著者
田原 英一 伊藤 隆 林 克美 三瀦 忠道 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.459-466, 1998-01-20
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

大黄甘遂湯により変形性関節症に伴う膝関節痛の軽減とともに, バセドウ病の改善を認めた1症例を経験した。症例は61歳女性。主訴は両膝関節痛と下腿浮腫。1995年5月当科に入院。この時, バセドウ病と診断し, 抗甲状腺剤を6ヶ月使用した。退院後, 膝関節痛と下腿浮腫増悪のため, 1996年5月20日当科再入院。下腹部の膨満と抵抗圧痛に着目し, 大黄甘遂湯を投与した。両膝関節痛と下腿浮腫は著明に改善し, 6月15日退院となった。再入院時に再燃していた甲状腺機能亢進状態についても, 抗甲状腺剤を使用することなく, 約5ヶ月後に正常化した。同方剤は峻下剤といわれている甘遂が配剤されているが, 本例では長期投与にもかかわらず下痢などの副作用は認めなかった。本方剤の治験例は明治以降では2例のみ報告されているに過ぎない。そこで本証に特有とされる「小腹満して敦状の如き」腹候に関して文献的検討を行い, 使用目標について考察した。
著者
木村 豪雄 小尾 龍右 古田 一史 三瀦 忠道
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.253-259, 2004-03-20
被引用文献数
2 2

難治性の腹痛を繰り返す周期性好中球減少症に対して漢方治療を行なった。症例は44歳の男性。18歳より約1カ月周期で繰り返す全身倦怠態と腹痛にて発症した。急性腹症の手術を契機に周期性好中球減少症と診断された。ステロイド,顆粒球刺激因子および免疫抑制剤などによる様々な治療が行われたが,寛解には至らなかった。さらに好中球減少の周期性は徐々に乱れ,激しい腹痛が持続するようになったため腹腔内神経叢ブロックを施行されたが,効果は持続しなかった。漢方医学的所見では著しい虚証かつ寒証に陥っていたため,通脈四逆湯と大建中湯合附子粳米湯で対応した。その後は,刻々と変化する腹痛に対して建中湯類を中心とした方剤を適宜変更することにより症状の軽減のみならず,好中球減少の周期性を改善することが出来た。