著者
三神 史彦 宮本 博文 安藤 常世
出版者
The Japan Society of Fluid Mechanics
雑誌
日本流体力学会誌「ながれ」 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-45, 1993

本研究では, 渦法を, 物体壁面のすべて, あるいはその一部分が同じ面内で動くような場合に適用し, 回転円柱および回転円筒部をもつ翼のまわりの流れを解析した.渦度の拡散はランダムウォークで表現し, 物体を線形分布させた渦層で表現した.<BR>レイノルズ数<I>Re</I>= 1000, 周速比<I>U</I><SUB>c</SUB>/<I>U</I><SUB>∞</SUB>=0.5および2.0で突然回転と出発をはじめた円柱のまわりの流れを計算した結果, Badrら (1990) の可視化実験と良好な一致がみられた.また, 得られた回転円柱の揚力係数の値は, ポテンシャル流れの計算から求まる値よりずっと小さく, 回転円柱のまわりの循環に対する粘性の効果が正しく計算された.<BR><I>Re</I>= 10000, α=24°, <I>U</I><SUB>c</SUB>/<I>U</I><SUB>∞</SUB>= 0.0, 2.0, 4.0の場合における回転円筒部をもつ翼のまわりの流れを計算し, 流れ場の様子を調べた.出発直後, 翼後縁でKuttaの条件が自動的にみたされ, 出発渦が放出される様子がとらえられた。回転円筒部の周速比が大きくなるにつれ, はく離の規模が小さくなり, 翼のまわりの循環が増加することが確認できた.また, <I>U</I><SUB>c</SUB>/<I>U</I><SUB>∞</SUB>= 2.0および4.0の場合には, 前縁はく離を防ぐことができた.計算結果から, 回転円筒部から発生する循環によって翼上面のはく離領域の循環が相殺されて小さくなり, はく離が抑制されることがわかった.