分析,因子分析を行い,次の結果を得た.<BR>(1) 砂糖を少量増したつゆ,鰹節をIMPに等量置換したつゆはおいしさを保っており,鰹節や昆布を増量したつゆ,MSGを添加したつゆはだしの味やうま味は増強されたものの,多すぎると必ずしもおいしいとの評価にはつながらなかった.昆布をMSGに置換したつゆは,コントロールと有意な差がなく昆布の代用としておいしさを保てることがわかった.<BR>(2) 一般成分分析値と食味特性値との重回帰分析結果より,グルタミン酸濃度はつゆの特性にかなり大きな影響を与えていたが,食味特性としての塩味には特徴があったにもかかわらず,食塩濃度分析値はつゆの特性に対して影響は少なかった.また,全糖濃度も甘味,かど,ひきしまった味以外にはあまり影響を与えてはいなかった.<BR>(3) 因子分析の結果,「複雑な濃厚さ」「つゆのシャープさ」「だしとうま味」の3つの特性が認められた.鰹節を増量したつゆ,濃口醤油に置換したそれぞれのつゆは特にこれら3つの特性が強く認められたので,この両者を適量使用することにより,複雑な濃厚さ,シャープさ,だしとうま味をつゆに付与できることがわかった.<BR>以上より,つゆの材料としてMSGを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することがわかった.
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011 (Released:2012-12-03)

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後、腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して、モリンガ(Moringa oleifera)の葉を3種の混合比(0.3%、1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ、好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は、総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より、モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.
著者
保井 久子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.191-192, 2009-03-15
被引用文献数
1

ヒトや動物には,外敵から身体を守るために免疫系が備わっている.多くのウイルスや病原菌の侵入口である粘膜面には効果的な「粘膜免疫」が存在し,抗原特異的分泌型IgA応答や細胞障害性T細胞(CTL)を誘導する.各粘膜は共通粘膜免疫機構(common mucosal immune system(CMIS))により関連をもち,ある粘膜組織で誘導されたIgA産生細胞やCTLは他の粘膜組織にも帰巣(ホーミング)する.とくに,分泌型IgA産生細胞は,腸管関連リンパ組織(GALT),鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)および気管支関連リンパ組織(BALT)などの誘導組織(inductive site)で誘導され,実効組織(effector site)である腸管粘膜固有層,呼吸器粘膜固有層,乳腺,涙腺,唾液腺,泌尿生殖器にホーミングする.抗原により直接暴露された粘膜組織において最も強いホーミングがおこり,強い免疫応答がみられ,それに準じた免疫応答が隣接する粘膜組織でみられる.例外として抗原の経鼻投与では,呼吸器粘膜だけでなく,生殖器粘膜にも抗原特異的免疫応答が誘導される.<BR>腸管や鼻咽頭からの抗原は,それぞれパイエル板やNALT/BALTのM細胞に取り込まれ,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に送られ,その後,B細胞およびT細胞に提示される.感作されたB細胞およびT細胞はホーミングを開始し,体内循環をし,各実効組織に到達する.B細胞が産生するIgAは,上皮細胞で産生される分泌片と結合して分泌型IgAとして各粘膜面に分泌される.そして,侵入したウイルス,細菌,細菌毒素,アレルゲンなどと免疫結合体を作り,これらを排除する<SUP>1)</SUP>.<BR>多くの粘膜経由の感染症に対する最適な防御は粘膜面と全身系で免疫を誘導することである.抗原投与法と免疫応答との関係を図1に示した.従来の注射によるワクチンでは血中IgG抗体価で代表される全身系での免疫は誘導できるものの,分泌型IgAに代表される粘膜面での免疫は効果的に誘導できない.これに対して,腸管や鼻咽頭などの粘膜面をターゲットとして経口あるいは経鼻的な経粘膜に投与されたワクチン,いわゆる「粘膜ワクチン」では粘膜面での感染侵入防止と全身系免疫での防御の両方が誘導できる.現在,多くの粘膜ワクチンの開発が進められている.経口投与では,近隣の唾液,消化管,乳汁のIgAの上昇が大きい.経鼻投与では近隣の鼻,唾液,肺のIgA抗体の上昇が大きく,遠隔に存在する女性生殖器での抗原特異的分泌型IgAおよびCTLの誘導も報告されている.このことから,HIV(human immunodeficiency virus)の粘膜ワクチン開発には経鼻投与経路も考えられている.<BR>現在,国際的に認可されている粘膜ワクチンを表1に示した<SUP>2)</SUP>.コレラやロタウイルスなどの胃腸感染症では投与方法として経口投与が選択される.一方,呼吸器感染症であるインフルエンザでは経鼻投与が選択されていることがわかる.しかし,現在日本で承認されているのは経口ポリオワクチンのみである.<BR>種々の感染症に合わせたワクチンの投与経路の選択は重要である.経口ワクチンは従来の注射によるワクチンや他の経粘膜投与法に比較して,投与の際に特別な医療器具を必要としないため,最も簡便かつ安全な投与方法といえる.しかし,経口的に投与された抗原は,大半が胃,腸などで消化作用を受けた後,パイエル板などの粘膜免疫誘導組織に到達するため,効果的な抗原特異的免疫応答を誘導するためには多量の抗原を必要とする.このため,ワクチンの抗原の安定性と粘膜免疫誘導組織へのワクチン抗原の効率の良い送達を得ることが経口ワクチンの開発において重要な鍵となる.一方,経鼻ワクチンは,NALTにより効率の良い抗原処理が行われ,酵素による分解が少ないため,少量の抗原で効果が得られるなどの利点を有している.今後,経鼻ワクチンについての研究を重ね安全性などを確認する必要があろう.
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011-12-15
被引用文献数
1

