著者
三輪 寿二 根本 橘夫
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.21-41, 1994-02

本研究は, 表情と身体動作による感情の非言語的コミュニケーションに対する特性不安の影響を検討した。感情の次元については, 喜び・悲しみ・嫌悪・怒り・驚きの5つが使用された。特性不安はMASで測定した。特性不安の影響は, 表出者と認知者のそれぞれについて検討された。表出者は高・低の2群, 認知者は高・中・低の3群に分けられた。実験1では, 不安高・低8名ずつ計16名が被験者となり, 表出者の特性不安が, 非言語的表出行動に及ぼす影響が検討された。実験1における主要な結果は次の通りである。1.高不安者は, 低不安者より, 無意味な非接触動作の使用時間が長い。特に, 腕をふる動作の使用時間が長い。2.高不安者は, 悲しみ表出において, 低不安者より, 無意味な身体動作の頻度, 身体動作全体の頻度が少ないが, 無意味な身体動作の使用時間は長い。3.高不安者は, 怒り表出において, 低不安者より, 有意味な身体動作の頻度が少なく, 無意味な身体動作の使用時間が長い。特に, 無意味な身体接触動作の使用時間が長い。4.高不安者は, 低不安者より, 嫌悪の体験談を長く話す。実験2では, 実験1の表出者から, 高・低両群から4名ずつ計8名を表出群として構成した。さらに, 認知群として, 不安高・中・低の3群各14名ずつ計42名を構成した。これら, 表出群と認知群によってなされる感情の非言語的コミュニケーションについて検討した。実験2における主要な結果は次の通りである。1.高不安表出者は, 低不安表出者にくらべ, 喜び表出の強度を弱く認知される。2.高不安表出者は, 低不安表出者にくらべ, 悲しみ表出において, 正しく認知され, その強度を強く認知される。3.低不安表出者は, 高不安表出者にくらべ,