著者
大谷 尚之 井上 一郎 河越 卓司 嶋谷 祐二 三浦 史晴 西岡 健司 中間 泰晴
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.149-156, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
12

【背景と目的】急性大動脈解離は画像診断法や外科的治療法が発達した現在においても死亡率が高く,いかに早期に診断し治療介入ができるかがその転帰を左右する。診断確定には造影CTが有用であるが,単純CTでも内膜石灰化の内方偏位,血腫により満たされた偽腔が大動脈壁に沿って三日月上の高吸収域として認められる所見(crescentic high-attenuation hematoma)など特徴的な画像所見を呈することが知られている。しかし,その出現頻度,単純CTでの診断精度については言及されておらず,単純CTから解離の診断が可能か検討した。【方法】2008年1月から2009年12月までの2年間,当院で急性大動脈解離と診断された54例のうち造影CTが撮影されていない2例,来院時心肺停止5例,他院で解離と診断され当院に転院となった3例を除く44例において来院時に撮影した単純CTを後ろ向きに検討した。内膜石灰化の内方偏位,crescentic high-attenuation hematoma,visible flap,心膜腔内出血4所見のいずれかを単純CTで認める場合に診断可能と評価した。また非解離例37例と比較検討を行った。【結果】44例のうち内膜石灰化の内方偏位を29例(65.9%),crescentic high-attenuation hematomaを33例(75.0%)と非解離例と比較し有意差をもって多くの症例で認めた(p<0.01)。頻度は少ないため有意差はつかなかったがvisible flapは4例(9.1%),心膜腔内出血は5例(11.4%)で認め,44例中40例(90.9%)で単純CTでの大動脈解離診断が可能であった。【結語】単純CTは大動脈解離の診断に有用である。