- 著者
-
三神 史彦
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本研究では,紫外レーザ光による干渉縞の微細な明暗パターンを,紫外線によって発色するフォトクロミック染料に照射することによって,マイクロスケール流れの中に,煙線ノズルを用いたような微細な流脈を生成する方法を開発した.本年度は,1.タイムラインを併用した可視,2.微小物体まわりのヘレ・ショウ流れの可視化,を行った.1.タイムラインを併用した可視化速度2成分を画像から定量的に算出するため,オプティカルチョッパを用いて繰り返し周波数40〜50Hzの擬似的なパルス波を生成し,流脈にタイムラインを重ね合わせた.内径590μmの石英毛細管内の流れを対象とし,数ms間隔の2枚の可視化画像をCCDカメラで撮影した.得られた画像から,一本の流脈に沿って明暗のパターンが下流に移動する様子が確かめられたが,相互相関法PIVを適用した結果には過誤ベクトルが多く含まれ,タイムライン間隔などの設定に課題が残された.2.微小物体まわりのヘレ・ショウ流れの可視化一般にヘレ・ショウ流れは速度ポテンシャルをもつ流れとして扱うことができるが,マイクロスケールの物体まわりの流れに対して有効であるか実験では確認されていない.そこで,100〜200μmの大きさの物体が置かれたヘレ・ショウセルを,スライドガラスおよびシリコン樹脂製マイクロ流体チップで作成し,流れのようすを可視化した.ヘレ・ショウセル内の流れは薄いシート状のため,いずれの場合も非常に明瞭な流脈画像が得られた.これをパネル法によって計算したポテンシャル流れの流脈パターンと比較した結果,完全に一致することがわかった.このことから,本手法が微小物体まわり流れの可視化に有効であり,またヘレ・シヨウ流れとなる条件では,マイクロ流体チップ内の流れをポテンシヤル流れとして予測できることがわかった.