著者
酒井 滋 山川 達郎 石川 泰郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2635-2639, 1991-10-01
被引用文献数
7

1990年5月29日から1991年2月までの約10か月間に教室を受診した胆嚢摘出術を要した患者は91症例あり,このうち56例(61.5%)が腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応となった.この56例の全てに本法を試み,52例(92.9%)が本法による胆嚢摘出に成功し,残る4例(7.1%)は術中に開腹術に変更された.開腹術に変更された理由は急性胆嚢炎1例,胆嚢管・胆嚢動脈の剥離困難1例,胆嚢周囲の高度の大網癒着2例であった.開腹術となった急性胆嚢炎の症例ではクリップが充分かからず胆嚢動脈が断裂したためであった.一方,本法の適応から除外された35例の理由は,総胆管結石の合併,急性胆嚢炎,上腹部の手術既往,胆嚢管の閉塞,Mirrizi症候群,胆道奇形,胆嚢結腸瘻等であった.本法を施行する外科医は合併症を防ぐために術中対処困難な事態が生じた際は,開腹術へ変更することを躊躇すべきではない.
著者
大滝 修司 山川 達郎 三芳 端 飯泉 成司 岸 いずみ 稲葉 午朗
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.1100-1104, 1992-04-01
被引用文献数
4

胆汁性仮性嚢胞(biloma)は,肝あるいは胆道系の外傷や手術後合併症として,また経皮経肝胆道造影やドレナージなどによって,胆汁が肝被膜下などに被覆された状態で流出し形成された2次的嚢胞であり,1979年にGouldらにより初めて記載された.しかしながら,このような既往なしに発症することもまれながら報告されている.われわれは胆嚢炎の穿通が原因となったbilomaを3例経験した.1例は手術までの比較的短期間にbilomaが消失した興味ある症例であり,また他の1例は手術前にbilomaをドレナージしたが,症状は軽快せず手術にて完治した症例であった.残る1例は原因となった胆嚢を穿刺ドレナージすることでbilomaが消失した症例である.これら3例の経験から,胆嚢炎の消退により流出した胆汁(biloma)は,胆嚢に還流することで自然消失することが示唆され,胆嚢炎が原因となったbilomaは,まず胆嚢炎に対する何らかのアプローチが大切であると考えられた.