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後,腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して,モリンガ(<I>Moringa oleifera</I>)の葉を3種の混合比(0.3%,1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ,好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は,総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より,モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.
著者
岩根 敦子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.163-170, 2009-03-15

(1) 五訂増補の「南部せんべい」成分値は原材料の配合比から算出されており,市販品の実測値と異なることが予想され,特に無機成分含量はゴマや落花生の使用状況による変動が大きいと推測されるため実態を検討した.<BR>また,市販品「ゴマ入り」と「落花生丸粒入り」の実測値とその配合比から求めた計算値との比較考察を行った.<BR>(2) 「ゴマ入り」試料の灰分と各無機成分含量は五訂増補をかなり上回った.「落花生入り」2種の灰分は,五訂増補の2割程度上回り,「丸粒入り」のNa以外の無機成分含量もかなり上回った.「落花生入り」は,製造元や試料個別に主原料以外の副材料が加えられており,無機成分組成への影響は特定できなかった.<BR>(3) 「ゴマ入り」の実測値と計算値を平均値で比較すると,灰分の実測値は有意に高かった.Mg,Ca,P,Cu,Mn,Znの実測値と計算値は正相関を示した.「落花生丸粒入り」は,Mgの実測値は有意に高かった.Kの実測値と計算値は正相関を示した.
著者
原田 恭行 大泉 徹
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.117-126, 2016 (Released:2016-09-14)

冷風乾燥した塩干品の呈味成分の変化を明らかにするため,マアジを約20℃(冷風乾燥区)または約50℃(熱風乾燥区)で20時間乾燥させ,FAAと核酸関連物質の経時変化を比較した。その結果,熱風乾燥区ではIMPの急激な減少に伴いHxが増加するとともに,苦味を呈するFAAの増加が著しかった。一方,冷風乾燥区ではIMPの減少が小さく,苦味を呈するHxとFAAはあまり増加しなかった。このような呈味成分の差異は乾燥時間の経過とともに顕著となった。一方,両乾燥区における乾燥2時間(水分約68%)の半乾品を焙焼すると,冷風乾燥区では,甘味を呈するアミノ酸が増加する傾向にあったが,熱風乾燥区では,Hx含量が増加し,リジンとヒスチジンが顕著に減少した。さらに,両区を官能評価すると,冷風乾燥区は,甘味が有意に強く,苦味が弱い傾向にあり,総合評価で有意に好ましい結果となった。これらの結果は,塩干品の冷風乾燥の優位性を呈味の面から示唆するものである。
著者
関澤 春仁 山下 慎司 丹治 克男 吉岡 邦雄
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.718-722, 2013
被引用文献数
4

2012年に福島県内で収穫された果実を加工し,放射性セシウムの加工係数を算出した.各加工係数は以下のとおり.<BR>梅塩漬け0.77~0.98,梅塩水漬け0.52~0.55,梅干し0.72~1.11,梅酒0.21~0.32,梅シロップ0.48,梅ジャム0.61,0.88,梅ジュース1.00,いちじく甘露煮1.35,いちじくシロップ漬け0.51,干しぶどう3.52,ぶどうジュース0.97,蒸し栗1.01,ゆで栗0.90,栗渋皮煮0.56,マロングラッセ0.20,ゆずマーマレード0.18,ゆず酒0.19.<BR>加工品の放射性セシウム濃度は原料の濃縮や希釈によって増減したが,シロップ等の液体で加工する場合には放射性セシウムが原料から液体へ移行し,加工後の果実の放射性セシウムは低減された.
著者
田村 豊
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.375-379, 2013-07-15

