著者
三田 智文 角田 誠 船津 高志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、分析化学におけるダウンサイズ化として、半導体微細加工技術を利用したマイクロ化学分析システムが注目されている。本研究では、微量生体成分の高感度分離検出系を組み込んだ液体クロマトグラフィー(LC)のマイクロチップ集積化を目的とした。最初に、高感度検出を目指して、ベンゾフラザン骨格を有する水溶性の蛍光標識試薬を開発した。水溶性の試薬はマイクロチップ上での分離において問題となる基板への吸着を防ぐことができると考えられる。さらに、核酸類似骨格を有する二環性化合物を合成しその蛍光特性を検討し、デオキシシチジン誘導体が強い蛍光性を有することを明らかにした。今後この骨格を有する蛍光標識試薬を開発する予定である。また、開発した試薬とLCを用いてペプチド類、微量生体成分および薬物の分析法を開発した。これら開発した分析法はマイクロチップ上に集積化可能である。マイクロチップLCの検出系として質量分析も有力視されている。そこで、質量分析用標識試薬を開発し、生体成分の分析法に適用した。本法もマイクロチップ上に集積化可能である。また、モノリス型キャピラリーカラムおよびチップ上でのモノリスカラムの作成に取り組み、分離系の微量化を検討した。さらに、チップ上でのLC用レーザー蛍光顕微検出法の開発に取り組んだ。溶液中の蛍光検出対象物質が対物レンズから近い距離に存在すれば、蛍光を十分に集光できるため高感度に検出できる。そこで流路の厚さが5μm程度以下の部分を作成し、この部分で検出を行うことにより高感度検出を可能にした。今後、これらの方法をマイクロチップ上に集積化する予定である。