著者
猿木 清文 輿石 剛 三芳 端 従二 雅美 広田 文雄 永井 孝三 賀古 眞 古江 尚
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.114-116, 1994-12-08 (Released:2015-05-25)
参考文献数
6

症例は82歳女性。気管支喘息,高血圧の加療中,消化器症状にて上部消化管造影を施行し,食道癌を疑われた。上部消化管内視鏡にて歯列より約30cm,2時方向に小結節扁平隆起性病変を認め,X線,内視鏡所見,生検より表在隆起型食道癌(中分化型扁平上皮癌)と診断した。内視鏡的切除など各種治療を検討したが,年齢,全身状態などにより未治療のまま経過観察となった。定期的に内視鏡を実施していたところ,約2年後の内視鏡検査において著明な退縮を認めた。悪性腫瘍の自然退縮は極めてまれな現象であり,頻度は悪性腫瘍6万例から10万例に1例とされており,とりわけ消化器癌ではまれとされている。今回,自然退縮した食道癌を内視鏡的に経過観察しえた1例を経験したので報告する。
著者
大滝 修司 山川 達郎 三芳 端 飯泉 成司 岸 いずみ 稲葉 午朗
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.1100-1104, 1992-04-01
被引用文献数
4

胆汁性仮性嚢胞(biloma)は,肝あるいは胆道系の外傷や手術後合併症として,また経皮経肝胆道造影やドレナージなどによって,胆汁が肝被膜下などに被覆された状態で流出し形成された2次的嚢胞であり,1979年にGouldらにより初めて記載された.しかしながら,このような既往なしに発症することもまれながら報告されている.われわれは胆嚢炎の穿通が原因となったbilomaを3例経験した.1例は手術までの比較的短期間にbilomaが消失した興味ある症例であり,また他の1例は手術前にbilomaをドレナージしたが,症状は軽快せず手術にて完治した症例であった.残る1例は原因となった胆嚢を穿刺ドレナージすることでbilomaが消失した症例である.これら3例の経験から,胆嚢炎の消退により流出した胆汁(biloma)は,胆嚢に還流することで自然消失することが示唆され,胆嚢炎が原因となったbilomaは,まず胆嚢炎に対する何らかのアプローチが大切であると考えられた.