食卵は,高い栄養価を有し,比較的安価な動物性タンパク食品である。日本では鶏卵とうずら卵が主なものであるが,外国ではアヒルや七面鳥の卵も食する習慣がある。鶏卵は,生卵として喫食する他,卵加工品および食品の原料としても広範囲に利用されている。生卵を食するというわが国独自の食習慣は,一方で食中毒などの食品衛生上の問題点も指摘されている。一般に食中毒といえば,微生物のみならず化学物質や自然毒を原因とするものも含まれる。その内,微生物を原因とするものは,食品媒介感染症と呼んでいる。しかし,本文では慣用的に用いられる食中毒という表現を用いることにする。食卵に起因する人の健康障害因子としては,病原微生物をはじめ,食物アレルギーのアレルゲン,動脈硬化との関連が指摘されるコレステロールなどが知られている。その内,最も重要なのが病原微生物で,中でも鶏卵のサルモネラ汚染がしばしば深刻な問題を提起している。事実,1990年9月に広島市を中心に1府9県に及んだ大規模なサルモネラ食中毒の発生は記憶に新しい。この事例では,大手の菓子メーカーでティラミスケーキの原料として使われた液卵にSalmonella Enteritidis(以下SE)が混入していた。ケーキの製造過程で室温に長時間放置したためSEが増殖することにより,それを食した若い女性を中心に食中毒が発生した。大手の菓子メーカーが介在したため広域に食中毒が発生し,患者数458名という記録に残る大規模な食中毒となった。このように食卵の衛生で最も注意すべき課題は,いかにSE食中毒を防ぐかである。そこで本解説では,内閣府食品安全委員会が公表したリスクプロファイルを基にサルモネラ食中毒の発生状況,SEの性状と食中毒の特徴,食卵の汚染要因,および対策について概説したい。
著者
杉浦 実
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.373-381, 2014
被引用文献数
8

β-クリプトキサンチンは日本のウンシュウミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種である。われわれはこれまでの研究から,ミカンを食べる習慣を有する日本人の血中β-クリプトキサンチン値は欧米人と比べて顕著に高いことを見出してきた。現在,国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っているが,これまでに血中β-クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクとに有意な負の関連があることを見出してきた。本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近の疫学研究の知見について紹介する。
著者
有山 愛 森 由佳 稲野 美穂 灘本 知憲
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.628-638, 2009-12-15
参考文献数
30
被引用文献数
2

ココア摂取がヒト体表温を上昇させる影響を検討した.被験者は健康な女子学生(18-24歳)とし,体表温と抹消部の血流量を測定指標とした.測定は22℃&plusmn;0.5℃,湿度50%&plusmn;5%の恒温恒湿環境下,4通りの異なった条件で行った.結果は次の通りである.<BR>(1) 実験1では,60℃に加温されたピュアココア飲料による影響を,栄養組成を揃えた飲料,水と比較した.ピュアココアは手首,足首,足指先に,体表温上昇傾向を示した.<BR>(2) 実験2では,37℃に維持したピュアココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.その結果,ピュアココアは手首に体表温維持傾向を示した.<BR>(3) 実験3では,60℃脱脂ココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.脱脂ココアは額における体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)と手指における体表温維持作用(<I>p</I><0.05)を示した.また,同様の傾向は,腹と腰にも示された.<BR>(4) 実験4では,実験3と同じ飲料を用いて就寝前状況を想定した実験を行った.脱脂ココアは栄養組成を揃えた飲料と比較し,腰・足首・足指先で体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)を示した.<BR>以上の結果より,ココア摂取はヒト体表温上昇作用または維持作用があることが示された.また,その効果は脱脂ココアで特に顕著に観察された.
著者
佐藤 恵美子 三木 英三 合谷 祥一 山野 善正
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.737-747, 1995-10-15
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

「煮つめ法」,「滴下法」を用いて調製した胡麻豆腐の調製時における攪拌速度と加熱時間の影響について,テクスチャー測定,クリープ測定,走査型電子顕微鏡による構造観察を行って検討したところ,次のような結果が得られた.<BR>(1) 「煮つめ法」により調製した胡麻豆腐のクリープ曲線は四要素モデル(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>, η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)として解析可能であった.硬さおよび瞬間弾性率,フォークト体弾性率(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>)は,どの攪拌速度においても加熱25分(谷の部分)で最も軟らかくなり,その後加熱時間の増加とともに硬くなった.また,その加熱25分の調製条件が構造的にも均一な蜂の巣状構造を形成した.<BR>「滴下法」によるテクスチャーと加熱時間における一次式の傾きは,加熱45分までの時間依存性を示すもので,攪拌速度が高くなる程,大きくなり,付着性には攪拌速度による依存性が認められた.ニュートン体粘性率,フォークト体粘性率(η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)は加熱時間にともなう変化がテクスチャーの付着性と類似していた.<BR>(2) 走査型顕微鏡観察の結果,加熱15分では不均一な部分があり,加熱25分で均一な空胞が形成され蜂の巣状を示した.さらに加熱攪拌を続けると蜂の巣状構造は崩壊し始めた,250rpm 25minの試料が空胞の形成がよく,最も均一な蜂の巣状の空胞の集合体が観察された.<BR>(3) 胡麻豆腐は葛澱粉を主体とするゲルであり,胡麻の蛋白質と脂質が関与している相分離モデルであると推察される.
著者
宮井 輝幸 秋山 正行 中川 稔 矢野 陽一郎 池田 三知男 市橋 信夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.591-594, 2012-11 (Released:2013-10-08)

コーヒー,紅茶および緑茶の各種試料に,Bacillus属細菌(B. cereus,B. subtilis,B. coagulans)芽胞を接種し,85℃30分間(食品衛生法におけるpH4.6以上の清涼飲料水の殺菌基準)加熱処理した後,その試料の保存中における生育挙動を調べた。コーヒー,紅茶試料では,牛乳を添加した場合,B. cereusとB. subtilisの菌数の増加がみられたが,牛乳を添加していないコーヒー,紅茶および緑茶の各種試料(pH調整の有無;コーヒーの焙煎度;紅茶の抽出温度;コーヒー,紅茶への砂糖添加)では,Bacillus属3菌種の菌数の減少がみられた。これらのことより,85℃30分間の加熱殺菌条件で製造した牛乳無添加の各種飲料中にBacillus属3菌種が生残していたとしても,コーヒー,紅茶および緑茶の抗菌性により商業的な無菌性が保証される可能性が示唆された。
著者
森 直子 浅野 智絵美 永田 忠博 伊藤 輝子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.144-149, 2014
被引用文献数
1

干しいもの摂取が排便に及ぼす影響について平均年齢20±1歳の女子学生84名を対象とし,非摂取期2週間および摂取期2週間(干しいも100g/日)の単一群試験を実施した.被験者は,排便状況を毎日記録し1週間ごとに提出した.その際,食事調査と身体測定を受けた.また,週3日以上排便がない者を便秘群(15名),週4日以上排便のある者を非便秘群(69名)とし,群別に解析を行った.その結果,非摂取期と比較し摂取期では,被験者全体として排便日数,排便回数,排便量および放屁回数が有意に増加した.また便秘群では,排便日数および放屁回数が有意に増加したが,非便秘群では,放屁回数が有意に増加した以外に,他の項目での有意差は見られなかった.干しいもの摂取による排便促進効果を介入試験により示し,便秘の改善を確認したが,将来はプラセボ対照群を設定し,食事や長期摂取による影響を調べ,本試験結果を検証したい.
著者
四宮 陽子 宮脇 長人
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-279, 2009-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
1

食料自給率40%の2002年と60%の1970年の食事を国民栄養調査結果などの資料に基づいて再現し,食品構成や栄養バランスおよび食料消費に伴うCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行った.<BR>1. 1970年は和・洋・中の料理の種類に関わらず,ご飯とみそ汁,漬物がベースという食事パターンが多かった.2002年は主食の米が減少し,主菜の肉類や魚介類が豊富に増加し,副菜も季節,産地を問わず贅沢に多様化した.<BR>2. PFCバランスを比較すると1970年の方が理想バランスに近く,2002年はたんぱく質と脂質が増加し,炭水化物が減少していた.<BR>3. 献立から計算された1日平均CO<SUB>2</SUB>排出量は,1970年907g/日に対して,2002年は2743g/日と約3倍に増加し,その差は環境省のCO<SUB>2</SUB>削減目標値1人1日1kgを大幅に超えた.この増加の原因は摂取量増加と自給率低下の両方が考えられる.
著者
氏原 邦博 吉元 誠 和田 浩二 永井 竜児 広瀬 直人 照屋 亮
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.343-349, 2009-06-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

黒砂糖の色調,栄養成分,機能性成分および食味等に搾汁機のローラーの材質およびライミング処理が及ぼす影響を調査し,以下の結果を得た.<BR>(1) 市販黒砂糖の暗色化の原因は,搾汁機のローラー由来の鉄とライミング処理によるものであり,これらがアミノカルボニル反応を促進することで着色が進み,暗色化していることが明らかとなった.搾汁機のローラーの材質をステンレスに換え,ライミング処理しないことにより,黒砂糖の色調は明るくなった.<BR>(2) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖は鉄製ローラーで搾汁し,ライミング処理した黒砂糖よりも鉄含量とカルシウム含量は少なかったが,スクロース含量,アミノ酸組成,カリウム含量,マグネシウム含量および機能性成分であるポリフェノール含量は同程度であった.<BR>(3) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖の明るい色調は消費者に好まれ,食味は苦味,えぐみ等が改善されたことにより評価が優れ,料理への適性も高いと考えられた.